友達の輪409号(2012年4月22日発行)
(有)イトー建工 二代目 伊藤 高広さんへ
さくらまつりも無事に終了し、権現堂はあじさいの季節まで静かになることでしょう。さて、本日の友達の輪には三陽ホームの荒川洋一さんからご紹介いただいた伊藤高広さんに登場いただきます。伊藤さんは二代目棟梁です。
【本紙】 こんにちは。荒川さんから2代目の棟梁と紹介されました。よろしくお願いいたします。
【伊藤】(敬称略)当社は父が伊藤工務店として創業し私は二代目になります。昔は曾祖父がこの地で職人さんを使って桐タンスの製作を行っていたようです。祖父もその仕事を継承したようですが、当時は農業と兼業の仕事だったようで、徐々にタンスの仕事から専業農家に移っていったようです。祖父は製作した桐タンスを春日部までリヤカーで納めに行っていたようです。春日部が桐タンスで有名ですが、製作していたのは近隣市町村の職人さんも多かったのだと思います。その後、昭和52年頃父が個人で工務店を創業し、建具を中心に仕事をしていたそうです。創業当時はバブル景気もあって建売住宅がたくさん建てられた時代です。母も手伝っていましたが忙しかったようです。昭和61年に有限会社化して名称も(有)イトー建工としました。
【本紙】 高広さんが家業に入ろうと思ったのは?
自然と家業に
【伊藤】 家業に入ったのは平成8年頃ですから、かれこれ15年くらいになりますが、家業に入ろうと思ったきっかけは、特別に何かがあったというわけではないのです。ただ、小さいころから父がやっている仕事場にくっついて遊びに行くこともありましたし、両親が力を合わせてやっていることを見ていましたので、自分もそこで一緒にやっていくことは、自然なことでした。でも、経験が全くありませんでしたので、職人さんたちに現場で一から教えてもらいました。とまどいもたくさんありました。建築現場は高所な部分もたくさんありますから、屋根に登るのは怖かったですね。それと、昔は足場を組んでも簡素なものだったりしたので、始めのうちは「なんでこんな高いところに上がらなければいけないのかな」なんて思ったこともありました。下から見るのと上から見下ろすのはだいぶ違うのです。しかし、それも以前のことで、今の建築現場は安全面にもとても気を付けられた上で作業が行われています。また、私が家業に入った当時と今では、住宅建築の技術もだいぶ変わってきています。例えば、建築現場には必ず足場が設けられていると思いますが、昔は屋根をやるときは足場を作らずに屋根へ上がって作業をしたりしていましたから、それに慣れるまでは大変でした。
【本紙】 初めてのことばかりだったんでしょうね?
現場で学ぶ
【伊藤】 そうですね。家業に入って現場へ出た直後というのは覚えることがたくさんあり、最初は大変でした。私は特に専門的な建築の学校へ行ったわけでもないので、現場ですべて覚えた感じです。基礎的な知識すらもなかったので、初めは現場の掃除担当です。学生のころから夏休みなどに親の仕事を手伝ったりはしていましたが、実際の現場での仕事は全然違いました。大事な大工道具であるノミを一日中研いでいたこともありました。もちろん初めは研ぐのもうまくいかなかったですからね。何事も一つ一つ修練だと思ってやっていた時期ですね。先輩方が測った木を加工していくという仕事もたくさんさせていただきました。下積みの時代は1年くらいありましたね。
【本紙】 印象に残った仕事などありますか?
初めての墨付け
【伊藤】 印象に残った仕事ですか。今はほとんど無くなってしまいましたが、昔は、「墨付け」という作業がありました。「墨付け」とは、材料となる木を見て、組み立てるのに最良な加工をするための印を付けることです。木を見るとは、木の育った環境によるクセやタレ(上下)などを見抜き、適材適所に当てはめ、墨をつけるということです。墨付けされた木は穴を開け、継ぎ、仕上げを精密に加工していきます。木を見ることができる大工でないと墨付けは行えませんでした。そんな環境でしたが、下積みを終え、仕事に慣れて、先輩にも若干余裕があったときに「墨付けやってみれば」と先輩に言っていただき、教えてもらいながら、墨付けをやり始めました。間違っているときは教えてもらいました。方法は墨つぼと墨さしを使って木に印をつけていくものです。そして、木の寸法を書き、自分で木を切るのです。それを全部自分自身で行い、一棟建てたということがとても印象に残っています。初めて自分で墨付けをやって建てたときは達成感と「間違えなくて良かった」という安心感の両方でした。でも、その時にひとつひとつ組立てていくことで、家が出来上がっていくという様子はとても楽しかったですね。
【本紙】 今は「墨付け」はないのですか?また、どんな家が求められていますか?
今はプレカット
【伊藤】 昔は墨付け作業が建築現場には欠かせませんでしたが、今は工場でプレカットという機械を使いカットされた材木を現場に運んでくるというのが一般的です。でも、材料となるその木を見るということは、大工にとってとても大切な技量のひとつになっています。求められる家ですか?震災のこともあって地震に強い家という事や安全面にこだわる方が多いです。また、地盤調査も多くなりましたね。地震による液状化の心配ですね。何メートル下に砂があるとか調査しますと大体わかります。創業時から当社は「お客様第一」で仕事をし、お客様の要望を聞き入れ、それを形にしていきますので、どんなことも納得いくまでご相談に応じます。どうぞお気軽にご相談下さい。
【本紙】 では、お友だちをご紹介下さい。
【伊藤】同級生で同業をしている島田徳浩さんを紹介します。
【本紙】 ありがとうございました。(伊藤さんは社長である父と昔はよく釣りに出かけていたようです。今は暇が無くてなかなか行けないそうですが親子のコンビネーションはこの頃からのものでしょうね。また、後継者として地元の方と交流をさせていただくことも多く、つながりを大切にしていきたいとお話下さいました。)