北の札幌では雪祭りが明日から始まり、いよいよ今年の冬も最終章へと入ってまいりました。春が待ち遠しいですが二〇〇〇年の春の訪れはやはり桜のささやきなのでしょうか。本日の友達の輪には好文会会長の寺田明さんからご紹介いただいた幸手市北にお住まいで教育委員を務められている石塚順子さんにお話を伺ってまいりました。石塚さんは幸手市内の小中学校十六校にしだれ桜を寄贈され、桜の花をとおして優しい心を持った子どもたちの成長を願っている方です。
幸手市教育委員
石塚 順子さん
本紙取材 高木 康夫
【高木】こんにちは。教育委員をされているそうですね。これからの子ども達へ期待することなどお話頂ければと思います。
【石塚(敬称略)】新春の初旅で記念に買い求めた福袋に入っていたタペストリーがあるのですが、「知識の本は世界への扉を開く」と英語で記された言葉に、今年の進むべき道への暗示を与えられた気が致しました。今年一月の教育委員会の定例会での提言は大江健三郎さんの日本人の「あいまいさ」について述べようと考えておりました。自分の意見をはっきり言えない日本人は外国では通用しないという事です。現在の日本は不況と言えどもまだまだ平和で豊かで子どもたちは物質的にはなに不自由なく生活しております。このまま、ぬくぬくとぬるま湯につかっていては将来の日本が危ぶまれます。この辺で発憤してがんばって欲しいのです。こんな私の願いを教育委員会で取り上げて頂きディスカッションしたいのです。
【高木】なるほど、どうしたら良いのでしょう。
【石塚】前号の寺田明さんご指導の世界文学は、私はまだまだ何も分かってはおりませんが、日本人はもっと広い世界を知るための勉強が必要と感じたのです。同一民族の国家である日本は言葉も同じ、人種も同じですから何でも「ア」「ン」の呼吸とか「沈黙は金」「言わぬが花」このような言葉に満ちみちて討論、議論を悪い事のように避けています。もし、異民族の人々と一緒だったとしたら国民性や価値観の違い、宗教やしきたり言葉の違いがあり、共通語の英語で話せたとしても自分の意思表示をしなかったらどうなるでしょう。はっきりと自分の意見を述べられ相手の意見をも尊重出来る人間にならなくては世界に通用しないと思います。私は世界で通用する子どもたちを育成したいと思っています。
【高木】世界観というスケールですね。さて、二〇〇〇年が幕開けましたが?
【石塚】二〇〇〇年の幕開けに夢や希望を語りたいと思います。日本は五十五年間も戦争のない平和な国である事に感謝しなければならないと思っております。私が九才の時、日本は敗戦致しました。暑い夏の日に天皇陛下の玉音放送を聞いた時の事は、はっきり覚えております。四人もいた姉たちが泣くので私も一緒に泣きました。男は殺され女はどこかへ連れて行かれると思ったからです。戦争中は子供心にも恐ろしく不安な日々でした。「なぜ戦争をするの?」「日本はいつも戦争をしているの?」そんな質問ばかりで親を困らせたりしたようです。昭和二十四年中学一年生の時、農地開放という国の改革により我が家は没落地主となりました。終戦後で食糧難の時代でしたから生活がそれ以上悪くなる事はありませんでしたし、父や兄も戦死もせずに生きておりましたのでこれといった苦労はなかったのですが高校以上の進学は無理と悟りました。
【石塚】当時中学校の受け持ち先生がホームルームの時間などに新聞や宮沢賢二の本を読み聞かせて下さいました。私が母校(栃木県黒羽中学校)で卒業生の体験発表の場を与えられた時「読書と人生」と題して恩師の本の読み聞かせや読書指導のお蔭で心豊かな充実した人生を送らせて頂いているお話を致しましたところ、いらしてくださった恩師が大変喜んで下さり「私は戦後の食料もない時代の子どもたちにせめて『心に栄養を与えてやりたかった』」とのお言葉に居合わせた同級生は感激してしまいました。私は出来れば教育委員の仕事として読書のすすめを希望しております。幸手の子どもたちの心に栄養を与えたい、心の教育が叫ばれている今日、微力ながら心を込めて読書の大切さを話したいと思っております。
【高木】期待させて頂きます。ところで、夢があるそうですが!
【石塚】私はかねがね公園の近くに住みたいという願望がありました。メイが六義園の近くのマンションに住んでいた事がありましたので、毎日よい景色が眺められていいなあ、四季折々の美しい花が咲き池には鯉が泳ぎ、年をとったら公園の近くに絶対住むぞ!!その願いが天に通じたのか二〇〇m程の場所に県立の権現堂公園が平成十五年に完成するのです。やったー、バンザイという感じです。出来上がったら毎日散歩に行くつもりです。夢や希望はいつもとなえていると叶うものらしいのです。なぜなら、流れ星を見た時願い事を三回言えば叶うというのはそれほどにいつも思っている事ならきっと叶うという事だと思います。私はこの紙面をおかりして願い事を公表してみます。権現堂公園の中に美術館を建てる事は叶いますか?おとぎの国のようなファンタジックな夢のあるものです。近くに土地を捜していますが資金に限度があるので土地を提供して下されば小さなものならすぐ建てられます。(死んだ時寄贈します)毎日公園に行くのでしたら美術館に夫の絵を飾り美術館長をします。いらしてくださった方に茶菓の接待をし楽しい一刻を過ごして頂きます。お友達がボランティアで手伝ってくださるでしょう。この思いつきは、昨年行った北フランスで見たモネの美術館です。水蓮の花を描くのが上手な夫ですからフランスのモネならぬ幸手のモネにしたい私です。
【高木】素敵ですね。実現するようにお祈りします。では、お友達をご紹介ください。
【石塚】あさひ銀行幸手支店長の堀内敏彦さんを紹介致します。
【高木】ありがとうございました。これからも、子ども達のためにご尽力ください。
【とても、純粋で何事にも前向きにお考えの方で、子ども達へかける情熱はとても深いものを感じました。ご主人が医業の傍らたくさんの絵を描かれており取材したときもあわせて拝見させて頂きました。ご主人を幸手のモネにしたいとお話される石塚さんの瞳の輝きが印象的でした。】