2003年8月24日



 八月も最後の週を迎え、梅雨明けが遅かったこともあり、夏もあっという間に終ってしまうような気分です。本日の友達の話には「ひとつぶおはなし会」の吉野敏子さんよりご紹介いただきました中西和子さんにご登場いただきます。中西さんは久喜市にて編物教室を主宰されている方です。

編物教室主宰
中西 和子さん
本紙取材
木康夫

【高木】はじめまして。吉野さんから「しりうす文庫」と南米つながりということでご紹介いただきました。編物も長いようですね。

編物指導に
   自由な発想を!

【中西(敬称略)】こんにちは。吉野さんとはフォルクローレグループの「パチャ・ママ」でもご一緒させていただいており、この企画にお声を掛けていただきびっくりしています。編物歴は三十年になります。勤めをしながら趣味として阿佐ヶ谷の編物教室に通ったのが始まりです。指導者を目指したわけではないのですが、編物教室からのお話で杉並区民センター主催の編物講座に講師依頼され、久喜から二年間通って指導していました。講座は三十人くらいの生涯学習のひとつでした。しかし、三十人全員に同じ物の制作指導をすることに疑問を感じてしまったのです。元来、自由な発想が大好きな私でしたから、例えばセーターを編むにも三十人が同じ形で同じ糸といったものではそれぞれの個性が活かせないのではと感じ始めたのです。しかし、生涯学習のなかでの講習では深く個性を追求するところまで指導するには無理があり、それならば、もっと、自由に教えられる場を作ろうと区民センターの指導任期が満了と同時に辞めて久喜市の中西和子さん自宅で編物教室をはじめたのです。

【高木】型にはまらないものを求めたのですね。

編物を通じて
   地域との交流

【中西】最初は地域の人たちと遊べたらいいなあという気持ちでした。参加者の声を集約していくと、時間的にもなるべく制約されないで「何を作りたいのか?どういうデザインで、どういう色で?さらには自分のペースで!」といったニーズが見え始めたのです。生徒さんも四十代から五十代のかたが多いですが「これを作りたい」とアドバイスを求めてくるので、要望を100%満たしてあげたいと言う気持ちです。ですから、作品が出来上がったときの喜びは充実しています。二年に一回、作品の展示会を開催しますが本年は開催年で十月二十七日から十一月二日まで久喜市内で開催します。今年のテーマは「夫たちへ愛を込めて」です。どんな作品が出来上がるか今から楽しみです。

【高木】手編みも一時はブームがありましたね。

手編みブームの
    おもしろ話

【中西】手編みで有名な広瀬光治先生に時々指導を受ける事があるのですが、おもしろいお話をしてくださったことがあります。それは、「都はるみさんが『着てはもらえぬセーターを』と歌っていましたが、この歌によって手編み人気にかげりが出て、更に、脚本家の内館牧子さんがエッセーで『手づくり信仰は古い』などと書いたものですから、手編みをする人がどんどん減ってしまいました。でも、作詞家の阿久悠先生が『手編みを奨める歌をつくろう』とおっしゃってくれているので期待をしています。」というお話です。(笑)私たちが少女の頃、手編みをやっている人は多かったのですが。昨年、久喜市から小学校の総合学習の時間に、「子どもの豊かな発想を引き出して欲しい」と編物指導を依頼されました。一週間に一度の学習ですが個性豊かな作品がどんどん出来てくるのです。学習意欲も高くてインターネットで編み方まで調べてきてそれに挑戦している子もいました。みんな目が輝いているのです。こちらが感動してしまうくらいです。

【高木】感性豊かに育つことでしょう。アンデスの編物にも関心が高いようですね。

【中西】南米に行ったときにアンデスの編物に惹かれました。感性豊かで色使いがとても鮮やかなものから土くさいものまであるのです。日本人なら糸を代えてしまうところをグラデーションにしたり、まばらな幾何学模様もとっても良いバランスです。目に焼きついたイメージを具現化したくて「パチャ・ママ」メンバーにお揃いのセーターを編みました。南米らしさが出ていると、とても喜ばれました。

【高木】趣味や夢などは?

夢は登山半分と
   南米半分の生活

【中西】私は長野県で生まれ中西和子さん昔から山が大好きです。北アルプスをはじめ立山連峰など二千五百m級の山々に登ってきました。主人は山登りをする人ではなかったのですが、仕事で忙しくなかなか子ども達ともコミュニケーションがとれないので、それでは、登山の時間を家族の時間にしようと、家族で登るようになりました。子どもが小さい時はおんぶして登りましたね。子どもは三人おりますがみんな高校生までは一緒に登っていました。振り返れば子どものためにもとても良い時間だったように思えます。もちろん、現在子ども達はそれぞれ忙しくなってしまい家族では登れなくなりましたが、私達夫婦では登っております。夢の話ですがラテンアメリカ情報誌『オーラ・アミーゴス』の中に、「ボリビアでアルパカ衣料店のお手伝いをしてみませんか?」の記事を見て、これなら、やれるかなと思い込んでいるのです。それは、六十才を過ぎたら、半年ボリビアに行きアルバイトをしながら南米に触れ、残りの半年は日本で登山を中心に暮らしたいと思っています。私の人生設計は八十才まで計画済みです。(笑)

【高木】楽しみな人生設計ですね。では、お友達をご紹介ください。

【中西そうですね、一年に一度ですが、ご近所の方たちと我が家の庭でビアパーティを開きます。昨年のことですが、やはり自然がいいなあ、ホタルもいいなあと話題になり、そこで「ホタルを飛ばしませんか?」と盛り上がっている自治会仲間の石田雄三さんをご紹介いたします。石田さんは高校の英語の先生をされています。

【高木】ありがとうございました。編物と地域の輪を通じてこれからも楽しくお過ごし下さい。


(中西さんのお庭には、大きなサボテンがありました。しかし、十年経っても花も咲かないし、トゲばかりで邪魔だから「花が咲かないなら切っちゃうから」と中西さんがサボテンに言ったら、その年の六月二十一日に大輪をいくつも咲かせたそうです。以来、体内時計があるかのように毎年六月二十一日前後に咲くそうです。サボテンまで家族の一員になっているような明るいご一家を感じさせていただきました。)




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