友達の輪654号(2022年10月22日発行)
ことことオーナー 山内 亜希子さんへ
【本紙】 お店はいつからやられているのですか?開業するきっかけとかは?
【山内】(敬称略) 開店して今年で12年目になります。調理の世界に入るまでには紆余曲折がありました。私の母は教職でしたので、大学まで行くものだという環境の中で育ちました。そういうものだと思っていましたし、本が好きだったということもあって、出版関係の仕事に就くのもいいかもしれないと考えたりしていました。でも、大学時代に色々なアルバイトの経験を通して、私にはデスクワークが向いていないことに気が付いてしまったのです。また、大学時代のアルバイトのひとつに長野県の農家さんに住み込みで農業を手伝うというものがありました。そこで何気なく作った料理を、普段はあまり食べないという子供たちがおかわりまでしてくれたのです。その時の感動というものがこの世界に入る原点になっているのかもしれません。
【本紙】 学生時代から料理をされていたのですね。
バイト先で進む道を
【山内】 料理を始めたきっかけは、小学生の時、母が手を骨折して、夕飯が作れなくなり、私は弟2人の長女だった為、手伝いを始めたことがきっかけです。このことは、自分の人生で大きなターニングポイントだと思っています。昔から料理が好きで休みの日には台所に立って料理をしたり、お菓子を作ったりしていました。いざ、就職を考えることになった時、デスクワークは苦手ということ、料理が好きということ、そして長野での経験から、料理の仕事に就くのもいいかもしれない、と考えるようになりました。大学1、2年生の頃だったのですが、調理の学校に行くための学費を稼ぐためにアルバイトを始めました。さらには大学を辞めることまで考えたり。ただ、その時のアルバイト先のオーナーさんが「食の道に進んだとしても、それを達成できないかもしれないことも考えて、大学はしっかりと卒業しておいたほうがいい」と助言してくれたのです。それで通っていた大学を卒業したのちに、国立にある調理師学校に1年間通うことにしました。通常の調理師学校でしたら、2年間で和洋中と様々な料理を勉強して、最終的に調理師免許を取るという感じですが、私が入った学校は1年間のみで、最初の段階で和洋中のどれを学ぶか決めなければいけなかったのです。大学も民俗学で有名なところに通っていまして、そういった日本の昔ながらの文化というのが好きだったのです。そこで私は和食を集中的に学ぶことにしました。
【本紙】 卒業して、どこに就職されたのですか?
老舗旅館で修行
【山内】 箱根の老舗旅館です。調理場に入ったのですが、大卒の女性はそういった男社会の中では嫌われやすいところがあったかもしれませんが、料理長はやる気を評価してくれて、「煮方」と言って10年目位から任される仕事を5年目の時に「煮方をやってみろ」と任せてくれました。私も貪欲でやれる仕事はなんでもやってやろうという感じでしたのでそういったところを見てもらえたのかもしれません。非常に厳しく、忙しいところで、疲労でご飯を食べられないくらいに消耗してしまいました。そんな中、7年間勤めた時に結婚の機会が巡ってきて、それをいい機会と捉えて調理の仕事から離れることにしたのです。主人が浦和に仕事を持っていましたので、南浦和に引っ越してそこで3年程生活していました。私は家でじっとしていられる性分ではなかったので、八百屋兼総菜屋さんという感じのお店でパートを始めました。いい人たちばかりで、総菜作りも学べましたし調理の延長で工夫があって、とても楽しく仕事をすることが出来ました。でも、私としては自分でお店をやるというつもりはなかったのです。
【本紙】 開業のきっかけは?また、お店のコンセプトとかはあるのですか?
主人の言葉
【山内】 主人と「そろそろ家を建てたいよね」という話をしていたのですが、主人から「それならお店も一緒に作ったらどう?」と言ってくれたのです。主人の言葉があり、お店作りに現実味が出てきて、お店の名前を必死に考え、このとき「ことこと」が出てきました。日本料理で煮炊き物はとても重要な部分です。その時の音、炊きものをしている時のおいしい音「ことこと・・・ことこと・・・」からつけました。久喜と幸手を考えていたのですが、現地を見て権現堂の景観も気に入ってここに決めたのです。私ひとりでお店をやるつもりでしたから、食材を市場に調達に行くような時間もないので、食材はスーパーで買える範囲内で、『他の人には出来ない、美味しいものを作ろう』というものでした。最近は車を購入しましたので、五霞の道の駅やまくらがの里、さくらファーム等で旬の野菜を買うことも出来るようになりました。ランチのみの営業で、メニューは週替わりの1種類のみで1500円になります。火曜・水曜・金曜と第4土曜日が営業日で、営業時間は11時~3時までです。(2時ラストオーダー)また、コロナが始まってから、テイクアウトに力を入れて、お弁当や総菜をさくらファームさんに納品するようになりました。そこから峠の茶屋さんにも声を掛けていただき、権現堂公園で催事等ある際は峠の茶屋さんにも納品するようになりました。
【本紙】 お一人ではお忙しいですね。息抜きなど、ご趣味はありますか?
自分と水の音
【山内】 今はあまりやらなくなってしまいましたが、以前は本を読んだりしていました。あと、水泳が好きなので、家族で古河にあるプールに時々行ったりしています。体力をつけるために、なるべく行くようにしています。一応、部活でも水泳はやっていましたし、久喜にあるスイミングスクールに7年間くらいお世話になっていました。今は娘がそこに通っています。中学時代は陸上をやっていたのですが、私としては陸よりも水の中の方が性に合っていたみたいです。水中は完全に周囲から切り離されて、自分と水の音だけになれるので好きです。
【本紙】 これからやってみたいことなどはありますか?
【山内】 新しく何かを始めるということよりも、常にお客様に喜んでもらえるような美味しいものを作り続けたいと思います。今年46歳になるのですが、やっぱり昔に比べると疲れやすくなっていると実感しています。30代のときもヘトヘトで、こういう働き方は良くないなと思っていたのですが、今もまた同じことを繰り返しているというのは良くないと考えています。この仕事を続けていこうと思うなら、どこかでやり方を変えないといけないかもしれません。ただ、それをどうやっていけばいいのかまだ分かりませんので、そこが今後の課題のひとつかもしれません。美味しいものを追求していくときりがないのです。
【本紙】 奥深いですね。では、お友達をご紹介ください。
【山内】 幸手小学校校長の森祥一先生をご紹介します。
【本紙】 美味しいお料理をこれからもご提供ください。(山内さんは和的なものがお好きだそうで、日本画もやられていたようです。今はお忙しいようですが、余裕が出てきたら改めて絵をやってみたいとお話し下さいました。店内に趣味の日本画が飾られる日が楽しみです。)
ことこと幸手市内国府間133-8
営業日:火・水・金・第4土曜
営業時間:11時~15時
駐車場:3台