友達の輪613号(2021年2月7日発行)
すがま工芸代表 須釜 規夫さんへ
【本紙】 こちらの工房はいつ頃からやられているのですか?
【松沼】(敬称略) こちらで始めたのは4年前からになります。以前は春日部や越谷の家具屋さんに勤めて、修行させてもらいました。実はその前は今とまったく関係のない調理師をやっていました。学生時代から色々とアルバイトをして、進路も考えていたのですが「料理関係は食いっぱぐれがない」と聞いたのです。何かを作ることも好きでしたが、料理も好きでしたので、調理師の道に入りました。調理師学校に入り、卒業後はそのまま調理師学校で助手をしてましたが、しばらくして、赤坂プリンスホテルを紹介され、そこで働くようになりました。赤プリは1年程でしたが、主にパーティなどで飾る氷細工を作っていました。氷細工でお世話になった師匠が、札幌雪まつりの雪像作りにも参加されるような方で、その仕事ぶりを見ていて、調理ではなく造形の仕事をしてみたいと思うようになりました。『そう言えば、昔はいろいろな小道具を作りたがっていたな』ということを思い出して家具屋になることを決めたのです。
【本紙】 調理師からの転身ですね。
食からモノへ
【松沼】 そうですね。24歳位のときです。正直、周りと比べて調理に向いていないということを実感するようにもなっていました。それで、職安に行って地元で家具を作っている会社がないか探し、春日部にある野崎製作所さんを見つけて、15年間お世話になりました。最初に配属されたのが、大量生産物を製作する班で、例としては、マンションの吊り戸柄や玄関家具などといった同じ形をしているものを沢山作る部門です。この会社には数多くの職人さんが在籍していて、15年間で、その職人さんの人数分だけ様々な技術を教えてもらうことが出来ました。自信もついてきたので独立したいと考えはじめ、越谷の家具屋さんに移りさらに技術を磨いていました。そして、実家に空きスペースがありましたので、実家に頼んで自分で工房を手作りました。
【本紙】 お一人で仕事をされているのですか?失敗などもありましたか?
すべて一人で
【松沼】 全てをひとりでやっているので、ケガも病気も出来ません。スタッフを採用しようと考えたのですが、コロナで仕事の受注量が3分の1に減ってしまい、給料が払える自信がなくなってしまいました。コロナが収まるまで何か別の手段を考えていかないと乗り越えられないかもしれません。仕事のほうは、マンション施工会社の下請け等から、発注される括り付け家具等の製作依頼が主です。失敗も経験しましたね。マンションは限られた空間を使いますから、サイズもぴったりで1~2ミリでもずれては駄目です。自分の中では許容できたとしてもコンマのレベルになります。ですから、サイズが違っていたり、造りが違っていて全返却ということもありました。また、家具は扉の中を入るので、そこをまず通らないといけません。そのため、最初はバラバラの状態での搬入になります。実は過去に打ち合わせ不足で、完成した状態で送ってしまったことがありました。仕方なく、現場でばらしてから納めました。あとになって考えてみれば、「入らないんじゃないか?」と思いが至らなかったのですね。苦い経験です。失敗は信用にも繋がりますから、細心の注意を払うようにしています。
【本紙】 オリジナル家具なども製作しているのですか?得意としている家具はありますか?
希望通りの家具作り
【松沼】頼まれれば可能な限り何でも作ります。特に今は地元の皆さんにこういうことが出来ますよ、とアピールしたいですね。基本的に家具なら何でも出来ますが、水道や電気など他の設備が絡んでくるものは、兼ね合いもあるのですぐにはお答えしかねます。得意な家具ですが、最近はテレビボードの依頼が多いので得意です。ご自宅に合わせたオリジナルなテレビボードなどいかがでしょうか?是非、お問合せ下さい。材質から選べますので、厚さや大きさも自由です。私用に製作したテーブルがあります。横2.4m×奥行1m、厚さ6cmの木材を平らに削って、天然塗料で仕上げました。出来栄えと使用感にとても満足しています。
【本紙】 拝見したいですね。これから作ってみたいものなどありますか?
【松沼】 そば打ち台のような道具として使える家具ですね。実際に作ったりはしているのですが、まだまだ改良が必要です。彩蕎一門会というそば打ちのグループがありまして、そこの依頼でそば打ち台を作るようになったのです。出張して講演で使うそうなので、持ち運びしやすく、そば打ちに使うので硬くて頑丈という条件です。1~2年試行錯誤してようやく形になってきました。
【本紙】 もの作りは楽しいですね。他に趣味などは?
革細工も
【松沼】 革細工が好きですね。今はもうそんな暇もなくなってしまいましたが、バッグや財布を作ったりしていました。実は10年位前から趣味でやっていましたが、独立してから仕事が忙しくて、ここ5年位はまったく出来なくなってしまいました。今、持っている財布も自作品です。家具の仕事が終わってから自宅で黙々と作っていました。皮は全て手縫いで、1週間位で完成しました。実用的に使っています。革製品は使うほどに味わいが出てきますね。そういう意味からも、木と革は似ていますね。革の面を「こば」というのですが、木でも同じ呼び名です。使う道具も似ていて、意外と共通点があるなと思いました。実は家具をやっている途中から、革も楽しそうだなと興味を持ったのです。家具と革を組み合わせてみるのも考えましたが、先駆者がすでにいるのです。革を作っている人が家具を手がけたり、その逆というのはよくある話です。また、趣味かどうかはわかりませんが、最近、まめ柴を飼い始めました。10キロになるかならないかくらいの大きさで、非常に可愛いですね。それを散歩させるのが楽しくて、とても良い気分転換になります。
【本紙】 かわいいですね。今後の夢はありますか?
【松沼】 地域に根差して、家具だけでなく安全な野菜などの生産にも関れたらと思っています。現在、親が農業をやっていて、将来は農地を他者に貸すのですが、畑は残す予定なので、そういったところを利用して、漠然ですが何か生産できたらと考えています。
【本紙】 地元の家具工房を通じて、野菜などのふれあいもできれば素敵ですね。では、お友達をご紹介下さい。
【松沼】 「ごはんのお店 彩花」という定食屋さんを経営されている藤沼彩絵子さんを紹介します。
【本紙】 ありがとうございました。オーダーメイドのオリジナル家具、期待しております。(須釜さんは自分で作った工房で、仕事をされていますが、まめ柴とのふれあいが安らぎのように感じました。)
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