友達の輪440号(2013年8月4日発行)
慶作舎 管理人 岡安 幸治さんへ
8月に入り夏休み真っ盛りの子どもたちが楽しそうに過ごしている姿が目につきますね。さて、本日の友達の輪には農業の小林淳一さんからご紹介いただいた岡安幸治さんに登場いただきます。岡安さんは慶作舎の管理人として植林用の苗木を育てています。
【本紙】 こんにちは。暑い日が続きますね。慶作舎の管理人になられたのはいつ頃なんですか?
潜在自然植生
【岡安】(敬称略) 私は昨年までJRの組合で役員として在籍していました。退職したのは6年前なのですが、それ以降も組合の仕事はしていました。2000年頃から「組合員が畑作業をして土に馴染みましょう」という目的でJRのOBである小林さんから2反の畑を借りて、家庭菜園のようなレベルでしたが畑を作っていたのです。畑作業に来るときは20~30人くらいで人はかなり多かったですね。その頃、同時に環境問題が持ち上がってきて、JR北海道とJR北海道労組とで、環境問題に取り組み植樹をやろうという話になりました。それがきっかけとなって、東京でも同じことをやろうということになったのです。それで、野菜作りから苗木作りに方向転換したのです。急な方向転換は難しかったのですが、若者が中心となってインストラクターとして森作りをやっている方から指導を受け試行錯誤しながらスタートしました。植樹は専門的な言葉になってしまいますが、「潜在自然植生」と言って、元々その土地に生息していた木を植えようということになっています。山に植樹するのなら、山に生息している木を、海岸に植樹するのなら、海岸に生息している木を植えるということです。2005年から足尾に植樹をすることになったのですが、そこに植える木を慶作舎で育てようということになりました。ドングリなどを始めとしたナラ類ですね。ミズナラやコナラ、ブナなどです。今年で9年目を迎えます。
【本紙】 管理人としてのお仕事は?
東京でドングリ集め
【岡安】 水をやったり、草取りをしたりですね。夏は1日おきに来ています。小さいポットですので、ちょっとでも油断するとすぐに枯れてしまいます。先ほどの防潮堤ですが、10年間で100万本植えましょう、ということになっています。ですから、苗木はもっと増えていきます。東京が担当している分は2万4千本くらいで、その他に家庭でもわずかですが栽培している組合員もおります。慶作舎には現在1万本くらいありますが、場所の確保が大変です。最低でも毎年1万本は提供するようにしていますので、小林さんの畑や近隣の無耕作地が頼りです。苗木になるドングリなどは組合員が一生懸命集めています。東京でも意外とあるのですよ。本当なら、その土地のどんぐりを使いたいのですが、実際問題難しいので、DNAはちょっと変わってしまうのですが、しょうがないと思うようにしています。そして、私たちが作った苗木を現地へ持っていって、市民の方たちに植えてもらうことが今の目的です。
【本紙】 今までの活動の中で特に印象に残っていることはありますか?
自然の防波堤
【岡安】 やっぱり震災でしょうか。陸前高田の千本松原がなくなったのを見て、自然植生で本物の木というものを強く意識するようになりました。東日本エリアの海岸沿いをコンクリートの防潮堤ではなく、瓦礫などを利用した自然の防潮堤を作ろうと、現地で指導されている方がいます。この運動を進めていかないとと思い、現在も進行中です。将来的には絶対に必要なことだと思っているのですが、行政や国などもありますので、なかなか難しいですね。それに、自然のものよりもコンクリートの方が頑丈で安全だ、という一般認識もあります。また、木を植えるよりも早く瓦礫を取り除いてもらいたいという地元の声もあります。もちろん、それらも分かるのですが、50年や100年先のことを考えていくと、コンクリートの堤防ではなく、自然の森でつくられた防潮堤のほうがいいとは思うんです。横浜の山下公園は関東大震災での瓦礫を全部埋めて、それを利用して作っていますよ。
【本紙】 森になるのに何年くらいかかりますか?
密植・混植
【岡安】 10年くらいかかりますが、ポット苗で植樹した木は成長が早いですね。植物の生きる力が違うのだと思います。狭いポットで3年くらい育ったせいか、広いところに植樹されると思いっきり養分を吸収するのかもしれません。もうひとつは密植・混植といって、1本だけ植えても木って育たないのです。違う種類の木を1平方メートルのあたりに3~4本植えていくのです。そうして、お互いに争わせると、弱い木が自然淘汰されていくわけです。そうして残った強い木を現在育てているのです。横浜国大の名誉教授宮脇昭先生の指導の下、1年間勉強してそういうやり方をしています。こういうやり方ですと、早く森が出来るのですよ。強い木ほど生き残って行きますから、その強い木からは当然同じように強い木が生まれていきます。明治神宮が良い例で、菖蒲出身の本田静六先生という植物学者の指導で、松はやめてクスノキやカシ類を植えて、百年がかりであの森が出来上がったのです。横浜国大の校門から入った両脇にある森もわずか20年で森になっています。いろんな企業や団体が宮脇先生の指導を受けて、全国各地で森作りをやっています。
【本紙】 目標などは?また、慶作舎は見学可能ですか?
【岡安】 地元の人にまずここを知ってもらうことです。良いことをやっていると思っているのですが、森を作っているということが生活にストレートに繋がっているわけではないので、分かりにくい部分があるかもしれません。それでも、出来る人たちでやっていかないといけない作業だと思っています。見学希望は大歓迎です。ご連絡をいただければご覧いただけます。
【本紙】 では、お友達をご紹介下さい。
【岡安】 トマト作りをされている篠﨑清和さんをご紹介します。おいしいフルーツトマトを作ってますよ。
【本紙】 ありがとうございました。植樹を通じて自然環境保護にご活躍ください。(岡安さんは足尾に植樹するとき、丸裸の山に愕然とされたそうです。それで、土から作らなければと感じ、みんなで山の上まで泥と腐葉土を背負い担ぎ上げたそうです。自然の再生は本当に大変だと感じました。)見学希望者はTEL 080-3175-6692小林さんまで:慶作舎・幸手市上高野2508