今年も半年が過ぎようとしています。この調子ではあっという間に一年が終わってしまいますね。さて、本日の友達の輪にはパン工房を主宰している吉田裕子さんからご紹介いただいた、白石貞雄さんに登場願います。白石さんは苺農家として栗橋にお住まいですが、幸手の方々をはじめ近隣の方々においしい完熟苺を販売されてます。
苺農家
白石 貞雄さん
本紙取材 木 康夫
【木】こんにちは。吉田さんからケーキの苺を生産されている方と伺いました。
【白石(敬称略)】こんにちは。よろしくお願いいたします。吉田さんは苺の時期になるとケーキの材料として完熟苺を買いに来られます。ご好評をいただいているようでうれしいですね。
【木】白石さんは代々苺農家なんですか?
江戸時代から
続く農家
【白石】農業は古いようですね。菩提寺が焼けてしまい当家の古い資料が残っていませんが、言い伝えでは江戸時代から稲作農家として続いています。私は十七才のときに家業に入ったのですが、当時は二毛作で米と麦を作っていました。しかし、麦はあまり良い収入にならなかったので麦に替わって何か他のものを裏作に作ろうと考えたのです。いろいろな野菜を試して作りましたが、元々は稲作用の水田ですから土壌の含水量が高いので適するものが見当たりませんでした。そんな時にある程度含水量があったほうが良いとされる苺に出会ったのです。それで、最初は露地物を作付けしました。今では露地物というのは少なくなりましたが、苺本来の旬な時期である五月上旬に実らせます。
【木】苺というと半年間位市場に出ていますよね?苺作りは大変そうですね。
【白石】そうですね。十二月から五月くらいまで市場に出荷します。仕事は一年以上かかるのですが、収入は半年で終わってしまいますね。(笑)苺作りは手間がかかります。あまり月を追って考えたことはありませんが、本当に工程はたくさんあります。まず、苺の親株を五月に別のところに植えます。苺の苗はこの親株から出てくる一番苗、二番苗、三番苗という子株を植えるのです。でも、一番苗は最初に出てくる株ですから、子株として植える時期には一番古い苗になってしまいます。それで、子株として使うのは一番苗は使わずに二番苗、三番苗を植えるのです。そして、夏の間に昨年用いたハウスの本圃(苗を植えるところ)の古株を全部出して新たな土壌を作ります。有機栽培で作っていますので本圃には籾殻や米ぬか剪定枝などで作った堆肥を入れます。堆肥作りは何度も切り返して発酵させるのですが一年位かかります。そして、九月の上旬に親株から取った二番苗や三番苗を植えます。十月上旬にはビニールを張り、雑草の予防と根の保温にポリマルチを張って株を出します。そして、十月の末に苺の花が咲くのです。
【木】いろいろな作業があるのですね。受粉は自然に行なうのですか?
【白石】受粉しなければ苺の実はなりません。露地物は自然の風などで受粉しますが、ハウス内では、ミツバチの力を借ります。養蜂場から借りてきたミツバチをハウス内に放すと、ミツバチたちはハウス内を飛びまわって苺の花を見つけて受粉させてくれるのです。苺の花から蜜はほとんど取れませんがミツバチたちは花粉を集めるのです。両足にいっぱいの花粉を付けて重そうにふらふらと巣まで帰って来ますよ。ミツバチたちは苺の収穫が半年ありますのでその間ハウスの中に滞在してもらうのです。とっても役に立つ職人ですよ。(笑)十一月にはハウスの中に保温用の二重カーテンを付けます。温度管理は朝昼夜と一番気を使いますね。そして、十一月下旬にプロパンガスを入れて燃焼させ二酸化炭素をハウス内に発生させます。植物は日中、光合成をしますが、夜は二酸化炭素を吸って成長するのです。また、夕方から電灯をハウス内につけて日を長く見せます。日が長いと苺は成長するのです。苺の成長を見ながら電灯の照射時間を短くしていき十二月上旬から収穫が始まります。
【木】苺作りが始まると休んでいられませんね?
【白石】そうですね。今年は娘が手伝ってくれましたが、私達夫婦だけでやっていますから息抜きが出来ませんね。今ごろから苺作りにかかりっきりになりますね。この仕事は絶対に一人では出来ません。後継者がいないのでいつまで出来るかなと思っています。この地域の土壌は苺作りにあっていたこともあって多い時は一七二軒も苺農家がありました。しかし、.後継者不足で現在はわずか十軒ほどになってしまいました。苺作りの大変さが後継者不足の原因でしょうね。堆肥作りが先行しますのであと何回作れるかなと思っています。(笑)
【木】苺作りの楽しみってなんですか?ご趣味などは?
【白石】へたのところまで真っ赤な完熟苺にこだわっているのですが、お客さんに喜んでもらう事ですね。なんといっても、我が家の庭先まで苺を買いに来てくださるのですよ。これ以上ありがたいことはありません。宣伝をしているわけでもありませんが、何故か収穫時期には連日お客様が来られてあっという間に売りきれてしまいます。不思議ですね。口コミで広まってしまったようです。収穫の少ない時期に予約を受けることはお客様にご迷惑を掛ける事になりますので控えているのですが、それでも「苺はここのじゃないと食べない」と言ってくださる方もいてうれしい悲鳴です。趣味は夫婦で共通なんですが、盆栽や花作りや旅行ですね。夏以降は苺の出荷時期が終わるまで休めませんが、今の時期に夫婦で旅行を楽しんでいます。
【木】頑張ってください。では、お友達をご紹介下さい。
【白石】幸手市で保険代理店をされている齊木和美さんをご紹介いたします。
【木】ありがとうございました。これからお忙しい時期に入られることと思いますが、お体をご自愛されておいしい苺作りに励んで下さい。おいしい苺が採れる頃にお邪魔させていただきます。
(白石さんはご夫婦で取材に応じてくれました。忙しい中にも夫婦でのご旅行が趣味のひとつだそうで、写真もその時のものをいただきました。とっても仲のいいご夫婦を感じさせていただきました)