友達の輪656号(2022年11月20日発行)
(株)幸手スプリング代表取締役 菅井 里輝さんへ
【本紙】 長い歴史があるそうですね。
【菅井】(敬称略) そうですね。正確に言うと曾祖父が創業しました。曾祖父や祖父は樺太生まれでしたが、戦後に樺太から追い出され、日本に戻ってきたそうです。曾祖父は大手ゼネコンに勤めていまして、戦後の高度成長期も重なり、かなり羽振りは良かったそうです。そして、バラバラになった家族を集めようと考えて、「今の時代においてどんな仕事が一番いいか」と銀行員に尋ねたところ「ばね屋」と聞いたそうです。鉄鋼や金属加工などの経験もないのに、何を血迷ったのか「ばね屋」を始めたそうです。実を言うと、曾祖父の時代に一度会社を潰しています。「ばね屋」として仕事を始めて、調子も良かったのですが、バブル崩壊で建設関係の方が曾祖父が駆け込み寺のように「助けてほしい」と来たそうです。人情に厚い人だったので、助ける為に空小切手を切ったりして、お金が回らなくなってしまい倒産に追い込まれました。その後、祖父と父で再建して新しく幸手スプリングとして、千塚で会社を興したのです。今の古河に本社を移したのが28年くらい前になります。
【本紙】 ばねと言っても色々ありますね。
極小ばねから様々
【菅井】 自動車、建設機械、自動織機、医療関係と様々なものを扱っております。特殊なものでは極小ばねもやっています。お取引先から具体的な仕様で、サイズなどの指定があり依頼されますのでそれに沿って作ります。技術者が設計して基本的に機械が作るのですが、機器を扱うにも技術が必要で、簡単に出来るようなものでもありません。ばねが小さくなればなるほど、要する技術は上がってきます。一番小さいと髪の毛よりも細いコイルのばねを作ることもあります。医療ですとカテーテル・内視鏡等、体内に入るようなものもあります。想像しやすいイメージで言うと、内視鏡の黒いチューブ部分です。それを体内に入れていくわけですが、内臓が入り組んでいると当然チューブも曲がっていきます。普通のゴムのチューブだと、曲がった状態になると潰れてしまって薬剤が通らなくなったり、鉗子が入らなかったりしてしまうのです。チューブが曲がって潰れないように、ばねを巻いてチューブが折れずに曲がるようにするのです。
【本紙】 精度が求められますね。本社は古河ですが、五霞町の会社は?
就労支援
【菅井】 幸手スプリングの子会社のSSPという会社です。ここでは、除菌剤、化学薬品などを作る傍ら、障がい者の就労支援所も併設しています。就労支援は10月1日からスタートしたばかりです。幸手スプリングでは30年以上前から障がい者雇用を続けていました。私共に勤務する障がい者の従業員や、就労支援に来る障がい者の方々の親も高齢化が進み、その親が亡くなってしまうと施設に入らざるを得なくなってしまうのです。その状況を自分たちでなんとか改善出来ないかと考えました。また、グループホームも作れるということを知って、今年の7月1日に古河市でグループホームを開始しました。グループホームに入っている方々は、日中は就労支援所に出かけていくのです。我々は福祉に関しては新規参入ですが、仕事を作り出すことはやってきましたので、自分たちで就労支援所を運営した方がグループホームの利用者さんたちも仕事に出やすいのではと考えたのです。また、私たちはお客様を持って仕事をしていますので、その中で多くの大手さんが障がい者雇用を守るのに苦労されているという話を耳にしました。それならば、そのパイプ役を私達がやろうと考えたのです。
【本紙】 スタートしたばかりですね。成果のほうがいかがですか?
障がい者の個性
【菅井】 社員の皆さんのお陰で、行政や福祉事業者の方々への認知度が上がり順調に動き出しております。当社は製造業ですから、製造の技術を身につけてもらい、製造に関わる企業に就職することができればと思っております。お取り引きのお客様とは非常に近い関係で仕事をしていますので、こんな人材に困っていて、こういう人が欲しいという話を聞くこともあります。そこで、我々から「こんな方がいますよ」と紹介することも出来るのです。そんな風に気軽なやり取りが出来る関係だからこそ、人が行き来しやすいきっかけづくりになればと思います。現在ここに仕事に来る方は5人います。年齢も幅広く21歳から50歳後半までです。その方々に色々な技術を学んで、一般就職に向けての自立支援をしていく形になります。ただ、人によって障がいの度合いも違いますので、障がい者さんの個性を活かせるような職種を探していきたいと思います。例えば、自閉症の方であれば淡々と細かい作業が出来ますので、そういった仕事が適職と思います。対人関係が難しい方であれば、機械のオペレーションなど、あまり人と積極的に関わらなくてもいい仕事もあります。場合によっては、障がいの形によって仕事を新たに作ることも必要になってくると思います。
【本紙】 福祉事業を始められて、イメージと違ったところはありましたか?
福祉事業は「人思い」
【菅井】 福祉事業は人手不足や職場に定着しないというイメージがありました。でも、全く来ないということはないと思っていましたが、実際には本当に人材が来なかったですね。福祉という仕事は大変というイメージがあるのかも知れません。それと福祉事業は「人思い」でないと出来ません。人と人がコミュニケーションを取りながら成していく仕事です。だからこそ人が非常に大切で、施設の人が良ければ当然評判は良くなりますし、人が悪ければ評判も悪くなります。だからこそ、その人たちの教育や管理はずっと続いていく課題だと感じます。また、人と人同士なのでどうしても「合う、合わない」もあります。こればかりは、人の入れ替えをしたりして対応するしかないですね。当社のグループホームでは住みやすい環境、働きやすい環境というものを作るように心がけています。自分たちがどういう会社で、どういうバックボーンがあって、どんなことを目指しているのか、ということをyoutube等で発信したり、パワーポイントでまとめて会社見学に来た人に説明したりしています。最初の第一印象はとても大切ですので、この会社に入って楽しいと思ってもらえるようにしています。楽しいというところから入って、お互いに良好な人間関係が構築できればと考えています。
【本紙】 楽しみですね。では、お友達をご紹介ください。
【菅井】 トラック運送業をやっている稲垣和也さんを紹介します。
【本紙】 ありがとうございました。製造業からスタートした就労支援、そして、グループホームと地域に必要とされる企業としてご活躍下さい。(菅井さんはとてもポジティブな方で、仕事中心の生活だそうですが、たまに趣味のゴルフを楽しんでいるそうです。スコアーも100位の楽しいゴルフだそうです。)
(株)幸手スプリング古河市高野740
TEL 0280-92-2665
SSP(株)
五霞町元栗橋7425
TEL 0280-33-6364