朝夕には寒さを感じる季節になりました。北海道では紅葉前線も南下し、今年も美しい季節の始まりです。さて、本日の友達の輪には日本女子大学二年生の増山友紀さんからご紹介いただきましたお友達の和菓子店である石太菓子店さんの中村和彦さんに登場いただきます。
石太菓子店
七代目 中村 和彦さん
本誌取材 木 康夫
【木】こんにちは。増山さんから同級生のお友達の老舗和菓子店とご紹介いただきました。よろしくお願いいたします。中村さんは老舗の和菓子店と伺っていますが何代目なんですか?歴史などお話いただけますか?
【中村(敬称略)】はじめまして。よろしくお願いいたします。友達の輪はいつも拝見させていただいております。娘の同級生の増山さんが出たことは伺いましたが、まさか私に回ってくるとは思いもしませんでした。私たちは、家族で和菓子屋を営んでいまして、お店の名前は「石太(いした)菓子店」といいます。おもに私が製造をして、家内が販売を担当しています。創業ははっきりとは分かっていませんが、江戸時代で文久という元号の時代だったようです。西暦にすると千八百年くらいのことだという記録があります。ご先祖様をさかのぼりますと、どうやら店名の由来は石太郎さんという人から来ているようです。しかし創業時のことは、昔のことなので、詳しく残っておらずはっきりしておりません。もともとなぜ菓子店をはじめたかというのもわかりません。でも私は小さいころより「お前は七代目だ」というように親から言われていましたしまだ学生の娘は「八代目」ということになりますね。
幸手銘菓「塩がま」
【木】たくさんの和菓子がありますがお薦めの和菓子はどれですか?
【中村】一番のお薦めは、幸手名物のひとつでもある「塩がま」です。「塩がま」というと、すぐにイメージ出来ない方もいらっしゃるかもしれませんので、簡単にご説明します。(編集注:奥様がお店で接客をされていて、お客様から質問を受けることが多いので勉強されたそうです。奥様より詳しくご説明いただきました。)東北にある塩釜神社というところで、お祭りで出されたものが最初だそうです。最初から今のような形だったわけではなくて、さまざまに形を変えて、今の形になったようです。幸手市では、江戸時代の文政元年(千八百十八年)に、現在の北地区で菓子製造業を営んでいた樋口清左衛門という人物によって初めて作られたとされています。その後、そちらで修行した人たちがそれぞれのお店で作るようになり、明治天皇東北御巡幸の際、「幸手名物」として献上されるまでになったそうです。今現在では、二店舗で製造販売されています。
【木】なるほど、歴史ある和菓子なんですね。どんな和菓子なんですか?
お茶とのコラボ
【中村】落雁の一種です。作り方は、もち米を乾燥させて粉にした状態のものに、(焼きみじんといいます)砂糖を混ぜます。そこに塩を加え、型で押して作ります。落雁によく似ていますが、塩けが効いていて、お茶ととてもよく合います。昔はお祭りで食べられていたようですが、今は一般的にお茶菓子として食べられています。「塩がま」は、ご年配の方に特に人気で、お客様に喜んでもらえるのがとてもうれしいです。中には初めて食べる方もいるようですが、若い年代の人たちにも「おいしい」と言ってもらえています。「塩がま」というお菓子自体を知らない方には、まず試食をしていただいて、召し上がっていただくのが一番わかりやすいのではないかと思います。桜の時期は、お花見の帰りに立ち寄っていただいて「塩がま」を召し上がっていただくととても喜ばれます。試食してみて下さい。
【木】独特な食感ですね。そして、お茶と一緒にいただくと甘さと塩けが絶妙なバランスで口の中で溶けるようですね。おいしいですね。他にお薦めは?
巡礼どら焼き
【中村】お口にあって良かったです。幸手には「らき☆すたギャラリー」がありますが、「らき☆すた」のブームに乗って、若い方向けに作った「巡礼どら焼き」という商品があります。(ファンが、「らき☆すた」の聖地を回ることを巡礼と言うそうです。)どら焼きは定番でおいてますが、普通のどら焼きとはちょっと違っていて、中にクリームチーズが入っています。「巡礼どら焼き」は土日に開いている「らき☆すたギャラリー」に置いている商品です。また、定番の和菓子は常時十種類程度を置いていて、季節ごとに商品が入れ替わります。行事のあるときはお赤飯もやっています。また、お祝い事などに使うものは御注文に応じて作ります。十月のお薦め商品をご紹介します。「むらさきの実り」です。ぜひお店に来て一度お試しいただければと思います。
【木】季節感あふれる商品開発も楽しそうですね。後継者は娘さんですか?
八代目と共に
【中村】そうですね。娘は現在製菓学校へ通っており、今は和菓子中心で勉強をしています。来年の三月で卒業ですが、卒業後は修行という形でどこかで勉強してもらいたいと思っています。そして、出来れば八代目は娘にやってもらいたいと思っています。本人もそのつもりですので跡を継いでもらえることはうれしい限りです。娘が立派にお店を継いでくれることを大いに期待しています。近い将来の夢は親子で皆さんに喜んでいただける新しいお菓子を作っていくことです。地味でしょうか(笑)
【木】楽しみですね。ではお友達をご紹介下さい。
【中村】北町櫻会で会長をされている上野公広さんをご紹介します。
【木】ありがとうございます。これからも益々のご繁盛をお祈りいたします。
(中村さんは和菓子一筋三十年だそうで、高校を卒業後、製菓学校で専門的な知識を学び、当たり前のように家業を継いだそうです。現在も明るい店作りをされ、ご家族揃って伝統を守っている和菓子店でした。お彼岸やお盆などは定休日に関係なく営業していることも多いそうです。)