1996年3月3日



桃の節句の今日、いかがお過ごしですか。幸手走友会中村行生さんから御紹介いただきました幸手劇場松田純一さんに、友達の輪にご登場いただきます。

幸手劇場 社長 埼玉県映画協会 理事長
松田 純一さん
  本紙取材 高木康夫

【高木】こんにちは。中村さんから先輩の松田さんを御紹介ということで、本日お邪魔しました。

【松田(敬称略)】中村さんとは幸手春高会や春高PTA・同窓会でご一緒という関係で御紹介いただいたのでしょう。個人的にも大変お世話になっています。

【高木】タウンプレスよみうりでは、本年1月元旦号からこのコーナーを始めたのですが、松田さんで5人目なんです。松田さんは幸手で映画館を始められてどのくらいたつのですか。

【松田】幸手劇場は昭和22年に「街に劇場を」と約2百人の出費で建てられました。興行の素人集団の経営だったため、わずか五年で倒産。その後私の父が経営を引き継ぎました。

映画業界も
 多様化の波

【高木】そうでしたか。昔はいろいろなところに映画館もあったんでしょうが、今は数も減ってきましたね。

【松田】邦画の全盛期が昭和33年でしたが、当時は埼玉県でも150館くらいありました。その後、1時は30館くらいまでに減り、現在は県内に48館営業しています。しかし、映画館もショッピングモール等に複合化された施設が現れ地域での単独映画館の経営にはさらに激しい時代がやってきたような思いですよ。(苦笑い)私たちの商売は代金を頂いて何も渡さない上に、時間まで取らせてしまう商売ですから、常に「ああ、良かった」と喜んでいただける事が大切なんです。ですから、映画の配給会社に縛られない当館等では、作品の選択にはかなり神経を使います。

【高木】ライフスタイルも個性の多様化で変化しているので上映作品を選ぶ目は重要なんですね。

【松田】新作の試写会は、配給会社で毎日の様にやっているのですが、最近は自分の感性だけで作品を選ぶと、失敗することもありますので息子や社員の声にも耳を傾けていますよ。(笑い)

作品を見る目に
 生き甲斐

【高木】なるほど、逆に考えると、邦画、洋画とも自由に作品を選択出来る代わりに、決めどころに経営の醍醐味があるのですね。

【松田】以前の事ですが、木下恵介の「新・喜びも悲しみも機年月」という作品の試写会に夫婦で涙して感動したんです。そこで、上映予定を変更してまで、これをやったんです。ところが、出演者を変えただけで、前作品の焼き直しのようなタイトルが悪かったんでしょうか、お客さんが入らないんですね。こんないい作品になぜ来ないんだろうと悔しい思いをしました。また「E・T」の時には配給会社が、フィルム代が高額だから幸手で採算が合わないだろうと言うんです。子供たちが楽しみにしている「ET」も上映できないんでは情けないと思い、交渉を続け上映にこぎつけました。苦労の甲斐あって予想を上回る大盛況でした。やりがいのある仕事と思っています。

【高木】苦労も多いんですね。気分転換などはどうしているのですか。

映画って本当
 にいいもんだ

【松田】いまでも仕事に苦しくなったら、都心に行って自分の観たい映画をお金を払って観るんです。知ってますか?ほとんどの映画館では60歳以上の人はシニア料金といって千円で入場できるんです。私もシニア料金ですが、映画評論家の水野春郎さんではありませんが、2つとないデザインや色使いには、美しさと楽しさがありますよ。旅行以外は、だいたい1人で行くのですが、誰にも気兼ねなく1人で見歩きすることは自分の時間を大切にでき、リフレッシュします。

感性あふれる
 若人への期待

【高木】いいことですね。仕事にも役にたつでしょうね。ところで、松田さんは幸手の将来についてどうお考えですか。

【松田】先日、岩槻に再開発の視察で行ってきたんですが、行く前までは幸手と岩槻とは似たような所と思っていたんです。どちらかというと大きな変化を好まない保守的な土壌というのでしょうか。ところが岩槻の東口の再開発には驚きました。動き出している何かを感じました。幸手も東口、西口開発や圏央道路など大きなプロジェクトをもっているので期待をしているんです。私たちの時代では、成し得ないものも、次の世代にかなえる為には、今動き出さなければと思います。幸手のいいところですが、古くからの人たちと新しい人たちの融和が自然だという所です。居心地がいいということかも知れませんが、のんびり暮らせるだけでなく、活力ある街を創って欲しいものです。これからの人たちに期待をしています。私たち商人にとっては人口も増えて欲しいのですが(笑い)

【高木】子供たちの為により良い環境を残したいですね。

【松田】そうですね。感性あふれる子供たちを教育する上には映画のはたす役割は大きなものかも知れません。よい映画を見て涙する子供たちにはいじめや非行は無縁なものでしょう。

【高木】これから、地域への映画を通じた文化の発信にご尽力ください。それでは、お友達をご紹介いただきたいのですが。

【松田】私どもの地域は助町商店街ですが、その中で若手の中心として活躍し、ご協力くださっております朝萬旅館の若大将、新井和博さんをご紹介します。

【高木】ありがとうございました。これからも、良い映画を楽しみにさせていただきます。

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