友達の輪491号(2015年9月20日発行)
久我クリニック院長 医学博士 久我 英世さんへ
「線状降水帯」という集中豪雨によって大変な災害が発生しました。被災された方々に心からお見舞い申し上げます。さて、本日の友達の輪はやまと薬品の社長である目(さがみ)繁明さんからご紹介いただいた医学博士である久我英世さんに登場いただきます。久我さんは幸手市内にある久我クリニックの院長をされています。
【本紙】 二代目と伺いましたが開業はいつになりますか?
【久我】(敬称略) 私は開業する前に栃木の獨協医科大学のICUと言われる集中治療部に勤務していました。そこでは24時間体制で患者を診ていましたが、退職して平成16年4月に開業しました。父が昭和42年頃に久我産婦人科を開業しましたから、そこから数えると約48年になると思います。診療科目は私の代で内科になりましたが、父と同じ道に進んだことになりますね。
【本紙】 往診もされているそうですね?
在宅療養診療所
【久我】 当院は開業の頃からずっと在宅療養診療所と言いまして、365日24時間体制で往診や訪問看護を行う診療所として、電話受付が出来る形を取っています。当院では外来もありますので、往診専門のところとはちょっと違い、往診の日程が決まっています。月曜と火曜、金曜が往診日となっています。ずっとそれでやってきていますが、ひとりでやっているわけですから、どうしても負担は大きくなってしまいますね。それで、どうしても忙しくて診ることが出来ないという状況のときは他の病院を紹介することもあります。大学病院時代は他にも医師がいますので、チーム医療という形でローテーションを組み、公私の切り替えの休みを取ることもできました。しかし、個人で開業すると公私の切り替えというのはなかなか出来ないですね。一応、盆や年末年始に休みはあるのですが、その間にも患者さんの状況が変わったときはいつでも連絡を受け付けています。ですから、休みの日でも頭のどこかに仕事が残っています。もちろん休みの日はゴルフに行ったりもしますし、他にも余暇の時間を取ったりはしますが、そんなときでも急患の電話を受けることもあります。
【本紙】 患者さんにとっては主治医になるのですね。365日24時間は安心ですね。往診を希望する方というのはどのような方が多いですか?
信頼関係の上で
【久我】 そうですね。国の方でも一生懸命、在宅医療を推進しています。そのためには患者さんとのある程度の信頼関係が大切になってきます。例えば、まだ往診の期間が短い患者さんの容態が急変したとします。期間が短いのであまり深い信頼関係も築けていませんから、ご家族の方も慌てますし、すぐ診に来てほしいとなるのです。でも、長く診ている方ですと、医者と患者さんと家族との間に信頼関係がありますので、状態を判断してすぐに電話してこないで翌日の診療時間に「昨日こういうことがありました」と電話してきてくれるのです。患者さん側もこちらにも気を遣ってくれるのです。その関係を築くために何度も繰り返し患者さんやその家族と関わっていくのが大事なのだと思います。往診については、高齢者で病院まで連れて行くのが大変という方や、一人暮らし、夫婦ともに高齢という方からの需要は高いですね。往診は外来で来たときの診察で決めることがあります。例えば、家族が連れてくるのが大変そうという感じが見受けられたら、こちらから勧めることもあります。病院に来るまでも時間がかかりますし、本人も家にいて診てもらった方がいいというのはやっぱり基本です。高齢になってきて死期が近づくと家にいるほうが安心する、ホッとするというのは多いのです。あとは外の病院からの紹介ですね。特に多いのはがんセンターからです。末期の方がこのエリアにいた場合、これ以上治療が出来ないから家に帰したいから往診をしてもらえませんか?という依頼などもあります。ホスピスではありませんが、最期は自宅でという方たちにとっては在宅で看取りもしないといけないのです。そういう体制も整えていくというのも重要です。在宅医療は幅が広いですし、なにより家族の理解と協力が必要になってきます。昔みたいにいつでも家族がいるということはなく、昼間は患者のみということも少なくありません。例えば容態が急変して呼吸が止まってしまって、いつ亡くなったのか分からない、そういうときに帰宅した家族が慌ててしまうわけです。色々と予想される事態を家族に説明もしないといけないですし、それと同時に不安感などを覚えさせちゃいけないのです。
【本紙】 高齢化が進んでいますから重要なことですね。これから夢などありますか?
まち医者の役割
【久我】 開業医というのは地域密着型ですので、患者さんの健康状態を把握しながら維持していくというのが大切だと思っています。特に私は循環器が専門なので、例えば心筋梗塞であったりとか脳血管障害などといった患者さんを早いうちから予防して、なるべく発症をさせないというのが夢と言いますか、最終的な目標になります。そのために外来で投薬している薬、例えば血圧やコレステロール、糖尿などに早い段階から治療に介入していくと脳梗塞や心筋梗塞の発症率が下がってくるのです。ただ、そういう慢性疾患というのは自覚症状が出ないというのが問題なのです。だからこそ、ほとんどの方が続けるためには、こちらもしっかりとした知識を持って、患者さんに接することが大事なのです。患者さんの方が「私は大丈夫だ」と言って定期的な診察を止めてしまった場合、何年かして脳梗塞になってしまうということもあるのです。定期的な診察も大事ですし、診るほうもしっかりとした知識を持っていないと患者さんを納得させることも出来ません。うちは内科メインでやっていますので、将来的な面で言うと総合的な部分、例えば消化器のほうもやりたいですね。今後、専門医を雇ってやっていければいいかなと思っています。なにが専門とかって「まち医者」は言ってられない部分もあります。全てをある程度診ることができないといけないとも思います。
【本紙】 では、お友達をご紹介ください。
【久我】 同級生で歯科医をやっている小森谷忠明さんをご紹介します。
【本紙】 ありがとうございました。さらなる地域医療の発展にご活躍下さい。(久我先生は体を動かすのが好きで大学時代野球をやっていたそうです。ゴルフにも行きたいのだそうですが、時間がないのでリフレッシュには、ほどよく汗もかく打ちっぱなしが気持ちいいと。頼もしい先生でした。)