タウンプレスよみうり

読売センター幸手が隔週で発行している地域ミニコミ紙「タウンプレスよみうり」の内容をご紹介

サイトマップ・個人情報取扱いについて
  • トップ
  • 友達の輪
  • タウンプレスとは
  • タウンプレス最新号
  • 会社案内
  • 特集号
  • 学校新聞
  •  
  • 読売新聞

友達の輪598号(2020年6月7日発行) 
幸手市教育長 山西 実さんへ

【本紙】 長い間教鞭をとられていらっしゃいましたが、先生になろうと思ったのは?

【山西】(敬称略) 社会には、設計や製作にかかわる仕事、人の相手をする仕事、動物を相手にする仕事、販売や営業など色々な種類があります。私はその中で、人を相手にする仕事や人に喜んでもらえる仕事をしたいと思っていました。中学生くらいの時は教員だけではなく、福祉やレストランでの仕事も考えていました。しかし、他の物を介さず、直接人と体当たりできるのは教師だということに気づき、自然と教師の仕事に絞られていった感じです。人と関わりながら成長していく様や喜びを共有するという思いがあったのでしょうね。性格は、極めて恥ずかしがり屋で内向的ですので、 人前に立つということはとても勇気がいりました。でも、教師という仕事は、私には非常に魅力的でした。

【本紙】 最初はどこの学校に赴任されたのですか?

漫画から小説へ友達の輪写真

【山西】 幸手の八代中に1年。それから吉田中、東中と移り変わっていきました。文学が好きでしたので国語を専門としました。実は小学校4年の時までは漫画が大好きで、ずっと漫画ばかり読んでいました。しかし、今と違って毎週いろいろな漫画雑誌が刊行されるわけではなく、月に1回位でした。だから、漫画を買ってきても一晩二晩くらいで読み終わってしまい、もう読むものがなくなってしまうのです。それで、家にあった小説を読んでみたら、それが漫画以上に面白かったのです。それから、古典中心に読み漁りました。兄と姉がいろいろな本を持っていましたので、その影響もあったのだと思います。また、本の内容が面白いというよりも、本を読むことそのものが楽しかったのです。家にあった古典全集など夢中で読みました。小学4年生が枕草子や徒然草などを読んで夕飯の話題にするわけですから、家族も興味津々で自然に私が家族の中心になっていった感じがしました。そうして、もっと先の方まで読んでみようとか、今度はこっちの本を読んでみようとか、小説に興味が移り、それから、すっかり漫画は見なくなってしまいましたね。

【本紙】 茶道も長いようですね?

異業種交流

【山西】 私は教員という職業が好きで、土日も含めて、子どもたちと学校にいることが、本当に楽しくてバラ色の人生でした。ところが、2年3年経った時に、これだけで生きていたら、楽しい事は楽しいけど、自分という人間が教員生活・学校社会しか分からない人間になるのではないか?と思えたのです。もちろん、学校の仕事は第一優先で考え、それだけではなく、他から吸収しなければと思うようになりました。学校の常識は社会の非常識と言われますが、学校では通用するけれど、一般社会の中でどれだけ通用できる人間になるのかな?と考えたとき、月に1回か2回、学校を離れて別の世界で別の職業を持っている人、別の立場を持っている人たちとの交流が必要だと思いました。では、何をしようかと思った時、出来れば長く深く続けられるものと考えていました。そんな時、友達が茶道をやっている事を知ったのです。茶道なら色々な職種の人もいるだろうし、奥も深く長く勉強も出来る、それに、定まった人数が集まらないと出来ないものでもなく、仕事から離れていつでも出来ると茶道が私の希望に合ったのです。まだ教員になって数年の24,5歳位の時でした。

【本紙】 ベテランですね。流派はどちらですか?子どもたちにも茶道体験をされているようですね。

幅広く知識を友達の輪写真

【山西】 茶道の世界では、まだまだベテランには入りません。流派は大日本茶道学会で明治31年に創立され、日本に伝承されてきた数々の先人の茶道の精神性と技を、近代的な環境に照らし合わせて研究・公開していくことで、後世に伝えていくことを目指しています。そのために、茶道の秘伝を公開し研鑽できます。ある流派では、一定水準に達しないと学べないということがあるそうですが、初心者でも奥伝を拝見させていただくことができます。私は、30代で茶道教授の資格を取得しましたが、茶道の専門知識にかかる学科の試験や様々な点前の実技の試験がありました。古文書を見て、読み下すという勉強や、焼物、作家、茶花の勉強もあれば、建築や禅語、時代背景を知る必要もあるので、非常に幅広く知識を得る必要がありました。また、点前も順序どおり行えばよいというわけではなく、位、連続、緩急などにも留意しなければなりません。小学校では社会科の室町文化の一環として指導要請が多いので、室町期におけるお茶の役割を説明しています。また、子どもたちは茶の点前を直接見た事がないので、私がまずお点前を披露し、その後、子どもたちにお茶をたててもらい楽しむ事が多いですね。幼稚園児にお点前を披露したときに「最初は苦いと思ったけど、口の中に入っていったら、お菓子の甘さと上手く溶け合って、とても美味しく感じました。」と感想を聴き、物の本質や感性というのは、大人も子どもも関係なく、本物体験することが重要だということが分かりました。

【本紙】 園児とは思えないですね。子どもたちになにを一番望んでいますか?

磨かれてこそ個性

【山西】 「如何に自分の人生を豊かに切り拓けるか」ではないでしょうか。ITの進歩で20年後には、現在の職業の多くが無くなってしまうと指摘される時代です。そんな時代だからこそ価値あるものを求め、自分の気持ちを豊かにして乗り越えていく力が必要なのだと思います。誰でもよりよく生きたいという内からの願いは持っているはずです。絶えず成長していこうとするところに人間の特質があります。でも、そのことが、時に枯渇したり、忘れてしまったりする事もあると思います。その結果、学びから逃避したり、欲望に流されたり、したい事だけをするという行為に繋がってしまうのです。そうならないために、よりよい人生を求めて懸命に生きようとしている姿に大人がまっすぐ目を向け、枯渇しないよう働きかけていくことが重要だと思います。個性が重んじられる時代ですが、個性というのは磨かれてこその個性です。個性をなにもせずに放っておいたら、野生化することもあると私は危惧しています。子どもが持っている良さがあるのなら、それをどう伸ばしてあげるのかが大事なんです。

【本紙】 そうですね。では、お友達をご紹介ください。

【山西】 定年を過ぎてなお、筑波大学大学院で学び今年の3月に卒業した高島勝也さんを紹介します。

【本紙】 ありがとうございました。コロナ対策で大変な時期ですがご活躍を祈念いたします。(山西さんは、茶道では実仙宗薫(じっせんそうけい)という茶名をもち、教授もされるそうです。茶道界でも指導者の道を歩まれているのですね。)