友達の輪402号(2012年1月8日発行)
㈱津野製作所 取締役工場長 津野 裕之さんへ
新年あけましておめでとうございます。読者の皆様には素晴らしい年明けだったことと思います。本年も友達の輪をはじめタウンプレスよみうりをよろしくお願いいたします。さて、新春のトップバッターは彫刻家の小林晃一さんからご紹介いただいた津野裕之さんにご登場いただきます。津野さんは㈱津野製作所の取締役工場長です。
【本紙】 こんにちは。彫刻家の小林さんからひょうたんをつかったスピーカーなどを一緒に考案してくれる方と紹介いただきました。まず、会社の歴史などをお話いただけますか?
【津野】(敬称略)こんにちは。うちの会社は祖父の代からやっています。創業80年近くになるでしょうか。創業時は東京の墨田区で今と同じような部品の工場をやっていました。自転車の部品関係の会社です。それが戦前の話になります。ある程度事業は軌道乗ってはいたようですが、戦争が始まり、東京大空襲で所有していた工場がだめになってしまったのです。そして、長野に疎開してまた工場を稼動させたのですが、疎開先の工場も空襲を受けて、だめになってしまったのです。そこで何とか空襲で残った機械類を運び、祖母の実家が幸手ということもあり、祖父が幸手駅前で知人方に間借りする形で商売を始めました。当時は機械加工で建築関係の部品を作っていました。そして、祖父、父の代と受け継ぎ現在叔父が代表となり私は工場長を務めています。
【本紙】 二度も空襲に遭われたのですか。どんなものを作られているのですか?
どんな部品も作れる
【津野】 当社は現在もメインは機械の部品作りです。主にお客様から依頼を受け、「部品図」という図面を私が起こし、必要な部品が何かを決め、それを実際に工場で作りお客様に納品します。一例をあげますと、お菓子の工場などでしたら、お菓子の製造のための機械部品も、実に様々なものになります。材質、焼き方、表面をどうするかとか、ひとつひとつの部品について、処理方法も違います。そしてそれらの部品を組立てると、お菓子などの食品加工の機械になるのです。つまり、最初の部品図がとても重要で、すべてオリジナルのものになります。私どもでは今までずっとそういった部品を納品することをメインでやってきました。しかし、今後は部品だけではなく、お客様の要望にこたえて機械を作ることまでトータルでやれるように考えています。また、海外製の機械で部品の交換が容易に出来ない機械についても、壊れた部品をうちで製作します。海外はねじの規格が違いますから、日本のものだと対応できないのです。もちろん部品だけではなく、機械の本体の加工もできますので、お客様と幅広いつながりの関係を構築出来るのです。もちろん、スタッフが知識が豊富で高い技術力があることが必要とされます。その都度、お客様が求める部品がどういうものか、現場で判断して、工程を決めていきます。希望の内容と、コスト、期間など条件を考えて判断していきます。色々な状況に対応できるのがうちの最大の強みです。最終的にはうちだけのオリジナルのものを作れ、それでよいものを作れるということが最終的な目標であります。もちろん専門的な分野が多岐に渡りますから、簡単なことではないですけれど。
【本紙】 前号の小林さんがお話されてた「幸手の手はものづくりの手」にふさわしいですね。ひょうたんスピーカーも趣味で始められたようですね。
高級スピーカー
【津野】 たまたま行ったレストランにひょうたんのランプが置いてあり、それがなんだかかわいくて気に入ってしまい、最初は自分の部屋に飾ろうと思って、ひょうたんの苗をもらってひょうたん作りを始めました。その内、音響機器に興味があったので、ひょうたんのスピーカーがあると知り、自分でもひょうたんを乾燥させて、スピーカーにしてみたのです。スピーカーはふつう吸音材が必要ですが、音をきちんと出すためにひょうたんの形がとてもよいです。それで、小林さんに相談して製品化したのです。趣味のひとつでしたが、今度は小林さんと黒幻焼(こくげんやき)という、窯に松葉をいれて黒く焼き付けるという素焼きの手法で作った焼き物にスピーカーを入れたものを考案しました。陶器だけだと振動が単一になってしまって、音が綺麗にでません、それで試行錯誤し金属の部品を付けて強度も持たせ、音が綺麗に出るようにしました。製品化されて、東京ミッドタウンのお店においてあります。本格的なスピーカーで1セット16万円ですが、マニアの方にしてみれば、スピーカーとしてはリーズナブルなほうかもしれません。
【本紙】 趣味というかビジネスですね。
趣味は釣り
【津野】 いやいや趣味の域を出ませんね。一番の趣味は釣りです。若い頃からアウトドアが好きでキャンプにはよく行ってました。最初に興味を持ったのは25歳の時で、カヌーです。そのあとカヌーにエンジンを付け、今度はボートにエンジンを付けて、釣りを楽しむようになりました。銚子、勝浦方面へよく行っていたのですが、仕事が終わってから車にボートを積み、夜中にでて、現地で暗いうちから海に出て、それで昼に終わって、全部片づけて帰ってくるというのが、体力面でも時間面でも大変になってきたので、クルーザーを購入して横浜に係留しようと思ったのです。大物も狙いますが、カジキを釣りたいと思ったら新島まで行かなければなりません。27フィートの船ですと能力的には問題ありませんが、燃料がぎりぎりになってしまうのです。船の航行距離は波の状況でも変わります。波が高いときは無事に帰れるだろうかという挑戦のような気持ちで操船しています。霧が出て船の2m先すら見えず怖い思いをしたこともありました。もちろん知識と経験がありますから無茶はしませんし、今まで事故もありません。小さいボートからやってきた経験も活きています。もし経験がなく、船の大きさにもよりますけれど、いきなり大島へ行って帰ってこようと思ったら大変な思いをするでしょうね。船の名前は子どもたちの名前をとって「貴帆(たかほ)」といいます。
【本紙】 素敵な趣味ですね。では、お友だちをご紹介下さい。
【津野】 仕事でお世話になっている小沼製作所の専務取締役である小沼弘和さんをご紹介します。
【本紙】 ありがとうございます。益々のご繁栄を祈念いたします。(津野さんは創作意欲を持った仕事に趣味に一生懸命な方でした。)