山々の木々が色づいて、行楽のシーズン、そして、芸術の秋到来といった今日この頃です。今回の友達の輪には、幸手市東にお住まいで公務員をされているのですが、絵に版画に陶芸と、この季節ぴったりの方にご登場いただきます。
アトリエ瀬田
瀬田 叔孝さん
本紙取材 高木康夫
【高木】幸手高校で開催されている陶芸教室の海老原武先生から、多彩な趣味の持ち主と紹介をいただきました。瀬田さんは陶芸ばかりでなく絵の方も個展を開かれる腕前と伺いましたが?
【瀬田(敬称略)】多彩な趣味の持ち主という訳ではないのですが、絵を35年ほど描いており、その延長線上で版画や書道、てん刻、そして海老原先生に指導いただいている陶芸などをやっております。
【高木】絵を描き始めたきっかけは?
【瀬田】幼い頃から絵を描くことは好きでした。でも、図画の成績はよくありませんでした。なんていっても五点法で一でしたから。(笑い)小学校のとき、よく、先生がりんごやみかん、バナナなど果物の絵を描かせるのですが、私はいつもりんごやバナナを食べてしまい、残った芯や皮だけの絵を描いていました。自分では「うまい」ということを味わってそれを描いたつもりなんですが、先生にとってはとんでもない子供だったのでしょうね。(笑い)
【高木】りんごの芯や皮だけの絵のほうが、難しいですよね。
【瀬田】そうですね。おかげで絵の勉強が進んだのでしょう。中2の時でしたが、学校で写生会があり、みんなで風景を描きに外へ行ったのです。ほとんどの生徒は絵の具をたくさん持って行きましたが、私は黒の絵の具1本しか持っていかずに、筑波山の山並みを描きました。ちょうど、水墨画のような作品が出来あがり、この作品を当時の美術の先生が評価してくれたんですね。ですから、美術の成績が良くなったのはこの頃からです。(笑い)
【高木】先生の見る目というものが、才能を引き出したんですね。
【瀬田】そうかもしれません。美術仲間で訓練と称し、みんなで電車に乗り、車窓から過ぎ行く景色を一瞬のうちに描くなんてことをやったりしました。それくらい絵というものは一瞬の勝負なんです。絵には描いている瞬間の気持ちが封じ込められるのです。
【高木】アトリエで指導もされてるとか。
【瀬田】高校時代の美術部部長が某市役所に勤めていて、市役所にある美術部の指導をしてくれないかと持ち掛けられ、顧問をしていたことがあります。でも、行ってみると50人位部員がいるのですが「飲みに行くこと」が目的のような美術部で、絵の道具を持ってこない人がいるのです。そこで、そういう人には早速辞めてもらい、絵の本当に好きな人だけの美術部にしました。絵は心が大切ですから、若い人には感性を養う為に本を読みなさいと言い、くだらない週刊誌を読んだり、ゴミなど散らかしたら破門と言ってあります。なにしろ、ボランテイアで教えていますから。(笑い)自宅のアトリエにもいつのまにか絵の好きな人達が出入りするようになり、いつのまにか絵を教えていたという感じです。
【高木】子供さんたちも絵を?
【瀬田】二人の子供たちはそれぞれ好きなことをやっていますね。(傍でお茶をさしてくれている奥様が)「アトリエがあるのですが、子供たちが小さい時は立ち入り禁止にしていました。舞台美術家の浅倉摂さんの話を聞くと、幼い頃から父親のアトリエに自由に出入りし、自然と絵の環境が出来たという事です。我が家は主人の立ち入り禁止が子供たちに絵への興味を持たせなかったのかも知れませんね。長男は今、高2ですが、主人の影響でしょうか剣道をやっています。」
【瀬田】絵はあまり教えませんが、書道等は教えましたね。でも、子供たちにはどうしても泣くまで教えちゃうのですよ(笑い)
【高木】剣道ですか。
【瀬田】剣道はかなりやりました。今は体を壊してしまいやっていません。ですから、剣道は梯子段です。(笑い)時間の限りもあるので絵中心の生活です。描こうとするものの取材や研究なんかで時間もとられます。凝り性ではないのですが景色を描くのに木々の勉強の為に、盆栽をはじめた事もあります。そして、それだけではなかなか身につかないだろうと日本盆栽協会に入会して情報をもとめました。おかげで、山々を描くときに生えている樹木の種類がわかり、景観をより正確に表現出来るようになりました。職場の旅行や出張にも必ず絵の道具は持って行きます。
【高木】素敵な生活ですね。
【瀬田】多くの人達に絵の素晴らしさを感じて欲しいですね。最近はパッと絵をみて「良いとか、悪いとか」評価する人達もいますが、じっくり眺めて欲しいものです。飽きのこない絵というものは、素晴らしい絵ですよ。私も本格的に描いて35年になります。これを記念して来年の3月9日から15日まで銀座の文芸春秋画廊にて個展を開きます。現在、準備に追われてますが、4、50点の作品を展示するつもりです。たくさんの方に見に来ていただきたいと思います。
【高木】作品は絵だけですか?
【瀬田】絵が中心ですが、今、やっている陶芸で創った花器などに花を生けて画廊を飾りたいと考えています。自分の夢ですが、ただの絵描きで終わりたくないと思っています。自分の可能性をいろいろな作品を通じて表現してみたいのです。芸術家なんていうとおこがましいですが、我流であれ人がやらないものを自分流でやってみたいのです。
【高木】創造性の追求ですね。
【瀬田】私の先輩が絵を通じた情操教育に関わっており、お年寄りの痴呆症に音楽や絵などを用いています。音楽や絵といった芸術はその創造性が人の心を育てる効果があり、これからの時代の子供たちには、今まで以上の情操教育が必要と思っています。幸手市はスポーツはとても盛んですが、芸術や文化といった部分では他地域より立ち後れているような気がします。この場で言うことでもないでしょうが、教育関係者の方々には芸術的な部分での強化を期待したいですね。
【高木】そうですね。それではお友達をご紹介ください。
【瀬田】中学までの同級生で、幸手市中に住んでいる岡安孝さんを紹介します。岡安さんは盆栽を始めたときに再び一緒になり、現在、オモトのコレクターとして活躍しています。
【高木】ありがとうございました。個展が成功するといいですね。
(瀬田さんのアトリエには百号の絵を始め個展のための作品がところ狭しと飾ってあり、まもなくキャンバスに移されるだろう、あけびやからす瓜が素材として置かれておりました。きっと、素晴らしい個展が開かれるでしょう。)