友達の輪543号(2018年2月4日発行)
義語家中継ぎ6代目 小林 麻美子さんへ
水仙から梅へと季節も移りましたが、寒さが厳しい今日この頃です。本日の友達の輪は「なかぱん」の工藤広志さんご夫妻からご紹介いただいた小林麻美子さんに登場いただきます。小林さんは鰻の老舗「義語家」の自称中継ぎ6代目になりそうです。
【本紙】 工藤さんの奥様から同級生と紹介いただきました。義語屋さんは長い歴史があるようですね?
【小林】(敬称略) お店のパンフレット等を作るに当たって調べなおしてみたところ、創業したのは明治20年のようで去年が創業130年目だったみたいです。始まりは鷲宮の東大和に住む農家の田口さんの長男が弟に家督を譲り、幸手を隠居の場所に選んだらしいのです。お客さまなどから「知久家の子孫ですか?」と聞かれるのですが、全く違うんです。「幸手宿こぼれ話」という本があるのですが、その中に「明治20年久喜新道開通の折に知久家が南北に分断された際に初代の妻きくが『ばゞあ料理』として幸手名物鰻屋を開業した」と紹介されています。開業当時からうなぎを扱っていたようですね。そして、思った以上に商売が当たったらしく、現在まで続いております。店名の「義語家」ですが、義を語る家という意味があり、初代の田口清平さんの信条が「義」だったようです。
【本紙】 後を継ぐという意識はありましたか?
継がなくても
【小林】 5代目の父と母が中心に義語家をきりもりしていたのですが、私が幼い時などは、あまりの忙しさに親子の時間もとれず、私はかまってもらえず、兄弟も近所に同い年の子もおらず、常に独りで過ごす状況でした。そして、もの心つく頃には両親から「大変だから無理に継がなくていい、好きなことをやっていいよ」と言って育てられました。それで、やりたかった漫画家のアシスタントなど、本当に自由に色々なことをさせてもらいました。結婚した主人はその漫画家のアシスタント時代に知り合いました。彼の実家は長野県上田市で194年続く味噌の醸造元の次男です。結婚するに当たり、主人が長野の実家を継ぐのか、それとも一人娘と結婚するので幸手に来るのかという話もありましたが、色々あって結果的に主人のお兄さんが実家を継いでくれることになったので、幸手に移住しました。ちょうど、両親も高齢になってきて仕事もやりづらそうでしたから、子供の面倒を見ながらでも出来ることなので、出前などを手伝ったりしていました。主人も「長く続いた義語家をどうするのか?」という事を考えていてくれたようで「このままお店を潰してしまうのはもったいないんじゃないか」「辞めるのはすぐだけど、これだけ長く続いてきたことに意味があると思う」と言ってくれたのです。また、小学校2年生の次男が「僕が後を継ぐ」と言ってます。まだ幼いのでどこで気持ちが変わるかは分かりませんが、子ども3人みんな男の子ですから、誰が7代目を継ぐと言ってもいいように、私自身も昔から、「父の作った蒲焼でうなぎ嫌いが治った人が何人もいる」というのが自慢でしたから、せめて鰻だけでもと、中継ぎのような形でその間を私が引き受けることにしたのです。
【本紙】 漫画家になろうと思ったのですか?
となりの本屋さん
【小林】 子どもの頃、家が忙しくて親とのコミュニケーションがあまり取れなかったのですね。そんなときにどうしていたかというと、テレビを見ているか、絵を描いているかだったのです。テレビにしても子どもですので、ドラマよりもアニメでしたね。アニメは片っ端から観ていました。また、隣が本屋さんだったので、よく行っていました。本が欲しいというと、漫画にせよ活字にせよ、よく買ってもらえました。本を読んでいる間はおとなしくなりますし、また忙しくて子どもに構えないところを本で賄ってくれていたのだと思います。そんな子ども時代を過ごしましたので漫画への関心は強かったのです。ある時、読んでいた漫画雑誌にアシスタント募集という記事を見たのです。ちょうど自分の好きな作風の先生だったので、応募してみたら採用となりまして、アシスタントとして勉強させていただきました。アシスタント生活は時間が長く、朝の10時に行って夜の10時に解散という感じでした。私は背景を担当していましたが、当時はアナログなので専門学校を出ていれば良かったと思うくらいに透視図法が難しかったです。アシスタントを8年やりましたが、当時の彼(現在の夫)から「漫画家にならずだらだら続けていていいのか?」と言われました。彼はかなりストイックに「自分はデザイナーになる」と確固たる夢に向かって努力し実現した人で、それに対して、私は漫画のようなものは描いてはいましたが、「真摯さが足りず、漫画を創作をする側の人間ではない」と引き際に気づかされました。そこで漫画家は諦め主人と結婚することになりました。
【本紙】 遠回しなプロポーズみたいですね。しかし、うなぎはいま高騰していますね。
【小林】 昔は蒲焼1人前1000円ちょっとで食べられたのですが。父にしても、もう少し気軽に楽しんでもらえる物だったのに、という思いもあるようです。それと、父たちも大きな宴会を何回も受けられるような年でもなくなってきましたし、宴会自体も少なくなってきています。そこで、「義語家の売りはなにか?」と改めて考えた場合、やっぱり「国産」「とろけるような身の柔らかさ」「ご飯と合わせたときに一番美味しく感じるタレであること」にこだわり続けた鰻なんです。一度食べて、気に入ってもらえれば改めてお店に来てもらえると思ったのです。去年「幸手宿うまいもんまつり」のときに、お店の前で普段の半分以下のサイズのうな丼を出したのです。そうしたら、思いのほかご購入いただけました。鰻屋は値段が分からないと入店しづらいですし、また味の好みもありますから、いくらくらいだったら試してもらえるんだろう、と考えて500円で提供させていただきました。また、お店に来られない人のために蒲焼の真空パック開発しました。売りである「柔らかさ」の再現にこだわりながら、1つ1つ手焼きでパックにしました。義語家のうなぎで一番美味しいのがお店で食べるもので、二番目は真空パックのものと発信しています。ゆくゆくはふるさと納税の返礼品にの使っていただきたいです。食べて美味しいと思ったら実際に食べに来てもらえると思うのです。
【本紙】 新商品開発など楽しみですね。ところでお休みのときは何をされていますか?
【小林】 平日はお店を手伝っていますので、土日のどちらかを休みにしてもらい、出来る限り子どもと接する時間を増やすようにしています。男の子3人ですが、主人がマメで料理好きなので、色々とやってもらえて助かっています。
【本紙】 ご主人に感謝ですね。では、お友達をご紹介ください。
【小林】 歯科衛生士の小林幸代さんをご紹介します。
【本紙】 ありがとうございました。益々のご繁栄祈念します。(小林さんはグラフィックデザイナーのご主人の協力で義語家の新しい商品開発やWEB発信等のプロデュースもされていて、頼もしい中継ぎ6代目と感じました。真空パックうなぎ蒲焼【並】約110g2,000円・【上】約150g2,500円・共に税込・送料別 地方発送・店舗受取)
義語家
幸手市中1-8-16
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