春分の日を明日に控え、春への息吹が日に日に輝いていく今日この頃です。本日の友達の輪には幸手駅前で森田接骨院を開業されている森田一郎さんよりご紹介いただいた苅谷哲郎さんに登場頂きます。苅谷さんは幸手市内で「ポコ・ア・ポコミュージッククラブ」を主宰され、指揮者・声楽家としても幸手混声合唱団やアンダンテ・カンタービレ(女声合唱団)の指導者としてもご活躍されております。
ポコ・ア・ポコミュージッククラブ主宰
指揮者・声楽家 苅谷哲郎さん
本紙取材 高木 康夫
【高木】こんにちは。森田さんから神戸と幸手を往復されながら、幸手の音楽文化に貢献されている方と伺ってまいりました。この紙面が発行される三月十九日には幸手市北公民館でアンダンテ・カンタービレ(女声合唱団)によるコーロ・コンチェルタートが開催されるそうですね。
【苅谷(敬称略)】こんにちは。森田さんは私が指導しております幸手混声合唱団に参加されていたこともあり親しくさせていただいております。彼曰く「なんでもやってきたが、音楽だけは会得していないので教えて下さい」と教室に来られました。ピアノも練習されておりますが、成果は別としてなんでも前向きにチャレンジされる素晴らしい方ですね。
【高木】神戸と幸手を往復されているとのことですが?
【刈谷】私は神戸で生まれ育ち、大阪音楽大学で声楽を学び、その後、上京して(財)日本オペラ振興会、一般的には藤原歌劇団として有名ですが、そこでオペラの研究生として学んでおりました。その当時ですから、十三年ほど前のことですが、研究生として在学中に幸手市緑台の松村ご夫妻や倉繁ふとん店の若社長と合唱を通じて知り合いになり、幸手で混声合唱団を創りたいので週に一回でいいから講座を開講して欲しいと依頼されたのです。初めは幸手という地名も知らず、取手と勘違いしたりもしましたが(笑い)一九八七年の夏に北公民館で講座を開講し、二〜三年間週一回ですが都内から幸手に通っておりました。現在は結婚し神戸に住んでおりますが、指導のため毎週幸手に通っております。
【高木】アンダンテ・カンタービレってなんですか?
【刈谷】『ゆったりと歌い上げる』という意味の女声合唱団のことでコーロ・コンチェルタートはイタリア語で小編成のコーラスグループを指します。幸手混声合唱団創立後、アンダンテ・カンタービレを指導して今年で十年目になります。女声合唱団は二十名ほどで、混声合唱団は四十数名になっております。まったく未経験の方々もボイストレーニングからはじめて楽しく参加されています。この紙面が発行される十九日には北公民館でコーロ・コンチェルタートが開催されます。入場無料ですからぜひ、多くの方々にご来場頂き春のひとときをクラシックの名曲を聴いてお過ごし頂きたいと思っております。
【高木】ポコ・ア・ポコの意味はなんですか?
【刈谷】楽譜などには記入されておりますが音楽用語でイタリア語の「少しづつ」という意味です。現在お子さんから主婦、会社勤めの方まで昼夜と生徒さんに合せた時間に指導しております。指導方法は理屈を出来るだけ教えないことをモットーとして、人間の持っている感性や想像力を音楽に取り込むために右脳型の指導をしております。人間の脳についてはよく言われますが、左脳は楽譜を読んだりする機能を担当しており右脳はそのイメージを作り上げる機能を持っております。ですから、楽譜は早く暗譜して表現力を導くようにしています。歌というものはたいていが、愛や恋をテーマにしたもの、美しい情景描写、ふるさとを思う気持ちなどに集約されます。恋でも初恋もあれば失恋もあります。「あなたを愛しています」という表現をするなら愛しているあなたに向かってやさしく伸ばした指先からも感情は伝わります。つまり、表現力を鍛えるには理屈ではないのです。外国の人たちはボディランゲージが上手いのですが、日本人は苦手な方が多いようです。音楽の勉強の中にもイメージトレーニングや芝居のような演技演習が必要と感じており、指導においても実践しております。
【高木】夢は?
【刈谷】90年〜92年にかけて幸手市において市民オペラを三回ほど開催したのですが、ぜひとも復活させたいと思っております。オペラというものは歌を歌うだけでなく演技や演出も重要です。もちろん、舞台の大道具や小道具もなくてはならないものですし、オーケストラが演奏しなければ本当のオペラは演じられません。ですから、過去に開催した三回の市民オペラも教育委員会などに後援いただき開催してきました。なによりも予算がかかりますので合唱団の指導よりもマネジメントのほうに時間がかかってしまいます。でも、市民の多くが参加して地域全体で市民オペラが実現したら素晴らしいことだと思います。藤沢市などのように有名になった市民オペラも数多く存在しますし、なによりも、地域文化がオペラを通じて豊かになっていくことと思います。幸手という名前に負けないまちづくりに期待したいですね。
【高木】趣味は?
【刈谷】イタリア料理が好きで、特にパスタ料理に関しては自分でオリジナルレシピを持っております。季節ごとのパスタソースも工夫次第で広がりますし、今の季節でしたらクリームソース仕立ての菜の花とブロッコリーのパスタがお勧めです。私の住まいは神戸でも明石に近いものですから、明石焼きも得意ですよ。関東で明石焼きを食べるとどうもたこ焼をやわらかくしたイメージですが、たこ焼も粉っぽくて関西のものとはちょっと違いますけど、明石焼きはどちらかというと卵焼きに近いものです。お好み焼きは卵と山芋でつないだ生地で焼くのですが粉は一切使いません。自慢ではありませんが評判の一品です。(笑い)
【高木】一度ご馳走になりたいですね。それでは、お友達をご紹介ください。
【刈谷】幸手混声合唱団員でソプラノのメンバーの一人、片岡さと子さんをご紹介いたします。彼女とは音楽談義から文化論、教育論などを本音で語り合える仲間です。意見のぶつかり合うこともしばしばですが、しっかりしたポリシーを持っておられます。
【高木】ありがとうございました。これからも幸手の音楽文化の発信地としてご活躍下さい。
【神戸と幸手を往復しながら、混声合唱団や女声合唱団を指導され、さらに市民オペラを完成させたいと語る苅谷さんです。学生時代に指導に来た幸手の地で、今でも指導にあたられている姿は、不思議な縁を感じますが、お話の中に「幸手にも一緒になれる音楽仲間がいるから」との一語にあたたかい人間性と感性を感じさせていただきました。】