タウンプレスよみうり

読売センター幸手が隔週で発行している地域ミニコミ紙「タウンプレスよみうり」の内容をご紹介

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友達の輪604号(2020年9月20日発行) 
はなの郷(有)田園福祉企画代表取締役 木村 光行さんへ

【本紙】 こちらの施設を開いたのはいつになりますか?元々、介護関係のお仕事をなさっていたのですか?

【木村】(敬称略) 平成18年になります。私は五霞町役場に31年間在職しておりました。当時、幸手市との合併問題が出たときに、私は総務課にいたこともあって、五霞町の財政再建をしていかないとこの先対処できないと、町長と共に合併推進を進めていました。結果的に合併できませんでしたが、推進していた立場もあり57歳の時に退職しました。そして、この事業を始めたのです。

【本紙】 役場のお仕事からすると、まったく違う業種ですね。

認知症の母を

【木村】 そうですね。実は、私が役場在職中に母が認知症になり、その体験もきっかけのひとつかも知れません。当時は認知症の施設が五霞町にありませんでしたし、妻も仕事しているという状態でした。認知症になる前は、農業を手伝ってもらいながら留守番をする事は出来たのですが、認知症が進んでしまうとそれも出来なくなってしまいました。徘徊する事も多く、幸手警察署のパトカーに乗せてきてもらうという苦い経験もありました。いよいよ、母親を人に委ねないといけないなと思う反面、母親が知らない施設に行って知らない人のお世話になるのもかわいそうと思うところもありました。私なりに考えて、近所のお茶飲み友達を有償ボランティアとしてお願いし、母親を見てもらえないだろうかと考えたのです。有償ボランティアなら所定の報酬を支払いやすいですし、受けてくれる方も報酬を受け取りやすいだろうと思ったのです。そして、これらの体験から誰が認知症になっても、その人らしい生き方を支援出来る介護施設がなければ、近い将来みんな不自由な思いをすると思ったのです。それで、私が自分で開設しようと考えたのです。

【本紙】 グループホームを運営しているようですね。お母さんはこの施設に入られたのですか?

身の丈サイズで友達の輪写真

【木村】 ワンユニット定員9名という規模の小さい施設です。ワンユニットというのは採算がとりにくく、最低でもツーユニットないと事業としては成り立たないので、誰もやりたがらない時代でした。私の場合は生涯ボランティアという考えもあり、自分の土地で、自己資金を頼りに細々とやれればよかったですし、立ち上がったら母の面倒も見ようという思いで、私の身の丈に合った施設という考えです。施設が完成した1年目に1名、2年目に2名、3年目で4名、5名と入所者が増えましたが、とても経営と言えるような状態ではありませんでした。14年間やってきて地域の理解も頂きようやく満床になりました。開所当時、母は別の特養でお世話になっていましたが、当時のスタッフが「部屋も空いているし、お母さんの面倒は私たちが見るから呼んであげなさいよ」と言ってくれたのです。要介護5の状態で介護も負担をかけるかなと思いましたが、その言葉に甘えることにしました。最後の2年間だけでしたが、傍で見られて良かったかなと思いますし、昔から居た土地に戻ることが出来て満足してくれたのかなと思うようにしています。結局はこちらの勝手で母親を施設に入れてしまったという負い目も少なからずあります。経験を積んで、介護は人を看るだけではなく、利用者様の尊厳を守り、常に寄り添う介護を心がけています。当グループホームでは看取りも当たり前のことと捉えていて、今までも多くの人を看取らせてもらいました。最近では、医療機関であっても3ヶ月位で退所するケースが増えています。その際にケースワーカーの方から連絡を貰うことも多く、当グループホームでは可能な限り受け入れるようにしています。

【本紙】 「はなの郷」という名前の由来は?

田園風景の中で友達の輪写真

【木村】 私はおばあちゃん子でとても可愛がってもらっていました。祖母は「はな」という名前だったので、その思いでつけた名前です。会社名である田園福祉企画というのは、田園はそのまま田畑に育まれたここの地域環境での農業と地域福祉を目指し、最後の企画は私なりに農業と福祉を上手く融合させたいと考え名付けました。ケアもそうですが、人間最終的には食べることが一番の楽しみだと思います。そこで、米、ブルーベリー、自然薯、ぶどう、野菜に力を入れています。ブルーベリーは「つくば市で盛んに栽培」という記事を読んだことがあり、米から転換するのに適していると思っていました。また、町に道の駅が出来る頃で、私も関わっていたこともあって、道の駅で販売できれば面白いだろうとも考えました。思い立ったらすぐに行動というタイプなので、重機を揃えて7000㎡をブルーベリーと野菜畑にしました。十数年経過した現在は、自然淘汰され枯れる木もあり半分位になりましたが、収穫したブルーベリーはここでジャムにして、年間通して食べられるようにしています。米,野菜もここで作ったものを出すようにしています。また、施設内から畑を見渡すことが出来るので、季節の移ろいを感じて頂ければと思ってます。

【本紙】 仕事を通じてのエピソードなどありますか?

あたたかさを感じた

【木村】 開業当初から多年にわたりお付き合いいただいた利用者様が、長寿を全うし残念ながら息を引き取られてしまいました。夜間ご家族である息子さんとお孫さんに来てもらった時のことです。お孫さんが「お婆ちゃん家に帰るよ」と言ってお婆ちゃんを背負って行かれたのです。通常なら葬儀屋さんに連絡をして、ご遺体を引き取ってもらうのが一般的ですが、その家の方は一度お婆ちゃんを家に連れて帰りたいという思いで背負って行かれたのです。こういう家庭もあるんだ、と強く感動したのを覚えています。

【本紙】 やさしいご家族ですね。では、お友達をご紹介ください。

【木村】 セキグチ精工株式会社を経営する関口博さんを紹介します。

【本紙】 ありがとうございました。生涯ボランティア精神でこれからもご活躍下さい。(木村さんはとても明るく前向きな方でした。「はなの郷」に入所するには地域密着型施設なので、五霞町に住所を有する事が条件で要支援2の方から利用できるそうです。施設の1階ではデイサービスも開設しています。畑のなかにあるのどかなデイサービスとして利用者が楽しんでいるそうです。)