すっかり秋らしくなり、北海道からスタートした紅葉前線も徐々に南下してまいりました。さて、本日の友達の輪には中村安文さんよりご紹介いただいた幸手中央ロータリークラブの松本貞雄さんに登場いただきます。松本さんは幸手生まれの幸手育ちで中村さんの同級生とのことです。現在は岩槻で「和風牛肉料理・まつもと」のオーナーシェフとして活躍されています。
和風牛肉料理・まつもと
オーナーシェフ 松本 貞雄さん
本紙取材 木 康夫
【木】こんにちは。ランチタイム後のお忙しい時間にお邪魔してすみません。中村さんから幼なじみと伺いました。今日はよろしくお願いいたします。
【松本(敬称略)】こんにちは。わざわざこちらまで取材にきて頂いて恐縮です。中村さんとは小学校からのお付き合いですね。このような企画にご紹介いただきうれしく思います。
【木】創業者と伺いましたが、お店は長いのですか?
ヘッドハンティング?
雇われ店主
【松本】私は大学卒業と同時にチッソという会社に入り、ジョイントベンチャーの営業部門に配属されました。仕事は一流ホテルや有名レストランなどを回り業務用の食器洗浄機による洗浄システムの指導です。いまでこそ業務用食器洗浄機は一般的になりましたが、当時は米軍で開発された軍艦用の設備でした。入社一年目は自分で言うのもなんですが、社内での営業成績はトップでした。二年目に入っても順調だったのですが、私を評価する先輩である上司が突然会社を辞めるというのです。先輩は肉問屋の二男で、岩槻駅前にビルを所有しており、その二階が空いたのでそこで本格的なステーキレストランを開業すると言うのです。さらには「片腕として手伝ってくれないか?」と懇願されたのです。とても悩みましたが、バブルが始まった頃でもあり勢いがありましたので先輩について行く事を選びました。当時は紅花のような鉄板焼きが全盛の時代でしたが、コックも銀座から呼び寄せた人間を使い正統派のステーキレストランをオープンさせました。
【木】急な転職だったのですね。それからどうされたのですか?
二十四年勤め
四十八才で独立
【松本】先輩には仲人もやっていただき、お店も経営全部を任される支配人として二十四年間勤めさせていただきました。二人の娘も下の娘が二十才を過ぎ、気が付いたら私も四十八才になった時ですね、子育ても終わりもう後がないし、将来のことを考えて独立しようと決断したのです。それで、現在の場所に物件を見つけ「和風牛肉料理・まつもと」を開業したのです。同じ市内での開業でしたから最初は料理の内容が競合しないように気を使っていました。「商売に遠慮はいらない」と言われましたが、その後もサブメニューにステーキ釜飯や釜飯といったオリジナル料理を開発してお客様に訴求を図っておりました。ところが平成十四年のNYテロの直後にBSE問題も起こったのですが、牛肉業界にとっては大激震でした。お客様が激減し、お店がどんどん辞めていくのです。私が育った古巣もこの機に店を閉められました。文字通り生き残りをかけた毎日でした。他のお店と同じようなことを考えずに、二ヶ月に一度は新メニューを開発して、オンリーワンな店作りを目指しました。おかげで、なんとか生き残り、半年かかりましたが前年比まで回復することが出来ました。
【木】BSE問題は大変でしたね。お薦め料理はなんですか?
【松本】代々伝わっているものは昔の味として忠実に継承しております。材料も国産とオーストラリア産の中力粉をブレンドしております。国産の特色は食感も良く味も飽きませんね。でも、色がくすんでいるので一見するとおいしく見えません。その点、オーストラリア産はこしが強く粘り気があり色も良いですね。国産、オーストラリア産、いずれの粉も何種類かの産地の粉をブレンドして当店の味として仕上げております。また、水にもこだわっておりまして弱酸性の浄水イオン水を用いております。この水を使うとこしが強くなりますし、天然の防腐効果があります。粉のブレンド比率や水の量、気候の変化などがちょっとでも違うと出来上がった商品の食感も味も変わってきますから常に研究は欠かせませんね。
【木】製造されている商品を教えてください。また、おいしい食べ方なんてあるのでしょうか?
【中村】当店では埼玉県特別栽培農産物販売指定店と言って有機野菜や減農薬野菜を用いております。また、安全と言う観点から牛肉も厳選しております。私のポリシーは「正直」という一言ですが、正しい商品を正しく売ることが信頼の基本と思います。今後も安心して召し上がっていただけるお料理を提供し続けたいと思います。さて、お薦めですが、神戸牛のにぎりですね。単品でもありますが、コース料理には必ず入っています。当店の定休日は火曜日です。営業時間は平日11時から14時がランチタイム。17時半から22時までが夜の営業です。それと、シャトーブリアンがお勧めです。「まつもと」がお贈りするのは、最上級黒毛和牛のシャトーブリアンです。本物のシャトーブリアンは、そうそうお目にかかれるものではありません。一頭の牛からわずか6人分しか取れないという幻の逸品なのです。一頭の牛からは右側と左側の2本のヒレ肉が取れます。その中央部、わずかな部分からしか取れないのがシャトーブリアンです。宣伝になりますが、シャトーブリアンステーキを単品でも召し上がれるようになりました。単品の場合は十日前までに、コースの場合は三日前までにご予約の上お楽しみ下さい。なお、このメニューはお二人様以上で承っております。
【木】豪華ですね、食べたくなってきました。(笑)メニューには地元の歴史を活かしたものもあると伺いましたが?
美味しいものから
歴史探訪を
【松本】そうですね。歴史的な背景に思いを馳せて、考案したのが当店の「歴史探訪ステーキ懐石」シリーズです。岩槻城主の青山忠俊は三代将軍家光の幼少時に江戸幕府の老中職にあり、(ちなみに家光の乳母は春日の局)次代を背負って立つ末来の将軍の指南役として、武芸を教育した人であります。また当時、江戸幕府の要職(重役)の地位にあり、色々な貢ぎ物等を贈られていたものと思われます。その中に彦根藩より近江牛肉(味噌漬・粕漬・牛肉酒煎肉)がありました。こんなことから、おそらく岩槻で最初に牛肉を食した人であろうと思われますのでそれをメニュー化しています。
【木】楽しいお話ですね。では、お友達をご紹介ください。
【松本】幸手中央ロータリークラブのご縁で親しくさせていただいております池田岩夫さんをご紹介いたします。池田さんは鷲宮でガソリンスタンドをはじめとする石油関連のお仕事をされています。
【木】ありがとうございました。これからも牛肉という素材を通じて食文化の空間をお創りください。ますますのご繁栄を祈念いたします。
(松本さんはメニューや店内の装飾にも夢を掲げており、まつもとのファンでもある画家の関根将雄氏の作品が季節感を感じさせていました。また、各界の著名な方々がお店に訪れているそうです)