ひな祭りも過ぎて桜のつぼみも大きくなってまいりました。季節はすっかり春ですね。さて、本日の友達の輪には大工棟梁の川俣さんからご紹介いただきました山崎表具店三代目の山崎雅英さんに登場いただきます。山崎さんは蕎麦猪口のコレクターでもあり、たくさんのバイクを所有する方です。
山崎表具店
三代目 山崎雅英さん
本紙取材 木 康夫
【高木】はじめまして。本日はよろしくお願いいたします。
【山崎(敬称略)】こんにちは。川俣さんから連絡をいただき、とても驚いています。棟梁とは仕事上でのお付き合いをさせていただいていますが、とても、楽しい方ですよね。
【高木】山崎さんは表具店の三代目ということですが、いつ頃からこのお仕事をされているのですか?
【山崎】創業は祖父です。祖父は職人として神田の骨屋に修行に行っておりました。骨屋と言うのは今ではほとんど耳にしませんが、障子やふすまの骨組みやふすまの縁を作る職業です。昔は職人の仕事が分業されていたのですね。骨屋で作った骨組みに、塗師屋(ぬしや)と言ってその縁に漆を塗ったりする職人さんがいて(漆などを)塗るのです。それから表具屋で障子の紙やふすまの紙を貼って完成させていました。祖父が幸手に店を構えたのは昭和初期と聞いておりますが、たぶん昭和六年、七年の頃だと思います。その後、二代目として父が後を継ぎ、現在、父と私と弟の三人で仕事をしています。私は十八才の時に家業が忙しかったものですから、どこかに修行に行くこともせず、父の一番弟子が住み込みでいましたので、その人から指導を受けながら、二番弟子として勉強しました。家業と言っても、最初は掃除や片付けばかりでした。この仕事は数をこなさないと上達しないものですから、何事も基本が大切だと言うことででしょうね。かれこれ二十年以上になります。
【高木】勉強不足ですみませんが、一般的には表具屋さんとはどんなお仕事をされるのですか?
【山崎】一般的には先ほど申し上げた障子やふすまの紙貼りです。それ以外に壁紙やクロスなどの張替えや絨毯やカーペット、クッションフロアやビニール床などの貼りも私たちの仕事です。変わったところでは掛け軸の仕立て直しや、美術品の額装、表装なども手がけます。どれも表に出る部分の作業ですから表具屋と呼ぶのでしょうか?また、表具屋に似て経師屋さんという職業もあります。経師屋さんは字のごとく御経の仕立てやお寺などの障子やふすまなどの貼りなどが主であったと聞いております。
【高木】なるほど、ところで変わったものを集めていらっしゃるようですが?
【山崎】実は蕎麦が大好きなんです。それと古い日本の物に興味があったということが、変わったもの、実は蕎麦猪口なんですが、それを集めるきっかけですね。蕎麦好きになった原因も昔はバイクツーリングで山の方に行くと、その土地の蕎麦を食べることが多かったのです。それで、ある時、伊万里焼の蕎麦猪口の味わいに魅了されたのです。蕎麦猪口は「むこうづけ」とも言われる小鉢で、図柄のバリエーションが豊富でコレクターもたくさんいます。初めて手に入れたのは伊万里焼の蕎麦猪口でしたが、何もわからずに六千円くらいで買い求めました。以来、現在では六十客くらいありますね。私が集めている蕎麦猪口は江戸時代のものがほとんどです。図柄を書くのにコバルト色した呉須(ごす)と呼ばれるものを使うのですが、明治時代になると日本では呉須がほとんど取れなくなり、外国から西洋コバルトを輸入するようになりました。しかし、西洋コバルトでは出来あがりが明るくなってしまいます。現存するもので高額なものは日本の呉須を用いたもので、私は持っていませんが、一客十万円以上もする猪口があります。でも、家族からは「犬の茶碗にもならない」と邪魔者扱いされています。(笑)実際、きりがないのでそろそろやめようかなとも考えています。実は「李朝の水滴」に興味を持っていて、これを集めたいなと思っています。水滴は硯に水を入れる陶器です。なかなかあじわい深いものですよ。
【高木】新しいコレクションですね。贋作などをつかんでしまう事はありませんか?
【山崎】仕事柄、日本画家の作品集や西洋美術の作品集などの本を良く見ます。蕎麦猪口を集めているときも古本屋に行って専門の本を探したり、李朝の水滴もそうですが、目を養うためにはたくさんのものを見ることが大切です。コレクションマニアはどこにもいるもので、最近ではネットオークションなどには贋作やまがい物なども出されています。私は地元の骨董屋さんに通ったり、栃木や茨城などで開かれる骨董市に出向いて勉強しました。それでも、なかなか難しいものですね。やはりたくさんの物を見ることが大切なのでしょう。
【高木】山崎さんはオートバイも好きと伺いましたが。
【山崎】そうですね。オートバイは十六才からずーっと乗っていますから一番長い趣味ですね。十四年前に手に入れたハーレー1200スポーツスターを筆頭に、変わったところではチェコスロバキア製のCZというスポーツバイクまで約二十台ほどあります。置くところがなくなってしまうので、現在は三ヶ所に分けて保管してあります。ヤマハのポッケからモトコンポといったミニバイクもありますし、トライアルもしていましたからヤマハ25トレールやホンダのトライアル、また、ヤマハSRやHS90など、定期的にエンジンをかけるだけでも大変です。影響したのかどうかわかりませんが、弟もバイク好きでBMW1000やBMW650などの大型バイクをはじめいろいろなバイクを所有していますし、古いバイクなどは部品取り用に同じバイクをもう一台所有していますから、もっと数が増えてしまいます。(笑)
【高木】これもコレクターですね。(笑)では、お友達をご紹介願います。
【山崎】バイクのことで本当にお世話になっている小沼ホンダの小沼正次さんをご紹介いたします。小沼さんがいなければ私のバイクはボロボロになっていますね。
【高木】ありがとうございました。ますます、コレクションに磨きを掛けて下さい。
(山崎さんはとても落ち着いた方で、職人の趣がある方です。しかし、趣味はオートバイから蕎麦猪口集めと幅広く楽しまれる方です。はたして、オートバイは何台になるのでしょうか?)