異常とも言えた夏の猛暑も和らいで、秋がそこまでやってきたように感じます。さて、本日の友達の輪には野本米店の野本広吉さんからご紹介いただきました柳下君子さんに登場いただきます。柳下さんは幸手駅前東さくら通りでマルキヤ家具店を創業され、現在もお店の看板娘として頑張っていらっしゃる方です。
マルキヤ家具店
看板娘 柳下 君子さん
本誌取材 木 康夫
【木】こんにちは。野本さんより長いお付き合いをさせていただき、ご商売が熱心な方とご紹介いただきました。今日はよろしくお願いいたします。マルキヤさんはご主人とお二人で創業されたそうですが、その辺のお話を伺いたいのですが?
【柳下(敬称略)】友達の輪は毎回読んでいますが、まさか私のところに回ってくるとは思いませんでした。こちらこそ、よろしくお願いします。もともと主人は家具職人でした。春日部は古くから桐タンスで有名なところで、主人も家具職人として春日部で働いていました。それで、昭和三十八年に井草肉屋さんの自転車預かり所の一階の部分をお借りして主人が作った家具の直販を始めたのです。夫婦二人で始めたマルキヤのスタートです。主人は喜太郎という名前でしたので、キを一文字とり、角がなくて縁起が良いとされる「○にキの字」で屋号はマルキヤとしました。昭和五十五年まで駅前で商売させていただきました。
【木】ご苦労もあったように伺いましたが。
子どもをおんぶして
自転車で外交、集金
【柳下】そうですね。主人は職人ですから営業にはまったく触れませんでした。それで、私が自転車で外交です。市内はもちろんですが、杉戸町や五霞町へも自転車で回りました。注文を伺っては主人と配達し、こんどは集金です。子どもたちも四人おりましたから、おんぶして営業や集金をしました。お金が回らなくて長男のミルクも買えない時代もありました。商売は命をかけて本当に死にもの狂いでした。しかし、売上を上げたいという思いが強くて、もちろん今でもすべての人を信じていますが、当時の私たちにはまだ見る目がなかったのですね。家具を注文されて喜んでお届けしても、まったく支払っていただけない方もいました。三十年以上も前の話ですが、大きな焦げ付きがずいぶんありました。悔しくて涙を流した貴重な体験でしたが、商売の難しさを学びました。
【木】そうでしたか。現在の場所に移られたのはいつ頃ですか?
【柳下】駅前では手狭になってきましたので、家具屋として広い場所に移ろうと考えました。当時は駅前から東さくら通りまで抜けておらず、「すぐに道が抜けますから」と言う話でしたので、銀行に借金をして現在の場所に土地と建物を購入しました。昭和五十五年です。ところが、話のようになかなか駅前通りが貫通しないのです。家具屋ですから大きな物を運ぶのは当然ですが、前の道が砂利道でやっと軽自動車が入るくらいの狭さでしたから搬入搬出は大変な作業でした。それでも、計画から二十八年かかって現在のような道路が出来たのです。そして、ありがたいもので長い間ご愛顧いただいているお客様に恵まれました。年を重ねるごとに私たちも信用をいただいたのでしょうね。あらためて、信用は大切だと思います。ですから、私も生活に関わるものすべて、お砂糖から洋服まで全部地元の商店から購入しています。地元で消費すればいつかは返ってくると思っています。いくら外で購入しても外の人からは返ってきませんからね。
【木】地域の活性化は地元消費が不可欠ですね。お仕事内容について伺いたいのですが?
家具からリフォームまで
生活に関するものすべて
【柳下】宣伝になってしまいますが、家具全般はもちろんですが、トイレやお風呂の水回り、リフォームまで生活に関するものはすべて取り扱っています。お電話一本ですぐにお伺いさせていただきますし、どんなご相談もご遠慮なくお気軽にどうぞ。毎日午前十時から午後八時まで営業しています。月曜日が定休ですがお客様がいらっしゃれば応対します。電話は自宅でも取れますからお休みも関係ありません。(笑)当店は現在次男が代表を務め、業務を全般的に見ています。お客様が私の顔が見えないと帰ってしまうこともあり、看板娘にはちょっと歳をとりましたが、お店の顔として毎日出ています。今年は開業四十五周年にあたり、私の発案で「絨毯まつり」を開催しました。三日間開催でしたがたくさんのお客様にご来場いただきペルシャ絨毯をお求めいただきました。元気でいれば五十周年には、またイベントをやりたいなと思っています。また、当店は北海道家具をたくさん扱っています。北海道の自然林などの材料を用いた家具で、北海道の寒い山中に工場があります。寒いところの材木ですから狂いがなく、一生ものの家具です。国産でも年々減っている楢や鍬、たもの木などの材料で釘やネジを一切使わずに造られております。特注家具もありますのでぜひご覧下さい。
【木】なんでも積極的でお元気ですね。元気の秘訣などありますか?また、ご趣味などは?
【柳下】元気の秘訣はお客様とお話ししたりする機会があることでしょうね。この商売でご飯をいただいていますからありがたさを常に持っていなければいけません。中途半端じゃ駄目なんです。そして、「いらっしゃいませ」というお迎えする気持ちが大好きで、お客様とのお話にも言葉使いや気使いが大切です。また、電話での応対も顔が見えませんから気をつかいます。そういう気を使うことが元気の秘訣じゃないかと思っています。それから、趣味は商売一筋で今まで来てしまいましたから、やっぱり商売ですね。(笑)
【木】では、お友だちをご紹介下さい。
【柳下】「オーロール東城屋」の新谷芳枝さんを紹介します。アイデアたっぷりのおいしいパンを造ってますよね。
【木】ありがとうございました。ますます、元気に看板娘としてご商売繁盛を祈念します。
(柳下さんは人生を振り返るように創業時のこと、苦しかったときのことをお話下さいました。取材時にいらっしゃった永年のお客様が、柳下さんを「招き猫」と評されるようにまさに看板娘な方でした。)