2003年10月5日



 秋の香りがいっぱいの季節になりました。平成八年一月一日よりスタートした連載企画「友達の輪」も、バトンリレーをしていただき、あっという間に八年が経過し今回が記念すべき二百人目です。ひとえにご愛読者の皆様のおかげと、スタッフ一同心より感謝申し上げます。ありがとうございました。さて、記念すべき二百人目の友達の輪には「ほっかほっか弁当」の及川健三さんよりご紹介いただきました幸手市内の木村豆腐店三代目木村典朗さんにご登場いただきます。

木村豆腐店三代目 
木村典朗(つねお)さん

本紙取材
木康夫

【高木】及川さんの息子さんの幼なじみだそうで、及川さん親子とは縁が深いようですね。


【木村(敬称略)】及川さんの長男と小、中、高校と一緒の同級生で、幼なじみでした。及川さんにも高校の頃からお世話になっていました。いつも明るい方で元気を頂いている人です。今回、この企画に紹介されて驚いています。
木村典朗さん
【高木】木村さんは三代目だそうですね?家業を継承するのも大変な時代ですが?

亡き父の後を継ぎ
独学で自分の味を模索

【木村】そうですね。祖父が東京で豆腐屋さんをやっていましたが、そこが区画整理で移動しなくてはならなくなって、幸手に越してきて豆腐屋を開業したと聞いています。その後、二代目を父が継ぎ、三代目と言っても、僕の代になってまだ足掛け六年足らずですからまだまだ勉強中です。実は、五年半ほど前にお店を切り盛りしていた父が他界して、母はお店を畳もうと考えていました。僕は当事イトーヨーカドーの食品部門に勤めており、母としては「店を継いで苦労するよりも、今の仕事を続けて安定収入を得たほうが良い」と考えていたのでしょう。でも、父は亡くなる直前まで三ヶ月位入院していたのですが、その時、勤めから帰ってくる僕にあわせて病院を抜け出して豆腐の製造方法を伝授してくれました。自分のことを悟っていたのですかね、今思えばいい親父でした。ですから、父が他界してしまい、告別式の日に会社を退社させていただき、後を継ぐ決心をしたのです。

【高木】いくら伝授されたといってもそんな簡単に出来るものですか?

プーパーを吹きながら
   「豆腐屋さ〜ん」

【木村】イトーヨーカドーに勤める前に六年間ほど家業を手伝っていました。あまりかっこよくないのですが、高校を卒業して二浪したのです。さすがに三浪は出来ないので四年制の夜間部に入学しました。その浪人中と大学時代の合計六年間、加須から杉戸まで、いわゆる豆腐の行商をしました。プーパーとラッパを吹きながらの豆腐屋さんです。とても貴重な体験でしたね。「豆腐屋さ〜ん」と声を掛けられて、待っていてくださるお客様がいるのですから。お客様のありがたさが身にしみてわかりました。その時に豆腐の製造方法も学びました。父の味からのスタートですが、自分で製造するようになってからは自分なりにレシピを作って、自分の味を目指しました。イトーヨーカドーの仕事を通じ、品質管理や原料の吟味など自分の商品にこだわりを持つ事を学び、今の仕事にも活かせてよかったと思っています。

【高木】お豆腐屋さんは早起きですね?どれくらいのお豆腐を作り、おすすめはありますか?

にがり製法と
   豆にこだわって

【木村】早起きでは新聞屋さんには勝てませんが。(笑)そういえば、読売さんはいつも配達が早いですね。助かっています。届いたらテレビ欄と雑誌の広告欄をチェックするのが日課です。テレビ欄では豆腐や豆腐料理の特集などの情報番組、雑誌欄でも豆腐関係の記事が掲載されているものがないか、必ずチェックして見逃さないようにしています。消費者のニーズを敏感につかめるように、その源の新聞はとても良い情報源です。当店はだいたい朝三時ごろから準備します。たまに寝坊しますが、(笑)僕の代になって「にがり製法と豆」にこだわっております。製造量は多い日には一俵(六十kg)の大豆をお豆腐にしています。作っているお豆腐は木綿豆腐、絹豆腐、ざる豆腐、よせ豆腐、ゴマ豆腐です。特にざる豆腐とよせ豆腐はこだわりの一品です。ざるもよせも本来は木綿豆腐を固める前の状態の物をざるや容器にすくったものですが、当店ではざるとよせ専用に製造方法と熟成時間にこだわり、豆も厳選して製造しています。絹豆腐の延長線上にある食感でどこにだしても恥ずかしくないおすすめ商品です。桜の季節には桜の塩漬けが入った桜豆腐も好評を頂いております。季節と数量限定ですが来年三月に発売開始しますのでぜひお越しください。木村典朗さん

【高木】お客様がたくさんいらっしゃいますね。若い女性の方が多いようですね。地域の活動にも熱心ですね。

くちコミで広がる
     お客様の輪

【木村】父の代からご来店いただいているお客様と、少しずつですがくちコミで新しいお客様が来て下さるようになりました。幅広い年代のお客様が多くなったことも実感しています。商売をしていて張り合いがありますね。今の時代は大きなスーパーに行けばなんでも揃ってしまいますから、私達のような専門店は利益を優先するよりもお客さんに喜んでもらえることを大切にしなければいけないと思っています。その思いが伝わればうれしいですね。それから、地元、天神町の商店会とお祭りの振興会で役員を務めさせて頂いております。ちょうど一ヶ月前には天神様でナイトバザーも盛況でした。また、へそづくり応援団と言うまちづくりの団体にも所属しており、九月二十一日の雨の中行った朝市も盛況でした。十月十九日にも多くのお店が出店し「中三丁目地内広場」で開催しますのでぜひお越しください。

【高木ではお友だちをご紹介ください。

【木村】野球部の先輩で家族ぐるみのお付合いをしている山中健彦さんを紹介いたします。山中さんは商売の相談にも乗ってくれ、苦楽を共にしている友人です。


【高木ありがとうございました。

(取材中もお客様が立て続けに来店され、その都度、木村さんが笑顔で接客されていました。昔ながらの大きなそろばんをはじきながら会計する姿は、懐かしい趣さえも感じさせていただきました。商売の原点ここにあり!若くて美しい女性客が多いのは木村さんの人柄でしょうか?)




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