風薫る五月、今日は幸手市において市長選挙の投票日です。さて、本日の友達の輪は幸手市剣道連盟の佐藤博さんよりご紹介いただいた尾崎武さんです。尾崎さんは平成十年一月の第五十四号に登場された故尾崎憲司さんのご子息でもあり親子二代に渡っての登場です。
幸手市剣道連盟
剣道錬士六段 尾崎 武さん
本紙取材 高木 康夫
【高木】こんにちは。小学生のころから指導を受けられていたそうですね。
【尾崎(敬称略)】父は昨年他界しましたが、友達の輪に登場したことは父と家族にとって、良い思い出です。また、佐藤先生から私に声がかかり、ほんとうに驚いております。佐藤先生にはいろいろとご指導いただき人生の師匠と尊敬しております。私の剣道への出会いは小学校三年生のとき、剣道をやっていた祖父の薦めで幸手で第一回の剣道教室が開催されたときに参加したことです。その後、佐藤先生が会社の構内で稽古をはじめられ、そこに参加させていただきました。週二回の早朝稽古でしたので終わって帰るときに通勤する父とすれ違うのですが、今思えばその時に会話を交わすのがなんとなく楽しみでした。それ以来、途中さぼった時期もありましたが剣道を始めてからもう二十七年になります。
【高木】「友達の輪」は紹介いただく方が違うと、後に続く方々がすべて変わってしまうものです。仮にお父さんからご紹介いただいた方が違う方でしたら、武さんにバトンが繋がらなかったかも知れませんね。親子の不思議な縁を感じます。話を戻しますが、子どもの頃から始めた剣道を今まで続けられた理由は何ですか?
【尾崎】実は私は痩せるために剣道を始めたようなもので最初は練習に行くのが嫌でした。それに小学生の頃は殆ど試合で勝った記憶がありません。しかし、大きな声が良いとか、体当たりが良いとか、勝ち負け以外でほめられながら、なんとか続けていました。試合の後で勝ち負けをとやかく言う先生に教わっていたら、小学校五年生くらいでやめていたと思います。その後、六年生の時に町の個人試合で優勝することができ、初めて剣道が好きになりました。こども心に自信がつき、その勢いで今まで剣道を続けてきました。そして、三十三歳の時に六段を受験できるようになりましたが、十年計画のつもりでした。思いがけなく、三十四歳の十一月に二回目の審査で合格することができましたが、ひとえに少年剣道の時代から先生方にしっかりと基本を教えてもらったおかげだと思います。剣道の段級審査の実技は決まった時間の中で、稽古を審査員の先生方に見てもらう方式です。特に六段からは全国レベルでの有名な先生方に審査していただきます。そして竹刀が当たった当たらないの次元では無くなってきます。私の考えでは、構えと構えの勝負といった次元であり、相手の構えを崩した機会に正しい打突ができたかどうかを審査されるだのと思っています。
【高木】構えを崩すのですか?
【尾崎】剣道は構えと構えの戦いだと思っています。ちゃんとした構え、つまり、竹刀が喉に向いていると打てないのです。相手の構えを崩してはじめて打てるわけで、相手を打つためには一歩踏み込んで相手から打たれる距離に入らなければなりません。しかし、構えのまま立っていても進展はありませんので、相手の構えを崩すか自らが踏み込んでいかなければ戦いにはなりません。心にも構えがあります。心が相手を打とうと切り替わる瞬間があります。その瞬間こそがチャンスなのです。その機会を打たれると本当に「まいった」という気持ちになります。ですから、練習では同じ六段を目指していた方と、打った後に真に自分の心が動いたかどうかの確認をしながら稽古しました。私は映画が大好きなのですが、西部劇で早撃ちの決闘シーンがあります。相手に銃を先に抜かせて、それで相手より早く撃つ。これをイメージして剣道でやるのです。毎回毎回、自分から攻めることにより相手が打ち込む瞬間をつくり心を集中して打っていく練習をしました。緊張感があって苦しいけど楽しい練習でした。
【高木】七段も目指しているのですか?
【尾崎】挑戦したいですが、六段を取得して六年以上修行しないと審査を受けられないのです。まだ、六段受有後四年ですのでもう少し修行を積まなければなりません。ただ、資格が得られても七段はそう簡単には合格しません。剣の修行に加え人間的な成熟度も見られることになりますから、今度は十五年計画です。
【高木】ご夫婦でも剣道をされてるそうですね。
【尾崎】小学生の頃、幸手警察署の武道館で幸手剣友会の練習に参加していたころから女房も剣道をやっていました。佐藤先生の門下生として同じ教室にいて私と違って有力選手でした。話もしたことはなかったですね。小学生ですから意識もしておりませんでしたし。(笑い)女房は試合前などにちょこちょこっと練習をする程度ですが、現在でも夫婦で剣道をやっております。埼玉県の剣道大会には「夫婦の部」というのがあるのですが、私たちも五年連続で参加しております。この部は夫婦同士が対戦する埼玉県独自の試合です。二人だけの団体戦みたいですが、女房が対戦しているときは、はらはらしながら見ています。でも、勝ってしまうとこんどは夫の対戦ですから私のほうに女房には負けられないというプレッシャーがかかってしまいます。トーナメント制ですが、女房の勝率のほうが高いかも・・。(笑い)最近は小学四年生の息子も剣道を始めました。
【高木】それではお友達をご紹介下さい。