権現堂のさくら祭りも今週水曜日から始まり、春を満喫できるシーズンとなりました。さて、本日の友達の輪には「サークル ポプラの木」の松田雅代さんからご紹介いただいた、伴朝夫さんに登場いただきます。伴さんは趣味で能面を彫られています。
創雅会
伴 朝夫さん
本紙取材 木 康夫
【木】こんにちは。松田さんから能面を製作されている方とご紹介いただきました。よろしくお願い致します。
【伴(敬称略)】こんにちは。松田さんとは幸手駅構内にある商工品展示コーナーの飾り付けで能面を飾りたいのでと声を掛けていただきご縁が深くなりました。あのコーナーの飾り付けは幸手市の「へそづくり応援団」が行っているそうで松田さんの多方面で活躍には感心しています。
【木】ご趣味で能面を彫られているとのことですが?いつ頃からですか?どんなきっかけで始められたのですか?
ガチガチの
国家公務員
【伴】私は定年を迎えるまで法規をまとったガチガチの国家公務員でした。(笑)定年直前のある日、施設の人たちに集中させる時間を持たせたいと言う福祉ボランティアの方からお話しを頂きました。その方は獅子頭などの面を作るプロの先生で面などを作っていると、精神が落ちつきとても夢中になるのだというのです。関心を持ちましたので、早速自らが体験してみることにしたのです。ところが、やってみましたが誰もが簡単に出来るというものではなかったのです。奥が深く難しいなあと言うのが本音でした。私は幼い頃から絵を描くことや材木の切れ端などで飛行機を作ったりが大好きでしたから、その魅力にひきつけられて定年後の自分の時間で面つくりを楽しみたいと思ったのです。それで、退職直前に偶然にも出会った先生の門を叩いたのです。
【木】定年後に始められたご趣味なんですね。漠然とした質問ですが能面はどんな作り方をするのですか?
【伴】先生は茨城在住ですから往復七十キロの距離を足繁く通って学びました。能面を作るのにいろいろ勉強の仕方があるようですが、師いわく「能面をやるには、まず、面の絵を描きなさい。」「そして、人の顔の深さを手になじませなさい。」というのです。鉛筆だけで能面を見ながら描くのです。幼い頃から絵心がありましたので楽しかったですね。そして二、三日かけて納得いくまで描き込むのです。そうすることによって形が身体に染み込んでくるというのです。そして、次に教えていただいたのが粘土を使っての面作りです。粘土は大変な作業です。削ったりくっつけたりの作業の繰り返しでした。その頃は面作りに対して、悩みに悩んでいた時期でもあり、なかなかうまくいきませんでした。
【木】基礎が大切なんですね。
四角四面の
木に魂を込める
【伴】一年くらいやって自分なりに「よし」と納得してから、いよいよ木にかかりました。材木は檜材が主体です。四角四面の材料に最初にカンナをかけて表面をつるつるにするのです。掘り込んでしまうのだから意味がないのではと思うのですが。能面は打つと言います。気持ちを込めて精神を打ち込むという、木に対する姿勢のようなものでカンナをかけるのでしょうね。日本の美への探求とも感じられます。古典的な能面には型紙があります。伝承することも重要でしたから型紙が生まれたのでしょう。その型紙を使い面を彫ります。面は舞台で使う道具で軽さも求められます。面ですから内側をえぐりそこに顔が自然に入るように彫るのです。そして、彫ったばかりの木肌に塗りを施します。胡粉(こふん)という貝殻から作られるもので、全部白く塗っていくのです。化粧の下地のようなものです。その後、下塗りを最低五回行い、岩絵具で上塗りをして完成です。ひとつを完成させるのに一ヶ月位かかります。しかし、完成しても満足のいくものはありません。常に何か足らないと感じるのです。趣味の面打ちですが、技量もまだまだですが、もっともっと極めたいと思います。満足したら向上心もなくなってしまうと思います。たぶん死ぬまでかかるでしょう。(笑)
【木】能面はいろいろあるのですか?舞台で用いられたこともあるようですね?
うれしさは
我が子の初舞台
【伴】能面は伝統的なものですが大きく分けると八十種、細かく分けると三百種にもなります。能面だけで性格や身分がわかるように典型化されています。能では主役のことをシテ方といいますが能面をつけるのは主役だけです。脇役はつけないのです。無表情な能面からいろいろな感情を演じる伝統芸能は見るものを引きつけますよ。面は楽器に似ていると言われますが、同じ譜面でも同じ面でも、弾く人演じる人によって違うと言う事です。私が打った能面も渋谷の能楽堂で演じてくれました。我が子の初舞台のようでとても嬉しかったですね。
【木】他にもご趣味があるようですが?
【伴】新聞などへの投稿が大好きで、これまでに五十回ほど掲載されました。過日には県内の出版会社から「投稿いつも拝見しています。ずいぶん掲載されましたね。そろそろ出版されたらいかがですか。」と出版のお誘いをいただきました。営業でしょうがよく見ているのですね。(笑)現在は埼玉新聞に「つれづれの会」という投稿の会があるのですが、その会員としても文章を書くことを楽しんでいます。また、自分史の会でも自分を題材に書くことを楽しんでいます。能面も投稿もそうですが、自分自身で作って表現することが好きなんでしょうね。
【木】では、お友だちをご紹介下さい。
【伴】自分史でご一緒させていただいている野村信子さんをご紹介いたします。野村さんは水墨画を描かれています。
【木】ありがとうございました。これからも能面打ちとして腕を磨きご活躍下さい。
(伴さんが所属する創雅会では今週の火曜日から四月一日の日曜日まで能面展を開催されるそうです。伴さんの作品をはじめ十四名の作品と特別出品者の作品が展示されるそうです。場所は池袋西口のある東京芸術劇場地下展示室で午前十時半から午後五時半まで開催だそうです。興味のある方は能面の世界を堪能されるチャンスです。訪れてみたらいかがでしょうか)