明日はバレンタインデー。中世ヨーロッパで聖バレンタインは愛の守護神とされ、十四世紀頃からこの日に恋人たちが贈り物やカードを交換する風習が生まれたそうです。そんな華やかな気分になれる今日ですが、本日の友達の輪は箏・三絃・師匠の残間登志子さんからご紹介いただきました声楽家の藤井和枝さんです。藤井さんは合唱団の指揮や音楽活動を通じてご活躍されている方で、「友達の輪・第165号」に登場された宮杉光枝さんのご家族で、「友達の輪」では四組目の親子登場となります。
声楽家
藤井 和枝さん
本紙取材 木 康夫
【木】こんにちは。残間さんからご紹介いただきました。よろしくお願いいたします。
【藤井(敬称略)】こんにちは。こちらこそ、よろしくお願いいたします。残間さんには西中学校PTAで大変お世話になりました。
【木】現在の活動は、どんな事をされているのですか?
【藤井】おもに、香日向グリーンエコーとヴェルデフローラというふたつの合唱団の指揮をしております。合唱団は四、五年のお付き合いになります。
【木】幼い頃から音楽関係の世界に進もうと思っていたのですか?
【藤井】幼稚園に通っている五才の時にピアノを始めたのですが、十七才の頃先生が私の声を誉めて下さったのです。そして、声楽を勧められ先生を紹介していただき、声楽の勉強を本格的に始めるようになりました。ピアノと同じように教本があって声の出し方、歌い方の勉強をするのです。生で聴く機会がすくないので、オペラなどのレコードを聴いて練習を重ねました。当時は県立女子高の普通科に通っていたのですが、声楽がきっかけで音楽の道に進もうと考え、受験先を音大に変えたほどです。当時の夢はオペラ歌手になることでした。ところが、音大在学中にピアノを教えるようになりました。ピアノは幼い頃から始めると十年〜十五年と長い期間指導することが多いのです。それで、卒業後もピアノの先生を主とすることにしたのです。
【木】オペラ歌手は果たせませんでしたね。
【藤井】そうですね。歌うことは続けたかったので、女声合唱団に参加しました。とっても熱心な合唱団で、京都で開かれる全国大会にも出場いたしました。でも、結婚と二人の子育てもあり合唱団と声楽は中断しなければならなくなりました。その二人の子どもたちが小学校に入学した時に合唱団から「コンサートを開くので、もう一度合唱団に入りませんか?」と声を掛けられたのです。六、七年離れていましたので不安でしたが、声を掛けていただいてうれしさもあって参加しました。ところが、声が出ないのです。体が鳴りださないという感じです。少し時間をかけて体を楽器にする感を取り戻し、その後、合唱団のボイストレーナーを担当するようになりました。
【木】ピアノから声楽へそして合唱団員からボイストレーナーですか。
【藤井】でも、五年目の夏、ボイストレーナーとして指揮者の求める声を出せず、身も心もがんじがらめで歌えなくなってしまったのです。役割が果たせませんので合唱団を辞めることにしました。悪いことは重なるもので、今度は自分が病に冒されて入院加療生活です。家族のおかげで回復し、退院後はピアノ教室だけ続けていました。そんな中、習いに来るお子さんのお父さんが病院関係の方で、音楽療法に協力を求められたのです。ピアノを弾きながら楽しく歌を歌い、療養されている患者さんの心と体のケアに役立てる療法です。最初は緊張しましたが、童謡や唱歌、昔なつかしい歌などを歌いますと患者さんの表情が変わってくるのです。皆さんがやさしさにあふれているのです。音楽療法に行っているのに愛をもらって帰ってくる感じでした。その後、四施設に伺うこととなり、今は、最初の施設だけとなりましたが、やりがいを持って続けています。
【高木】出会いが新たなフィールドを開拓して行くようですね。夢などは?
【藤井】そうなんです。不思議ですが私の音楽人生は出会った皆さんが拓いてくれたと思っています。今までの活動がひとつひとつずっと繋がっているのです。夢ですか?高校生のときにオペラを歌いたいと思った気持ちを大事に、いつかはソロで舞台に立ちたいと思います。声楽をやっているとソロ・リサイタルは夢ですから。ですから、もっと勉強していきたいと思っています。常に自分の声を誰かに聴いてもらい、客観的に判断することが大切なんです。一生懸命歌えたと実感したり、いい歌を歌ったと感じたときはだめですね。体の力が抜けていて自分の声が遠くから聞こえてくる感じで歌えた時はとても自由で開放されて幸せな気分です。自分の体が楽器のようになって、自分の持っている本当の声で歌う為に健康が大切です。また、歌うことで心身の健康を得ることもできます。こんな素敵な思いをひとりでも多くの方々に味わっていただきたいのです。このことがこれからの私の生き方になると思います。
【木】それでは、お友達をご紹介ください。
【藤井】同級生ですが、剣道の指導者として活躍している石井和子さんを紹介いたします。
【木】ありがとうございました。益々のご活躍を期待いたします。
(藤井さんのお話には教員であるご主人をはじめ、ご家族の協力があっていろいろやってこられたと家族への感謝の気持ちがあふれていました。そして、やると決めたらいつも全力でやってこられたようです。誠実な気持ちを持っていれば、結果はついてきて必ず誰かが見ていてくれるんだなと感じました)