2000年8月20日



 本日の友達の輪は久喜市社会福祉協議会でヘルパーとしてご活躍の加藤操さんからご紹介いただきました溝口珠代さんにお話を伺ってまいりました。溝口さんは久喜市栗原で音楽教室を主宰されている方です。

音楽教室主宰
講師 溝口珠代さん
本紙取材 高木 康夫

【高木】こんにちは。加藤さんから、コーラスの指導を頂いている先生と伺ってまいりました。音楽指導の道を選択されたのは?

【溝口(敬称略)】(敬称略)小さい頃からピアノ教室に通い、歌も好きだったこともあり東京音大付属高校から東京音大まで音楽ずくしの生活を送りました。大学在学中に栗橋の音楽教室でピアノやコーラス指導などのアルバイト講師をやっていたのですが、そこで音楽を教えることの楽しさを体感しました。自分としては音楽の道しか考えられなかったこともあり、アルバイトで実践した音楽講師という道を選択して、大学卒業後、当時住んでいた蓮田市で音楽教室を開いたのです。蓮田市では三十年間音楽教室を開いていましたが、七年前に久喜市に移り、現在の久喜教室と蓮田教室の二つを行き来しながら開講してます。

【高木】指導を通じて感じられることなどありますか?

この時間だけは
  音楽を楽しんで!

【溝口】中学生や高校生ですが、最近は環境がずいぶん変わってきているなと感じます。学校があって、部活があって、そして塾があり、受験がある、子供たちにとっては休む暇がないのでしょう。昨今のニュースなどを見ていますと、簡単にキレてしまったり、集中できず、すぐイラツいてしまう子供たちが増えています。教室にも忙しすぎてピアノの練習もできないままくる子供たちもいますが、そんな時、子供たちに話し掛けると必ず原因があるのです。良くあるケースは、「塾に行ってもちっとも成績があがらないわね」といった親からのプレッシャーです。子供たちにとって見れば、「悩みや問題は親に言ってもダメ」といった感じなのでしょうか、私たちが相談を受けることも多くなっています。塾の勉強と違って音楽の場ですから、かえって話しやすいのでしょう。聞いてあげると心の中につっかえていたものが取り除かれたようで、とっても良い表情になって音楽を楽しんでくれます。この場だけは自分の時間を取り戻して楽しんで欲しいと思います。

【高木】子供たちも大変な時代ですね。

やすらぎの場
  音楽の不思議な力

【溝口】部活でスポーツを一生懸命やっている子供たちもレッスンに来ています。野球やバスケ、テニスなど夜までヘトヘトになって、母親に車で送ってもらいながら通ってきますが、送られている間車中では熟睡しているようです。そして、ピアノのレッスンが終わって車に戻ったときには活き活きした子供になっているそうです。送迎に来ている母親から、「子供が『ピアノっていいね、お母さん』とルンルンで話すんですよ」という喜びの声は、音楽やピアノの持っている不思議な力にあらためて驚かされます。今の子供たちにとってはピアノに割く時間がなかなかとれず、技術的に上達はきびしいものもありますが、音楽を通じて感性豊かな時間を過ごして欲しいものです。

【高木】障害を持った方たちにも指導されているそうですが?

障害を持った方たちとの出会い
保護者の熱い想い

【溝口】久喜市に「育成会」という障害を持った子供たちの会があります。その保護者の方から子供たちに音楽を教えてもらえないだろうかという依頼がありました。障害を持った子供たちには音楽療法がよいということは読んだことがありましたので、熱心な保護者の声に動かされ昨年のクリスマス会で子供たちに対面したのです。実は障害を持った子供たちに接することは初めてで、言葉も話せない、ときどき声をあげたりする子供たちもいて、私の第一印象は、恥ずかしいことですが緊張した覚えがあります。でも、一時間ほど接しているうちにとってもあたたかくなったのです。楽器も初めての子供たちが瞳を輝かせて楽器を持っていくのです。そして、音楽に合わせてリズムを楽しんでくれるのです。私の手をひいて踊ったり、あきらかに表情が違うのです。知的障害なんて誰が決めたんだろうと思いました。みんな素直で可愛いんです。私は「あっ、これなんだ。これなら出来るかもしれない」と感じました。

【高木】それから指導が始まったのですね。

あったかさんから
  貰うもの

【溝口】暗中模索でスタートしました。楽器は何もなかったものですから自分なりに用意し、足らない太鼓などはポリバケツにガムテープを貼った手作り楽器です。声が出ない子供たちも手を挙げて楽器を持っていく姿を見て、最初は疑心暗鬼だったお父さんたちも変わっていく様子が分かりました。「今日、来てよかったなあ」と子供に話し掛けるお父さんの姿は活き活きしていました。『うちの子は何を考えているのかわからない時代』の中、障害を持った子供たちと保護者の方たちは生きていく道をはっきり持っているように感じました。保護者の方々も「こんなに可愛い子を授かった」という愛情を注ぎながら活き活きしています。みなさんからとてもあたたかい何かをもらっている気がしました。障害者でプロのロックバンドの本にも書いてありましたが、私はみなさんのことをそれ以来「あったかさん」と呼んでいます。まだ、八ヶ月の指導ですが思っていた以上の効果がありました。久喜市では十月一日に久喜市民音楽祭が文化会館大ホールで開催されますが、「育成会ひまわり音楽クラブ」も出演することが決まりました。保護者もみんなも大歓声です。ぜひ、多くの方に観に来て欲しいものです。

【高木】それではお友達をご紹介ください。


【溝口】ひまわり音楽クラブの保護者のお一人で、とても活き活きされている日野喜久子さんをご紹介致します。

【高木】ありがとうございました。市民音楽祭に向けてひまわり音楽クラブの皆さんが感動できますようご指導頑張って下さい。

【溝口さんは久喜市高齢者大学でも音楽を指導され、音楽クラブも担当しているそうで、幅広い年齢層と接っする機会があるそうです。音楽教室にひまわり音楽クラブなど地域に密着した活動で、丸一日の休みが取れない毎日だそうで、それぞれが自分に緊張と喜びを与え、燃えるなにかを残してくれるそうです。子供たちをもっともっと輝かせたいと瞳の奥に光るものを感じました。】

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