タウンプレスよみうり

読売センター幸手が隔週で発行している地域ミニコミ紙「タウンプレスよみうり」の内容をご紹介

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友達の輪605号(2020年10月4日発行) 
セキグチ精工(株)代表取締役 関口 博さんへ

【本紙】 創業はいつになりますか?

【関口】(敬称略) 1972年に関口製作所という企業名で、最初はプレス金型を作っていました。今でこそ日本の金型製造技術は世界的にも上位にたっていますが、48年前は製造設備も乏しく製造技術も低く、アメリカがダントツでした。戦後しばらくしてアメリカの技術が日本に入って来たわけですが、一部の企業ではその技術をすでに取り入れていました。昭和44年の21歳の頃、横浜のある会社に縁があり就職しました。その会社はアメリカの技術をいち早く導入した会社でした。プレスというと人が機械の前で作業する為、怪我の危険性が高い事で知られています。人が手作業で行う金型を「単発金型」と言います。この会社ではひとつの金型の中に多くの工程が組込まれた「順送金型」を採用していました。ボタンを押すだけで人が機械から離れても自動で大量生産できるアメリカの技術です。この画期的な技術を目の当たりにして、21歳ながらもこれは将来性ある技術と直感しました。この会社には2年程在籍しましたが、もっと勉強したいと就業後の夜間、東京の機械製図学校に通いました。基礎となる設計・製図を勉強して独立する準備を始めたのです。

【本紙】 21歳で独立計画ですね?

出会い・職も人も

【関口】 備えあれば憂いなしですね。卒業をする頃に独立するチャンスが巡ってきました。大阪の取引先の社長が、技術収集を目的に横浜に来ていたのです。この方と一緒に食事をする機会に恵まれ、そこで「私はこの仕事で独立したい、その為に今準備中なんです」という想いを話しました。すると、社長が私の独立を援助したいと言ってくれたのです。その代わり、大阪に来てほしいということでした。自分の会社に私が仕事をするスペースを確保して、さらに私がリクエストした仕事に必要な機械も全て揃えてくれたのです。その支払いは何年かかっても、売上からの相殺でいいと提案してくれました。その話に私は躊躇なく乗りました。そこで始めた企業名が関口製作所です。第三者、それも他人の資金援助により仕事が始められた訳で、金型という職種に出会えたことが私の人生を築き上げた大きな要因です。その会社の社長もお亡くなりになり、今は息子さんがあとを継いでいます。その会社は私の中では永久に特別な存在で、今でも第二の故郷として、また感謝の思いで里帰りのように年1回、2回は訪れています。

【本紙】 大阪から五霞に戻ったきっかけは?

いつかは地元で友達の輪写真

【関口】 五霞町に僅かばかりの土地があり、いつかは戻ろうと思っていました。大阪に10年いましたが、戻るのなら子どもが転校せずに済むよう、長女が小学1年生になるタイミングで戻りました。地元に戻りお客様に支えられ35年以上経過しました。いま72歳になって、振り返れば大阪で創業し、五霞に戻り、夢中で走り続けてきた感があります。現在ではプラスチック成形金型に特化しています。今の世の中、プラスチック製品が大半を占めています。それらのひとつひとつの部品を、何十万個、何百万個と製造するためには金型が必須になります。私たちの仕事はそれら量産に必要な金型を設計・製造するというものです。当社では特にカテーテル等医療機器向けや自動車の車載電装部品の金型受注が増えています。これらは高い寸法精度と高品質を求められるとても高難度な仕事です。だからこそ、そこに特化しようと考えました。そして、他社との競争力をつけるために超精密にこだわっています。現在、取組んでいる仕事はミクロン単位の精度を満たす金型づくりです。1ミクロンは1ミリの千分の一です。当社の能力は2ミクロンまでの精度保証が出来ます。金属は温度に敏感です。当社には年間を通じて24℃を保つ部屋があります。1度の温度変化でも数ミクロンの膨張収縮を繰り返す為、精密金型を作るには最初から最後まで、その温度環境の部屋で作らなければなりません。ですから、停電や地震などは天敵ですね。

【本紙】 日本は技術力の高いものづくりの国ですね。

100年企業を目指す

【関口】 そうですね。今とても大切にしていることは、日本が得意とする機械だけに頼らない「人の感性」を活かしたものづくりです。人の感性は機械に真似できない部分があります。微細な温度変化や段差、異音や異色等を人が感じながら金型を組上げます。これは聞いた話ですが、新潟の燕三条の鍛冶職人は味覚をも使うそうです。叩いた砂鉄を舐めてみたときに具合が分かるそうです。それを聞いた時、人間の五感全て使えるのではと思いました。当社はまだ味覚までには達していませんが。当社の経営理念は「三方よし」を掲げています。自社だけの満足ではなく、売り手も買い手も、そしてそこに携わる世間もよし、が理想と考えています。利他への想いは社会貢献となり、自分自身の継続への励みにもなります。「三方よし」を大事にし、感性を重視したものづくりを続ければ目指す百年企業は必ず達成できると信じています。

【本紙】 人生百歳、企業も百年ですね。ご趣味などはありますか?

【関口】 特にないのですが、若い時はビートルズの影響を受け、バンドをやっていました。私はサイドギターを担当していました。そんな経験のせいか、楽器がないと寂しく感じ、自分の部屋にはいつも楽器が置いてあります。3年位前からドラムにも興味が出てきて、電子ドラムを購入し、ヘッドホンで音楽を聴きながら練習しています。同級生に声をかけて「老人バンドでもやらない?」と誘っていますが、なかなかメンバーは集まりません。目下、私ひとりで休みの日に触っています。まだ5歳の孫が音楽に興味があるようで、孫が遊びに来ると電子ドラムを教えるのも楽しみのひとつですね。妻にも仕事一辺倒で苦労をかけてしまいましたので、今後は旅行などで一緒に楽しむ時間をさらに増やしたいと思っています。

【本紙】 お仕事の最大の理解者は奥様ですね。では、お友達をご紹介ください。

【関口】 久喜市にお住いの高嶋晋平さんを紹介します。アイデアいっぱいの実業家です。

【本紙】 ありがとうございました。百年企業目指してご繁栄を祈念します。(関口さんの会社では、10年前から毎月1回、社員総出で早朝周辺のゴミ拾いをしています。きっかけはコンビニの店員さんのゴミ拾いを見かけ、気持ちの良い感動を覚えたそうです。社会貢献と地域貢献の両輪企業ですね。)