前号の友達の輪から一部二色刷りにさせていただきましたこのコーナーですが、いかがでしたでしょうか。さて、季節は梅の花から桜の花へと、すっかり春にバトンタッチされようとしています。今年は暖冬の影響で権現堂の桜も早めに華麗な姿を見せてくれるかも知れません。本日の友達の輪には潟oーモス専務取締役真中良子さんよりご紹介頂きました森田克美さんにお話を伺ってまいりました。森田さんは幸手市北の権現堂に向かう道すがらにあるお蕎麦の森田家オーナーです。
森田家
オーナー 森田 克美さん
本誌取材 高木 康夫
【高木】こんにちは。真中さんから時々食べに来られるおいしいお店と伺ってまいりました。
【森田克美(敬称略)】そうですね。会社が近い事もあるのでしょうね、よく来られますよ。真中さんは、いつでも、パワーあふれる方ですね。
【高木】森田さんは代々蕎麦屋さんなんですか?
【森田】いえいえ、私がやりたくてはじめたんです。最初は昭和五十五年に現在の場所よりも少し四号線寄りにお蕎麦屋を開業し、現在の場所に移りましたのは平成二年の十月頃でした。
【高木】どうしてお蕎麦屋さんを目指したのですか?
【森田】勉強は嫌いでしたが、小さい頃から包丁を握るのが好きで、日本料理か割烹料理屋に勤めたいと思っていました。ところが、そういうところは魚をさばいたりしなければなりませんよね。実は魚の目がだめなんです。(笑い)私たちの小さい頃は小川の水もきれいで、よく魚を捕ってきては遊んでいました。子どもって結構残酷なんですよね。捕った魚を遊びとはいえ、ずいぶんいじめた思い出があります。ですから、魚の目が苦手なんですね。それでも一応、調理の世界に入ろうと調理師学校には一年行ったのですが、好奇心旺盛な年頃でスキーや車などをはじめとにかく遊びに忙しく、まったく就職する気がおきなかったのです。それで、お蕎麦なら生きているもの相手じゃないから大丈夫だろうと、幸手駅前にある「更科」さんに修行で入らせていただき稲妻さんに蕎麦の打ち方からすべてを教えていただきました。
【高木】稲妻さんは幸手病院のお隣に「稲妻」というお店を構えられておりますね。
【森田】「更科」さんが本家になるのでしょう。稲妻さんも独立されて幸手病院の隣に立派なお店を構えられていますね。私にとっては稲妻さんが師匠で、とてもいい人にめぐり会ったと思っております。今があるのはすべて稲妻さんのおかげですね。でも、自分のお店で二十年を過ぎておりますが蕎麦についてしゃべれるようになったのはここ三、四年です。「生意気」なようですが、それ以前の二十年は蕎麦じゃないものを打っていたような気がします。私も蕎麦に自信を持って打っていたのですが、あるところで出会った蕎麦に感嘆してしまったのです。何か蕎麦の原点を感じたような思いでした。
【高木】そんなに凄いお蕎麦屋さんがあるのですか?
【森田】かなり有名になってきましたからご存知の方も多い事と思いますが、お蕎麦で町おこしをやっている地域があるのです。福島県山都町宮古地区というところですが、宮古(みやこ)の蕎麦として訪れる方も多くなっているようです。山奥なので作付面積も限られていますがお蕎麦を作っている農家がごろごろしています。もちろん蕎麦の種まき、収穫、販売もやっており、十割のお蕎麦を食べさせてくれるお店が多く連なっております。磐越本線のSLが走っている路線です。はじめていただいたときはカルチャーショックを受けました。確かにうどん粉入りのお蕎麦は食べやすいですが、蕎麦の味の良さや香りは十割には勝てないと思いました。もちろん、原料も吟味されたものを使って、また、ここの水がおいしいんです。それ以来自分の蕎麦の原点はここにあります。
【高木】森田さんのお店でも十割蕎麦を扱っているのですか?
【森田】そ当店では平日でも「十割そば」がありますが宮古のお蕎麦は蕎麦の好きな人にはかなりの衝撃を与えるものですね。水そばといって蕎麦を水につけていただく究極のメニューがあります。例外的なお蕎麦かも知れませんが、味、香り、こし、茹であがりの見た目、どれを取っても一級品ですね。それで、自分がこのお蕎麦を食べたいと思って、蕎麦粉と水は山都より厳選してきて、「こだわりの十割蕎麦」として打っています。毎日は打てませんので第二、第四木曜日に限ってですが、このお蕎麦を提供しております。本当においしいお蕎麦の食べ方は、香の物があってお蕎麦があって、つゆなしでもおいしいものです。昔は蕎麦を酒の肴にして飲んだようです。日本酒を飲んだ後に蕎麦を食べると甘いんですよ。喉ごしに残る甘味があります。この甘味が日本酒のおかげで引き立つんです。そして、あがりにもう一枚蕎麦を食べるのです。
【高木】これは一度食べに来なければなりませんね。(笑い)お水にもこだわっているのですね。
【森田】お水については私が胃を壊した事があり、ある方から水をアルカリ水と酸性水に分解して、そのアルカリ水が身体に良いからと薦められました。身体には良いらしいのですが、とにかくまずくて、飲んでいるうちに天然水に変わっていました。身体の調子も良くなってきて近所の方から栃木においしい水があるというお話を聞き、尚仁沢湧水に行くようになったのです。ですから、最初は身体のためだったのですがこんなにおいしい水なら料理にも使おうと言うことで、今では当店の料理には尚仁沢湧水(しょうにんさわゆうすい)のお水を使っております。ただ、十割蕎麦だけは宮古の水を使っております。
【高木】お忙しいのに大変ですね。
【森田】実は趣味で渓流釣りとスキーなんです。スキーにはなかなか行く暇が取れませんが、釣りに行く時には必ず仕入れや水を汲みにいく予定と重ねています。ですから、趣味と仕事がごちゃごちゃですね。蕎麦も趣味みたいなものですしね。(笑い)
【高木】それでは、お友達をご紹介下さい。
【森田】後輩ですが、昔からスキーで一緒の飯田ふとん店の飯尾寛之さんを紹介します。
【高木】本日はお忙しい中、ありがとうございました。こだわりのおいしいお蕎麦でこれからもお客様を喜ばせてください。益々のご繁盛をお祈りいたします。
(ご夫婦でお店を切り盛りされており、おいしい蕎麦のためならとことん極めるという気持ちが伝わってきました。こだわりの十割蕎麦、早く食べたくなりました。)