明日は体育の日。スポーツを楽しむにはもってこいの季節です。さて、本日の友達の輪には五霞町で東関東子育てサポートセンターを主宰されている木村利行さんからご紹介頂きました増田吉宏さんにお話を伺いました。増田さんは鷲宮町にお住まいですが五霞町ホタルの会の相談役を務めており、ホタルの研究をされている方です。
五霞町ホタルの会
相談役 増田 吉宏さん
本誌取材 高木 康夫
【高木】こんにちは。
【増田(敬称略)】五霞町ホタルの会は、ホタルを増やして五霞町でホタル鑑賞ができるようにしようという主旨で、ホタルに関心のある人たちで作ったようです。しかし、ホタルの生態に詳しい人がいなかったので埼玉県ホタル保全連絡協議会を通じて近隣市町村から捜していたようです。私は平成二年ごろからホタルに興味をもって、協議会の会員になっておりました関係でホタルの会に関わるようになりました。木村さんは五霞町の会長も務められているのです。
【高木】増田さんはいつごろからホタルに興味を持ったのですか?
【増田】今この近辺で野生のホタルを観ることは難しいですね。でも、平成二年頃はこの周辺いたる所に生息していました。私が最初にホタルに興味を持ったのは、ものごころがついた昭和十五、六年頃です。今でもホタルは美しく魅力的ですが、当時はホタルがいっぱいいました。夏の夜にはビンの中にホタルを入れて、それを蚊帳の中に入れて電球の代わりにしました。わずか二十匹ほどで電球のような明るさです。充分本が読めました。どこの家庭でも生活雑排水を溜め池に沈殿させ、そこからあふれてくる浄化された水を川に流していました。その溜め池から川に流す間の水路にホタルが生息していたのです。自然にホタルが湧いたと表現したものです。それくらい、夏になるとホタルが入ってきて、とても良い時代でした。暑い夜にホタルを見ると癒されましたしね。
【高木】いつ頃まで、この近隣にはホタルがいたのでしょう?
【増田】ホタルについてはその分布をずっと調査しておりますが、十年ほど前には鷲宮、久喜、幸手市内でも数多くの生息が確認されております。しかし、年々環境の変化で減ってきており、平成六年頃には鷲宮町の久本寺というところで百匹ほどの生息が確認されたのがピークでしょうか。相談役として関わっております五霞町では今年、わずか五、六匹しか見られませんでした。現状のままですと来年はとても厳しいですね。残念ながらもう、見られないかもしれません。
【高木】環境の変化が大きな原因なんですか?
【増田】この辺で見られるホタルはヘイケボタルで、幼虫の時は田んぼの用水や道路脇の用水などに生息しています。ホタルの幼虫は卵から孵化する時期により一、二年で成虫になります。幼虫は夜行性で日中は水面ぎりぎりの泥の中に潜っており、夜になると出てきて水の中や田んぼの中で餌を捜し始めるのです。餌はタニシやものあら貝、泥しじみなどを食べています。ホタルの幼虫は五月頃にかけて成虫になる前に泥の中に入ってサナギ状態になります。三週間かけて成虫になるのですが、最近四月から五月にかけて必ずと言っていいほど気温の高い日があるのです。日中30℃を超える夏日になることもあるのですが、このころがホタルにとっては一番大切な時期で、気温が高いとサナギは土の中で焼け死んでしまうのです。昔はたくさんの草などが水辺の泥などを日陰にして、土中温度が上がらなかったのですが、現在は水路が整備されたりして生態系にはやさしくない環境が多くなりました。とんぼや蝶も同じですから、年々減っていることがわかると思います。特に今年はとんぼや蝶も少ないですね。
【高木】異常な暑さでは済まされないですね。ホタルは増やせますか?
【増田】平成五年頃から急激に暑くなってきた感じがします。茨城県の千代田町に源氏ホタルが生息しているのですが、ホタル狩りに来た人たちの顔がホタルの明かりで明るく映っていたのですが、平成七年頃から半減してしまいました。毎年通っていたのですが、昨年から全く見られなくなってしまいました。ホタルは成虫になって二週間くらいの命ですがオスが先に成虫に孵化し、一週間後位にメスが成虫となります。その後メスの光り方が違うのですが、オスに合図を送って交尾を行ない、翌日には水草の根元に産卵をするのです。ところが、産卵の時に気温が高かったりするのでホタルの卵も死んでしまうことになるのです。林もなくなり木陰も少なくなりましたし、林が多かった社寺なども少なくなりました。戦後、食糧不足が起こったときに増産のため林をなくして田畑を増やしました。農地改革も自然破壊につながったと思います。今は減反が行なわれていますが、そのまま、放置するなら雑木林を増やして欲しいものです。現在の環境ではホタルを増やそうにも無理な環境ですね。
【高木】そうですか。残念ですね。
【増田】希望は捨てないで下さい。実はオオムラサキの研究もやっておりますが、孵化から成虫まで飼育している方が茨城県下妻町におります。毎年、小貝川の河川に放蝶していますが年々増えています。また、群馬県の大真間町でもホタルを増やそうと、五年前ですが成虫のオスメス二十匹を持っていきました。現在では増えて渡良瀬の合流地点まで発生しているそうです。環境さえ良ければ努力によって増えていくものです。ただ、心配なのは年々気温が高くなっていることですね。このままですと、この地域ではホタルが生息できる気象環境ではなくなってしまいますね。
【高木】亜熱帯化しつつありますね。それではお友達をご紹介下さい。
【増田】自然環境で活躍されている長瀬房次郎さんをご紹介いたします。
【高木】ありがとうございました。これからもホタルやオオムラサキの研究を通じて豊かな自然を取り戻せるようご示唆下さい。
(昔から新しいことを考えるのが大好きだったとおっしゃる増田さんですが、ホタルの研究を進めているうちに、ホタルの臭いとホタルミミズの臭いが同じであることに気付き、現在はホタルの先祖はホタルミミズという仮想を立てて研究されているそうです。どのような結果がでるのでしょうか?楽しみです。)