お盆休みの真っ只中で、それぞれ故郷で過ごされている方も多いことかと存じます。本日の友達の輪には桜まつり実行委員長の並木克巳さんよりご紹介いただいた、早坂流民謡師範で芳謡会を主宰されております早坂光謡(みつうた)さん(本名・野口みつえさん)に登場いただきます。早坂光謡さんは民謡での芸名でその他に三味線師範としての藤本芳謡さんのお名前も持っておられる方です。
早坂流民謡師範
芳謡会 会主 早坂 光謡さん
(本名 野口 みつえさん)
本紙取材 高木 康夫
【高木】土手の子と言われるほど権現堂を愛している並木克巳さんからご紹介いただきました。ご夫婦揃って親しくされているようですが。
【早坂(敬称略)】はじめまして。主人が並木さんと先輩後輩の間柄で、並木さんと主人は釣り仲間です。私も並木さんとは子供の頃からの知り合いです。
【高木】民謡をやられているそうですが、小さい頃からやられていたのですか?
【早坂(敬称略)】小さい頃は運動が好きで、学生時代も体育会系でソフトボールをずっとやっていました。ですから、民謡は聞いたことはありますが、唄ったことなどはありませんでしたね。ところが、結婚して主人の兄弟が全員民謡をやっており、弟においては津軽三味線もやっていたのです。みんなが集まると民謡や三味線の話題が多く、みんなから「一緒にやりませんか」と声をかけられて、私も二十八才の頃から民謡と三味線をはじめました。今までやっていたソフトボールのバットを三味線に持ち替えたようなものですね。(笑い)その後、女流民謡歌手では三本指に入る早坂先生にご指導いただき早坂光謡の名をいただきました。三味線でも藤本流に学び藤本芳謡の名をいただきました。
【高木】三味線も民謡にはつき物ですね。
【早坂】民謡には三味線、尺八、笛、太鼓、鉦、といった楽器があります。民謡も三味線だけや尺八だけといったように曲によって変わります。藤本流の三味線の特徴は重いバチを使い、コマも高くなっています。ふつう三味線によってバチの重さは違いますが、藤本流では四十匁以上のバチを使います。始めたばかりはバチが重く三本の糸に当たらないのです。正確にバチが当たるまで最低二ヶ月間位かかりますね。ですから、三味線を習いに来る方には、三味線を買っても続かないと無駄になってしまいますので、練習用の三味線を貸して二ヶ月間以上練習し、自信が出たら自分の三味線を用意していただいています。
【高木】民謡と言ってもいろいろありますが?
【早坂】民謡は「仕事うた」で農業、林業、漁業といった仕事をしながら元気を付けたり作業のリズムをとったりするために唄われたものです。ですから、地方色や方言などが豊富で日本全国に民謡があるように奥の深いものです。東北地方の民謡は「東北もの」、東京から九州までの西の地域は「西もの」、埼玉は「中部もの」と分類されます。秩父音頭のような民謡が存在します。また、尺八だけの伴奏で唄う「長もの」といった分類も存在しますから、普通の人ではわかりにくいでしょうね。
【高木】どんな民謡があるのですか?
【早坂】西ものでは「刈り干切り唄」や「黒田節」などが有名ですね。東北ものでは「津軽山唄」「長持歌」「宮城馬子唄」などあります。尺八の伴奏のみで唄う「長もの」は息が続かないと唄えない唄が多いですね。私は「長もの」が好きで唄うことが多いですね。
【高木】独特な練習なのですか?
【早坂】口をいっぱいに開けて、腹式呼吸で唄うことが基本です。でも、口の開け方ひとつとっても本格的に唄えるようになるまでには時間がかかります。民謡独特のふしまわしはなかなか会得できません。わたしも最初は出来ませんでした。なんでもそうですが、努力次第で上達していきます。カラオケでは新曲が出る度に覚えないといけませんが、民謡は一曲唄えれば宴会などで役立ちますよ。現在三十名ほどのお弟子さんが月に三回程度の稽古をしています。民謡を楽しむことが一番の上達ですね。
【高木】コンクールなどにも参加されるのですか?
【早坂】毎年、たくさんの大会に参加しております。民謡の全国大会もあります。この地域で大きな大会は越谷地区で行われます。一位になったこともありますが、全国には上手な方がたくさんいます。やはり山形、青森、秋田といった東北地方は民謡が盛んなところで、小さい頃から親に子守唄代わりに民謡を聞かされているのでしょうね。民謡に触れる機会が多くて上手な方がたくさんいます。それと、東北民謡のふしまわしには方言が入っていることが多いので、関東の人には自然に出てくる方言を唄いきることが難しいのです。でも、日本の伝統文化ですから文部省も一、二年後には小学校の授業に民謡を取り入れるようです。私もボランティアで子供たちに教えたいと思います。
【高木】夢などは?
【早坂】芳謡会には二十年以上の会員さんが何人もいます。若い人は五十才代でほとんど女性の方ばかりですが、今年も八十五才のお弟子さんが入られました。みんな元気に民謡を楽しんでいます。いつまでも民謡を唄っていられたら、というのが私の夢ですね。また、秋には国技館で民謡大会が行われますが、今年は早坂流の家元から孫弟子まで勢ぞろいして出場します。私は早坂流の直弟子ですので、私のお弟子さんが孫弟子になります。みんな楽しみに稽古に励んでいます。
【高木】それではお友達をご紹介下さい。
【早坂】芳謡会の会長をしていただいている藤倉さんのご主人をご紹介致します。藤倉さんは幸手都市ガスの社長さんで主人のゴルフの先生です。
【高木】ありがとうございました。
(ご主人は幸手民謡連合会会長をされており、早坂さんが主宰されている芳謡会をはじめ、幸手市で開催される市民まつりや文化祭、地域の盆踊りなどに民謡を通じてご活躍されております。カラオケをやっている人ならだれでも民謡も唄えるそうですので伝統文化に挑戦されたい方はどうぞとのことでした。ご主人が尺八で伴奏され、早坂さんが唄うこともあるそうです。ご子息はガルボというグループで活躍され、現在、音楽プロデューサーだそうで、まさに音楽一色の野口ファミリーでした。)