2001年2月11日



小林英武さん 節分も終わり今日は建国記念日です。暖かい地方では梅の花が咲き始め春がもうすぐやってくるようです。本日の友達の輪には粉奈電機工業代表である粉奈徹さんからご紹介いただきました東京スプリング工業(株)の代表取締役である小林英武さんにご登場願います。

東京スプリング工業(株)
代表取締役 小林英武さん
本紙取材 高木 康夫

【高木】はじめまして。会社の入口右側に門柱が建てられておりますが、ここは吉田小学校の跡地なんですね。

【小林(敬称略)】吉田小学校の跡地に十年程前ですが新工場を建設し移りました。新工場を建設する際吉田小の門柱が二本あったのです。これは思い出がいっぱい詰まっているものだから解体処分は出来ないと感じ、市に話して保存してもらおうと考えたのです。市では隣接地にすでに吉田小跡地として記念碑を建設しており、この門柱もそこに移設して保存されることになりました。当社にも吉田小を母校とする従業員もおりますが、時々、懐かしむように記念碑をご覧になられている方々を見受けることがあります。

【高木】会社名としてCOSIFLEXのロゴをよく見かけますが?

品川が発祥の地
 初めは車のシートから

【小林】当社は社名のとおりスプリングを製造している会社です。東京スプリングは品川で創業し五十三年の歴史がありますが、創業時はニッサンの車のシート作りからスタートしました。その後、応接セットのスプリングを作るようになり、記録によればマッカーサー元帥の執務用の椅子も作ったようです。昭和二十五年には朝鮮動乱が起こり、極東米軍から軍人用のベッドのスプリングの依頼を受けました。戦争特需とでも言うのでしょうか、ポケットコイルスプリングと呼ばれるベットでは最上級のスプリングを受注生産していました。その後、ベッドメーカーからも受注しベッドスプリングが中心になったのです。COSIFLEXはコージフレックスと呼びます。スイスの会社からお借りしているロゴで、ラテン語で「ここちよい」という意味です。

【高木】スイスの会社とはどんな関係が?

スイステクノロジーと
       独自の技術

【小林】スイスのスプール社からベッドスプリングを生産する機械を三十年間で二十五台程導入しています。スイスはご存知のとおり精密機械などを製造する会社が多く存在しますが、スプール社は世界のベッドメーカーの60%をシェアにする機械製造メーカーです。何度となく訪れましたが、二十年前に新しい機械の導入を検討している時は、粉奈さんにも同行してもらい彼の技術を見る目で確かめてもらいました。16mm撮影機を持ち込み機械を撮影し、日本で検討を重ね導入しました。新工場落成の際にはスプール社の役員も来られ、世界のベッドメーカーへ業界紙を通じて落成式の様子を伝えてくれました。また、粉奈さんに協力してもらい独自の製造システムに関する特許なども取得し、現在では、ベッドの中身であるスプリング製造だけから、生地まで含めたベッドマットレスの製造が中心です。小林英武さん

ヨーロッパの文化を
  日本式にアレンジして

【高木】ベッドに寝る人が多くなっているのでしょうか?

【小林】昨年暮れに調査された日本のベッド普及率ですが、人口比で33%、世帯数比で57%という数字が出ています。思ったよりベッドを利用している人が少ないように感じられますね。私たちのベッドは家具業界に入りますが、急成長と大型店等による業界再編や価格破壊等、全国を見ると大変厳しい業界です。しかし、幸いにもベッドに関しては普及率のように非常にゆるやかな成長でしたから、新規参入や競合が少なかったのです。おかげで独自の技術開発などに時間をかけることが出来ました。平均睡眠時間も1980年と2000年の比較では、二十四時間型への生活形態の変化で七時間から六時間数分と約五十分位短くなっています。元に戻るだろうといった今後の予測も出ていますが、いずれにしても深く熟睡することが重要で、そのこだわりは枕選びなどにも表われています。ヨーロッパに行くことが多いのですが、歴史ある文化を製品を通して見るようにしています。そして、良いものは日本様式にアレンジして紹介したいと考えています。人間、年をとると無関心になる傾向がありますが、何才になっても何事にも興味を示すことが大切であり製品開発の生命線ですね。

【高木】オリジナリティさが大切なんですね。

街の家具屋さんを
    応援したい!

【小林】相手先ブランドでベッドマットレスを製造しておりますが、それとは別に全国各地に存在する『街の家具屋さん』を対象に大型店に対抗できるような個性あふれる製品を提供したいと考えています。全国で「大型店なんかに負けないぞ!」という反骨精神でがんばっているお店を応援したいのです。三百社ほど相手に進めてますが、仕事の電話で最後に「何かおいしいものはありませんか?」と尋ねると「ありますよ。一度来ませんか。」と応えてくれます。人と人とのふれあいが伝わってきて、更に夢のあるものを作っていきたいと気が入ります。話は飛びますが、先月にフランクフルトで開かれた世界規模のテキスタイルの展示会に行ってきましたが、アジアの方々が多い中、日本人がとても少なく感じました。今まではどこへ行っても日本人が多かったのですが、日本の景気が芳しくないのでしょうね。とても日本が心配です。

【高木】
私も心配です。ところで、ご趣味などは?

【小林】趣味は何十年とやっているスキーです。国内のいろいろなところを滑ってきましたがマッターホルンや3000mクラスのヨーロッパの山々、アルプス、南半球のオーストラリアなど海外でも滑っています。仕事で海外に行くことが多くなり、スキーをするチャンスもありますので、丈夫なうちに地球上の滑れるところを滑りきってみたいと思っています。

【高木】それでは、お友達をご紹介下さい。

【小林】三陽不動産(株)の後藤弘さんをご紹介致します。後藤さんは私の自宅を作ってくれた方でもあり、とても情報量豊富な方です。

【高木】ありがとうございました。これからもオリジナリティあふれるベッドを創造して下さい。

(ベッドスプリングだけのときは全国シェア十数%を誇り、ベッドマットレスではコイルスプリングの封入など特許技術も多く取得され、月産一万台を目指しているそうです。夢は『街の家具屋さんの応援』だそうで、感性豊かな世界的視点からご活躍されるパワー全開の方でした。)

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