2000年1月23日



 暦の上では大寒も過ぎ、熱海では梅祭りも開催され、気持ちの上ではあたたかい春へと向かう今日この頃です。新春二回目の友達の輪ですが、緑台でティ−ル−ム・ホ−ムメイドエンドウを開かれている遠藤多希さんにご紹介いただいた幸手市東にお住まいの寺田明さんに登場いただきます。

やまなみ会・好文会
寺田 明さん
本紙取材 高木 康夫

【高木】遠藤さんから、「私どものお客様で文学の分野においてすばらしい方」とご紹介いただきました、本日はよろしくお願い致します。

【寺田(敬称略)】遠藤さんご夫婦とも芸術家でインテリジェンスの高い方で好感を持っております。お店には毎週おいしいコ−ヒ−を楽しみにお邪魔させていただいており、若い頃から外国文学が好きでしたので、折りに触れそんな話をしておりました。

【高木】読書会を開かれているとか?

幸手は読書が
  盛んな地

【寺田】ご存知のことかと思いますが、幸手というところは読書が盛んなところです。以前は読書連絡協議会があったほどです。僕は現在七十五才ですが前職であった小野田セメントを定年退職し、幸手に越してきた頃から入っている読書会に、やまなみ会というものがありますが、歴史は古く二十年以上の読書会です。今でも二ヶ月に1回の割で中央公民館で開いております。また、好文会という読書会も三年ほど前に始めまして、こちらは毎月ですが、共にテキスト選定をしております。そして、皆さんが読んでこられた感想を述べ合い、最終的に僕が解説をしております。

【高木】いつごろから本というものに興味を持たれたのですか?

父は読書道楽
  自宅に図書館?

【寺田】僕が旧制中学四年生の時でしたから、十六才か十七才の頃ですね、最初は新潮社の外国文学全集を読み始めたのです。父親が読書道楽だったものですからだったものですから我が家には図書館のようにたくさんの本がありました。ですから、自然と読書が好きなこどもに育っていったのでしょう。ツ−ルゲネフの「父と子」やスタンダ−ルの「赤と黒」といった有名な書物は片っ端から読んでいきました。特に哲学には興味を持ちました。

【高木】本の魅力ってなんですか?それと、哲学ってひとことで言うとなんでしょうか?

【寺田】本を読んでいると気が若くなれますね。たとえば、ゲ−テの一生などは僕に大きな影響を与えていますね。今でも、若い女の人と恋をしたいと思っていますよ。彼は八十才で恋をして相手と結婚しているのですよ。あやかりたいものです。(笑い)一浪時代には西洋哲学書が好きで読み漁り、京都大学の法科に進んだのですが、カントやサルトルなども読み終えていましたから、「哲学のことなら寺田に聞け」と友人から言われました。また、外国文学を読んでいると原書が読みたくなり、必然的に外国語が得意になってまいります。それから、哲学を一言でですか?そうですね、人によっては抽象的言語を弄んでいるだけとおっしゃる方もおりますが「生活する基準」を求めているものです。面白いものですよ。

【高木】生活する基準ですか。何となくわかったような気がします。ところで、翻訳本も作られたとか?

ベッド生活から
  フランス語やって
   やれないことはない

【寺田】若い頃結核を患いまして、五年間休職したのです。長期の入院となり、会社では同僚達たちが仕事に励んでいるし、このベッド生活は僕自身が生まれついてのものと考え、それでは、この機会に何か人のやらないことをやってやろうという気持ちに変わったのです。そこで、外国文学が好きでしたからフランス文学を原書で読もうと思い、ベッドの上でフランス語の勉強をしました。おかげで英語、ドイツ語に続いてフランス語をマスタ−することが出来ました。今でも英語にドイツ語、フランス語の三ヶ国語は不自由しませんね。やる気があればなんでも出来ると感じたものです。そして、哲学が好きでしたからフランスの哲学者であるベルグソンが書いた「物質と記憶」という絶版となっている本を、自分の為に原書から翻訳もしました。また、精神分析学者のユングの英訳本を本屋で見つけて、日本語に翻訳したこともあります。初期のワ−プロを使ってずいぶん多くの書物を翻訳しました。面白いことに脚注はラテン語やギリシャ語で書かれているケ−スが多く、さすがに、丸善で辞書を買ってきて脚注も訳したものです。今は我が家に眠っておりますが、翻訳本として出版もできますね。

【高木】すごいですね。他のご趣味は?

十五年間のブランク
  でもピアノは弾ける

【寺田】都内にあるモ−ツァルト愛好会に入っておりまして、毎月1回例会としてモ−ツァルトを演奏するプロのコンサ−トを聞きに行ってます。僕自身、ピアノは昔バイエル、ブルグミュ−ラ−、ツェルニ−、ソナチくらいまで弾きこなしておりました。楽譜は正確に読めるのですが我流でピアノを楽しんでいたのです。昨年でしたが、次女が結婚するときに持たせたピアノが、次女の娘が買いかえることになり、そのピアノが我が家に帰ってきたのです。十五年間まったく弾かなかったピアノですから指は動かないだろうと思っていたのですが、なんと指が動くのです。僕はクラシック音楽が好きでピアノに触れなかった十五年間もずっと音楽CDを聞いておりました。その効果もあったのかなぁと思っております。それと、やる気があればなんでも出来るものとあらためて感じましたし、八十才代まで練習して、ミニコンサ−トが出来ればと夢を膨らませています。

【高木】やる気と努力ですね。年明け早々のお話に学ぶことが多くて感謝しております。それでは、お友達をご紹介下さい。

【寺田】教育委員の石塚順子さんを紹介致します。

【高木】ありがとうございました。

【哲学というと何かとっつきにくい感じがして、私には苦手な分野かなと思いましたが、お話を伺っているとその奥の深さに曳かれる部分を覗かせていただいたような気が致しました。八十代まで人間は伸びるとおっしゃる寺田さんですが、自らがその証をされているように思いました。幼いときからずっと優等生だったとお話されるように聡明な紳士でいらっしゃいました。】

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