友達の輪495号(2015年11月22日発行)
石井酒造㈱ 八代目蔵主代表取締役社長 石井 誠さんへ
今日11月22日は「いい夫婦の日」ですね。読者の皆様にはご夫婦でお食事など予定されている方もいらっしゃることでしょう。さて、本日の友達の輪は幸手白百合幼稚園青鹿義和さんからご紹介いただいた、石井酒造の石井誠さんに登場いただきます。いい夫婦の日のお食事にも日本酒は欠かせませんね。
【本紙】 貴社の会長である石井明さんには19年前に友達の輪に社長として登場いただいておりますので歴代社長への取材になります。2013年の11月に社長になられたそうですが、いろいろチャレンジされているようですね。
【石井】(敬称略) 社長になってから、日々その大変さを痛感する毎日ですね。当家は父である会長がゴルフ練習場を創業し、先々代は幸手都市ガスを興しました。また、祖父が酒販会社を作ったりと、代々酒造業以外の新業態を興していますので、私に何が出来るかはわかりませんが、なにかチャレンジしてみたいとは思っています。本業の日本酒に関しては、若い世代に触れてもらう機会が少ないと感じています。私もまだ二十代で、同世代とお酒を飲む機会があっても、私が日本酒を飲みたいと思ってもなかなか難しいところがあるのです。日本酒というものをもっと身近に感じてもらうにはどうしたらいいのか、と考えてインターネットを使ったPR戦略に力を入れているところです。
【本紙】 若い人たちでお酒を造るプロジェクトをやられたそうですね。
20代の大吟醸
【石井】 昨年「20代の大吟醸」というプロジェクトを立ち上げました。さきほどのことに付随するのですが、もっともっと同世代の人たちに日本酒に触れてもらいたいのです。そこで、同世代が作ったお酒を飲んでもらえないか、触れてみてはくれないか、と二十代だけで日本酒を作ろうというものです。当社の特徴のひとつとして、私や杜氏が二十代で若いというのがあるのです。他にこういう蔵は少ないですので、ここを全面的に押し出していこうと思ったのです。どうせやるなら、携わる人間を全て二十代でやりきってしまおうということで、製造のみならず、デザイン、広告戦略、PRなどといった分野に特化した二十代のスペシャリストでチームを組んで立ち上げたプロジェクトになりました。そこで、今回限り数量限定で「二才の醸し(にさいのかもし)」という大吟醸酒を造りました。そのときにPR戦略の一環として、インターネットを通じてクラウドファンディングという不特定多数の人から資金を募るというシステムを利用しました。昨年の10月から資金調達の募集を始めまして、目標金額が100万円でした。目標金額に100%達しないと、クラウドファンディングでは支援はいただけないのですが、募集開始10日で100万円を突破して、最終的には207名の方から206万9千円の支援を募ることが出来ました。その支援者の多くが二十代、三十代というほとんど同世代に近い方たちでした。リリースパーティというお披露目会を開催したのですが、参加者は地元に限らず東京・千葉・神奈川と関東の方が多かったのですが、中にはこのために愛知から駆けつけてきてくれた方もいました。インターネットのコメント欄にも、「私も二十代です。応援しています」や「三十代ですけど、同じく応援しています」、また「普段は日本酒は飲まないけど、この機会に好きになった」とか「今までは日本酒を飲めなかったけど、これなら飲める」というものもあり、日本酒に触れてくれたというのが嬉しいですね。当初の目的である、同世代に日本酒を広めることは達成できたのかなと思います。「次はやらないのか?」という声もかかっているので、第二段も考えている最中です。
【本紙】 最近は若い人でも日本酒を飲んでいますね。
日本酒ブーム
【石井】 日本酒ブームといいますか、海外で日本酒が注目されたりしています。和食が世界遺産に登録されたのをきっかけにクールジャパンを受けて、逆輸入という形で日本酒が見直されています。しかし、テレビや新聞、雑誌などで紹介される銘柄に関しては、かなり需要が増えてきていると感じる一方で、我々みたいな地域の地酒がそのブームのいい影響を受けられるか、というとそうでもないのです。全国1600社くらいの酒造メーカーの中で、独自のブランド戦略をしてスポットを浴びている蔵に関しては確かにブームが来ているのかもしれません。とりわけ埼玉県の蔵はブランド力に乏しいところがあるので、まだまだブームの恩恵を預かるまでには達していないですね。埼玉県としても日本酒ないしお酒を観光資源として据えようという動きが少しずつ出来てきています。県内には35の酒造メーカーがあり、他に地ビールやウィスキー、ワイン等も作っています。県の観光課が主催して酒造巡りツアーが行われました。また、モニターツアーという形で新聞社や旅行店といった業界向けのものもやっています。蔵元の何人かが同行して、蔵を案内しながら日本酒を飲んで交流してもらうというもので、当社と加須の釜屋さんに来ていただきました。まだまだ数字といった部分には反響がないので、完全にとは言えないのですが、感覚的なところでは手応えを感じています。
【本紙】 夢などはありますか?
幸手に貢献したい
【石井】 大きな視点ですと、日本酒に関しては日本酒が酒になる時代を取り戻すというのがあります。日本酒が一番消費されていた頃は酒を飲むと言えば日本酒だったわけです。それは日本酒しかなかったというのもあります。いまは食文化も多様化していて、酒となればビール、ワイン、焼酎、ハイボールなど選択肢があります。そこで最初の選択肢として日本酒というのがないのです。食文化が多様化して、選択肢が増えたのはいいことですが、日本酒が選ばれなくなってしまったというのが現状です。それをなんとかして一杯目を日本酒でという風にしたいというのが大きな目標ですね。会社としては天保11年創業ですから180年近くになりますので、もっと幸手に貢献したいですね。将来的には幸手の代名詞のような存在になれればいいなと思います。幸手と名前が出たら「石井酒造があるところね」という感じですね。
【本紙】 お酒が飲みたくなりました。お薦めの銘柄は? そして、お友達をご紹介下さい。
【石井】 30年前より、「豊明」が一番の主力です。友達は「まちの接骨院」を経営されている馬場茂明さんをご紹介します。
【本紙】 ありがとうございました。益々のご繁栄を祈念します。(石井さんは現在28歳だそうですが、年齢を感じさせないスケール感を持った青年社長でした。中学時代はサッカーの全国大会にも出場し、今でも地元の先輩のチームで月に2回くらいサッカーを楽しんでいるそうです。酒蔵見学も製造期の場合はすべて見学できないそうですが、事前に予約をいただければ無料で見学できるそうです。公私に渡り今後の活躍が楽しみです。)