友達の輪356号 (有)神扇農業機械化センター 代表取締役 船川 由孝さん
節分も過ぎ梅と共に春の便りが南のほうから伝わってきます。まだまだ寒い日も続きますが読者の皆様にはお体ご自愛下さい。さて、本日の友達の輪には、セブンイレブンを経営されている小島繁さんからご紹介いただいた船川由孝さんに登場いただきます。船川さんは農業法人として大規模農業をされている方です。
本紙 こんにちは。小島さんから古いお付き合いとご紹介いただきました。よろしくお願いします。
船川 小島さんは農業高校の先輩です。私は今、お米を作っていますが、平成4年まで24年間搾乳業もやっていました。 小島さんも養鶏をされていましたのでよく面倒を見てもらいました。
本紙 牛も飼っていたのですか
無休の青春時代
船川 常時20頭くらいの牛がいました。酪農は牛が相手ですから休みがないのです。毎日搾乳をしないと牛が倒れてしまいますから、休みなしの青春時代でした。毎日乳搾りをしていましたね。何回か、雷で地域一帯が停電してしまい、お乳はすべて機械で絞っていますが機械が動かず、その時に手で全ての牛のお乳を絞りました。
1頭につき、所要時間5分以上かかりますから全て絞るのに苦労した思い出があります。当時は幸手にも20軒くらい酪農をやっている農家がありましたが、時代の流れで牛乳の消費量も減り、徐々に酪農家も減っていきました。私は高校時代、北海道に酪農の研修に行きました。最初は酪農をやり、その後は米をやろうと考えていましたがなかなか農地が集まらず、約20年前ごろ面積が集積してきたので、思い切って米の専業農家に転身したのです。
現在は稲苗とお米の生産をメインにやっています。稲苗はハウスが600坪あり、兼業農家にも販売しています。当社では、種もみの原種栽培をしています。扱っているお米の種類は数種類あり、「コシヒカリ」と「彩のかがやき」などです。「彩のかがやき」はコシヒカリとむさしこがねを掛け合わせた新しい品種で埼玉県の米です。また、後継者不足が農業の課題となっていますが、息子が後継ぎとして農業高校から農大へ行き、家業に入り6年目になり、一生懸命やってくれています。
本紙 大規模な米作りをされていますね。
農業法人スタート
船川 江戸時代の幸手市神扇のあたりはクリークが400本くらい通っていて、土地のほとんどが沼地でした。米の収穫の際には、船に乗って稲あげをしていたようです。
私の先祖たちがこのあたりを開拓して、土地を整えたと聞いています。私で14代目になりますが、昭和49年に父が中心となって神扇機械化組合という、共同で米作りをする団体を立ち上げました。それが今のライスセンターです。その時は農家12軒くらいではじめました。スタート時で面積は25町くらいある集落的な組合でした。当時は、幸手の中でもそういった組合が3ヶ所くらいあったように記憶しています。
その組合を平成14年の12月に機械化センターとして法人化しました。法人化した理由は「さらに販路を拡大するためや、税制面などでより一層の信頼を獲得するため」などです。とくに税制面においては、それまでとは異なり、経営内容が全てガラス張りになります。そのころ全国で急速に法人化を進める農家が多かったものですから、私達もその時代の波に乗ったのです。私が目標としたのは、農業をそれまでとは違いビジネスとした収益構造にすることでした。
本紙 視察も多いようですね。
アンテナは高く
船川 国内外へ行って現地視察、勉強会に参加しています。常に情報を仕入れながら先を見ていかないと遅れていってしまいます。例えば、レーザーを利用して田んぼを平らにする「レーザーレベラー」という機械を埼玉県で初めて導入しました。これはアメリカではだいぶ前から導入されていたものです。田んぼは水を入れる際に平らにしなければならないのですが、本当に難しい技術が要求されます。水が偏ってしまうと、苗が浸りすぎ腐ったり、苗が露出して枯れてしまったりします。しかし、「レーザーレベラー」使うと、冬の間の乾いた土で作業が出来るのです。こういった機械や、海外で使われているような大型の機械を導入することによりコストを削減することができるのです。
本紙 これからのお米作りは?
お米へのこだわり
船川 農業の世界でも、商品の差別化が進んでいます。私は味や安全性にこだわったお米作りを目指したいと思っています。特に酪農時代から堆肥作りをしていますから、肥料にはこだわり、もみ殻を混ぜて肥料を作っています。減農薬の方法で作られたお米で埼玉県の基準検査を通ったものが特別栽培米と表示されますが、特栽米の生産グループをJAでも立ち上げ、私がその代表をしています。これはブランド米になります。米の生産量は、過剰期に入ってきました。海外との競争もあります。海外でもコシヒカリを作っていますよ。中国には十何年前に行ったときにありましたし、平成5年にオーストラリアへ行ったときにもすでにありまし。関税こそまだ存在しますが、これから価格面での競争が始まってくると思います。
また、日本人の好むお米も少しずつ変化しています。コシヒカリは粘りがあり、若い人にはあまり受けません。新しい品種で単価が安いもので代用する時代にきています。昔のようなコシヒカリブランドが通用しないのです。それに、一回に食べる量も減ってきています。ですから、米全体の消費量は減っています。
幸手市は水も土も良いのでお米もおいしいですから、こだわって作っているお米をぜひ皆さんに食べていただきたいものですね。
本紙 ではお友達をご紹介下さい。
船川 高校の同級生の折原和夫さんを紹介します。折原さん天神町で「磐梯」という居酒屋を経営されています。
本紙 ありがとうございました。市内唯一の農業法人としてますますのご活躍を祈念します。(船川さんのところにはイギリスから導入した大型農機が並んでおり、新しい農業スタイルを感じました。ブランド米も好評だそうで若き後継者とともに更なる活躍が期待されます。)