今年は昨年のように桜が早く咲くこともなく、入学式に合わせるように桜の花が満開となりました。全国では統一地方選がはじまり、新しい枠組みのまちづくりに期待が込められております。さて、本日の友達の輪には田川木工の田川英治さんよりご紹介いただきました(社)日本さつき協会の常務理事を務める中村正之さんにご登場いただきます。中村さんは五霞町でさつきの栽培をされている方です。
(社)日本さつき協会
常務理事 中村 正之さん
本紙取材
木康夫
【高木】こんにちは。田川さんからさつきの師匠と伺いました。こちらにはたくさんのさつきがありますね。今日はさつきのお話などよろしくお願いいたします。
【中村(敬称略)】こんにちは。友達の輪は欠かさず拝見しております。田川さんから次は私にと聞いて驚いております。こちらこそ、よろしくお願いいたします。
【高木】中村さんは脱サラでこのお仕事に就かれたと伺いましたが?
【中村】そうですね、現在のさつき栽培の仕事になる前でしたが、二十四才の時に脱サラで貸し植木のリース業を始めたのです。現在は貸し植木は手間もかからず管理が楽なものですが、当時は貸し植木のリース業などはほとんどありませんでした。「植木を貸し出すなんて商売が成り立つのか」と言われましたし、私の両親からは「そんな仕事で飯を食っていけるのか」と反対されました。それでも、若さとチャレンジ精神で営業に奔走しました。その甲斐あって、少しづつではありますがレストランや会社のロビー、ショウルームなど、お客様からも好評をいただいて徐々に増えてきてなんとかやっていけるようになりました。二年ほどリース業を行ない仕事が軌道に乗り始めた二十六才の時でしたが、茨城県の改良普及員に「さつきが面白いからやってみたら」と薦められたのです。
【高木】趣味でさつきを始められたのですね。
【中村】はじめは趣味のつもりでした。とにかく、さつきに関してはあまり知識がありませんでしたので、薦められるまままずは展覧会を見に行ったのです。そこで、さつきの花の美しさに人生を変えられてしまうほど魅せられてしまったのです。特に、「松波」「博多白」(さつきの種の名前)という花に魅せられました。とにかく花の絞り柄が見事なのですね。すっかり虜になってしまいました。それで、本格的にさつきの栽培に掛かり始めたのです。決めた以上二足のわらじは履けませんから、いままでやっていた貸し植木のリース業は義兄さんに譲ってしまいました。現在でも義兄さんがリース業を続けております。さつきの栽培などについても指導者がいなかった時代でしたから、見よう見真似の独学でした。それと、はじめたタイミングも良かったのですね、さつきに没頭してから二年後の昭和四十四年頃からさつきブームが始まったのです。この頃にはさつきの競りも始まり、趣味と実益を兼ねてたくさんの人たちがさつきの世界に入っていきました。おかげで、私の仕事も順調に進みました。
【高木】さつきについて教えていただきたいのですが、素人でお恥ずかしいのですが、「さつき」と「つつじ」はどこが違うのですか?
【中村】よく聞かれますが、四月下旬から五月上旬に花が咲くのがつつじです。さつきは五月下旬から六月上旬に花をつけます。花がない時期に見分けるには、両方の葉をみると表面にけばけばしたものが生えています。さつきはこれが茶色か白なのですが、つつじは全部赤っぽい色です。さつきの魅力ですが、さつきは種類で分類しますと千二百種類もあります。花の色系だけでも十二柄ありますし、毎年、新種が発見されます。枝変わりというのですが、たくさんの花の中に一つだけ違う花が出ることがあります。これを挿し木して増やしてその種の花が咲くものを作るのです。発見者として登録されますが、私も鴇恵比須(ときえびす)という種や蓮月(れんげつ)という種をはじめいくつかの発見者として登録しております。また、交配によって新種も作られます。さつきには花の魅力と木の魅力があります。花ものは年一回咲く花を仕立てるものです。大輪や特徴のある花など美しいですね。木ものは盆栽仕立てで樹齢百五十年なんてものもあります。価格も数千円から数百万円までありますから、とても奥が深いものです。
【高木】流派などあるのですか?
【中村】私は一代でさつき栽培を行なってきました。弟子がいるわけでもありませんが、盆栽仕立てには自分なりに特徴を持たせてあります。自分が仕立てたものは、曲付(枝振り)に特徴があるのですが八宝流と呼んでおります。盆栽の寿命は百年を超えますので、八宝流は後世に残せたらと思っています。また、お知らせになりますが、本年も六月一日から六月七日まで上野不忍池にて「さつきフェスティバル2003」が開催されます。こちらは全国から三百鉢展示され、花が見事に咲き誇っておりますのでお越し下さい。私も毎日会場にはおります。また、四年に一度のことですが、一大イベントとして本年十一月の最終土日に、さいたまスーパーアリーナでさつき盆栽の展示会を行ないます。全国から選りすぐられた百六十三点が一同に展示されます。ぜひ、ご覧いただきたいと思います。
【高木】講師としてもご活躍とか。
【中村】(社)日本さつき協会では全国で十八人の公認講師を認定しておりますが、その一人として全国にさつき栽培の勉強会や講習会の講師としてかけ回っております。さつきを通じてたくさんの人たちと触れ合うことができます。
【高木】ではお友だちをご紹介ください。
【中村】権現堂にある黒田工務店の黒田勝己さんをご紹介します。
【高木】ありがとうございました。これからも全国エリアのフィールドでご活躍下さい。
(中村さんは「和」という言葉を信条に歩んできたそうで、常に丸く人の気持ちを理解できるように心がけ、その中でリーダーシップを発揮されて来られたそうです。(社)日本さつき協会名誉会長は東京都知事の石原慎太郎氏とのことで、幅広い層との交流がある方でした。)