友達の輪640号(2022年3月20日発行)
工房 空に月 土方 幸子さんへ
【本紙】 工房はいつ開かれたのですか?
【土方】(敬称略) 以前は東京に住んでおり、広告のデザインなどをやっていました。主人も何年か会社勤めをしたあと、独立して自分の会社を立ち上げ、グラフィックデザインの仕事などをしています。実は東京に住んでいる頃から現在の工房の物件を所有しており、ずっと東京でマンション暮らしというのも大変かなと思い2014年に越して来たのです。二棟同じような物件が並んでいるのですが、越して来たら隣の物件も空いていましたので、そちらも購入してふたつを繋げ、片方を生活スペース、もう片方を工房としました。最初は工房という予定もありませんでしたが、建物自体がお店作りでしたし、道路にも面しているので何もやらないのはもったいないなと思ったのです。10年くらい前ですが、関口千鶴さんというとても素晴らしい「かご編み」の先生に出会う機会がありました。関口先生はシュロの作品作りをやられていて海外にも出品している方です。基本的な編み方を教えるだけでなく、編むことの面白さを引き出してくれた方です。ある作品を作った際に、思ったようにいかなかったのですが、その作品のいいところを見つけて褒めてくれるのです。それが私としてはすごく楽しかったのです。それで、自分の時間にも余裕が出てくる年齢になり、幸手の引っ越しをきっかけに東京で習ったワークショップを生かしたかごの「工房」を作る事にしました。
【本紙】 かご編みというジャンルなのですね?自然素材はどうするのですか?
素材集めが大変
【土方】 バスケタリー等、色々な言い方はありますが、私の場合自然素材でかごを編むというものになりますね。自然由来の素材がほとんどですので、ちょっとした旅行に出かけても、目に見えるもの全てが素材に見えてしまいます。(笑)ちょっと良いと思えるものがあったら許可をいただいて持って帰ります。そういうことが割と多くて、帰りの電車では大きな物を担いで乗ったこともありますよ。この辺りではあまり見かけないのですが、ヒメガマという植物はとても良い素材になるのです。多摩川を始めとした河川敷に出かけた場合にはよく採取してきます。大抵電車で行くのですが、とにかく長いので束ねて抱えて持って帰るのですが、目立ちますね。ちょっと前も素材探しに湘南方面まで電車で行ってきました。蔓は12月~2月くらいが採取時期になります。勝手にとることは出来ませんから、管理している方から許可をいただきます。クルミや山ぶどうなど、皮の樹皮を剥がすようなものは6月の梅雨時期になるのですが、梅雨明けが早いと猛暑で大変な作業になります。
【本紙】 素材あっての作品ですか?作品は販売されているのですか?
形あっての素材
【土方】 グラフィックの仕事をやっていたせいか、ある形を作るためにどういう素材がいいのか、試しにこういう素材で作ってみよう、という感じです。もちろん、素材からどういったものを作るかということも考えることもありますが、私はどちらかというと、形を作りたいからこういう素材を使う、というのが多いですね。最初は、花を飾るのが好きなので、一輪挿しの花入れから編み始めました。あまり大きなものではなく、日常の空間の中にちょこんとあるようなものを提案したいというものでした。かごバッグなども作りますが、バッグは上手な職人さんがいらっしゃるので、自分らしさを全面に出した自由なものを作るようにしています。年2回程度ですが、「空に月」にちなんで、夏に「空の市」、秋に「月の市」という展示販売を開いて、作り貯めた作品を出しています。東京で一緒に習っていた友人と、私が今まで知りあった作家さん達の陶器作品やガラス作品も展示しています。幸手に来てすぐの頃に、地元のイベントに参加させていただいたり、その後カフェでの企画展もやらせてもらいました。各地のアートフリマもコロナが収まり次第参加できたらと思っています。また、「市」に来た方に喜んでいただけたり、「とても気に入って使ってますよ」と聞くと嬉しく感じます。来てくれた方が、自然素材に興味を持ってくださって、自分でも作ってみたいと言ってくれる方も多いので、そういった方のために、ワークショップのようなものも工房で出来ればと思っています。
【本紙】 「空に月」という名前の由来は何でしょうか?これから作ってみたい作品というのはありますか?工房内にあるリースなども作品ですか?
素材の経年変化
【土方】 これは飼っている猫の名前です。空という名前の猫と月という名前の猫を飼っているのでそこから取りました。ただ、「空と月」だとありきたりな感じでしたし、空にお月様があるというイメージにしたかったので、「空に月」という名前にしました。今まで同じような素材で作ってきていましたから、ちょっと違う素材も使ってみたいと思いますね。例えば、布、石、ワイヤーなどを組み合わせてみても面白いと考えています。リースも作品です。去年、たくさんの花が取れたのでそれらを使って作ったものです。特に凝ったことをしたわけではなく、ただ差しただけですが、いい感じに枯れてきてくれて雰囲気が出るようになりました。こういったことを楽しめるのも自然素材の醍醐味でもありますね。かごでも、最初は鮮やかな緑色だったのが、使い込んでいくことで徐々に茶色に変わっていく様子を楽しむことも出来ます。私たちの場合は、素材を乾燥させてから濡らして柔らかくして、加工するのです。時間と手間が掛かりますから、バッグくらいのサイズになると高価になってしまうのはしょうがないのかもしれません。
【本紙】 工房を見学することは出来ますか?また、お友達をご紹介ください。
【土方】 普段は閉まっていますので、事前にお電話かメールでご連絡いただければ対応します。「お茶時間rest」さんの飯泉幸子さんを紹介いたします。
【本紙】 ありがとうございました。素敵な作品をこれからもたくさん創作して下さい。(土方さんはご希望があれば、かごのオーダーも承っていただけるそうです。 工房には大正時代の箪笥が飾られていました。お母様が結婚する前からあるそうです。傷や染みなどが思い出となっているので、そのままで残しているそうです。これも自然ですね。)
工房 空に月〒340-0114 幸手市東1-27-11
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