1997年10月19日



文化の日を明日に控え、週末からの三連休を楽しまれている方も多いことかと思います。また、七五三でお宮参りのお子さん達を見かける季節でもあり、一年の早さを実感するころにもなってまいりました。本日の友達の輪には、来春、絵の個展を開かれる瀬田叔孝さんよりご紹介いただきました、おもとのコレクターである幸手市中にお住まいの岡安さんにご登場いただきます。

(社)日本おもと協会
坂東支部理事 岡安孝さん
本紙取材 高木康夫

【高木】瀬田さんから、通勤帰りの電車で再会し、趣味仲間の岡安さんをご紹介いただきました。岡安さんはおもとのコレクターだそうで、数十万円もする高価なものまでお持ちと伺いましたが?「おもと」というのはどんな植物なのですか?

おもとは万年青と書き
      図や芸を楽しむ縁起物

【岡安(敬称略)】おもとという植物は葉がいつでも青々としているので漢字で書くと万年青と書くのですが、大別すると大葉と小葉という二種類に分けられます。青々とした葉の中に「図」というのですが、緑や斑点などの柄が入ったものを楽しむ観賞用の植物です。大葉は主に図を楽しみ、小葉は葉がねじれたり、ひげのようだったり、芸があるので芸葉と言い、図と共に楽しみます。大葉は高いもので一鉢百八十万円くらい、小葉は三百万円位するものもあります。

【高木】そんなに高価なのですか。玄関先に植えてあるお宅も見かけたことがありますが。

【岡安】おもとというのは引越や開店祝いの縁起物として昔から重宝されていました。徳川家康が江戸城に入ったときにおもとを持ってきたのがその由来だそうですが、このおもとは図がない「都城」という種類で、コレクターの対象のものではありません。

【高木】岡安さんはいつからおもとをやっているのですか。

わび、さびで二十年
      春の芽吹きが待ちきれない

【岡安】いまから二十年前、東京駅の大丸におもと売場があり、そこで初めて見たのです。そのときは、「こういう植物があるんだな」という程度で、一鉢買ったのがきっかけですね。植木のさつき等もやっていましたが、花が咲いてとても綺麗なんですが、見ていると飽きてしまうんですね。おもとの場合は、葉に芸があり、わび、さびのようなものを感じるのです。それ以来、おもとの魅力に惹かれているわけです。

【高木】おもとの魅力とは。

【岡安】おもとは年に一度だけ芽吹きをするのです。この芽吹きは、春ですが、青々とした葉の中にどんな図が入ってくるかがとても楽しみなのです。芽吹きではだいたい四枚の葉が出てきますが、大葉の場合、真っ青な葉が出てきたらそのおもとの評価は無くなってしまいます。おもとは葉の突然変異で図が入るのですが、いままで綺麗な図を出していたものであても、突然、図のないものになってしまうこともあるのです。一度、図がない真っ青な葉が出てると、二度と図が入ることはないのです。逆に図が小さくても、ほんのわずか残っていれば、翌春には見事な図が出ることもあります。図や芸葉を競う品評会も全国規模でありますので、おもとをやっている人にとっては春の芽吹きが一番の楽しみです。

育てるこつは自然の恵み
      太陽と水と空気と

【高木】手入れも大変ですね。

【岡安】冬は休眠していますので水は少な目にし、三月から五月一杯は水を切らせません。根が首元から出てきますので、人間で言えば首にマフラーを巻くように、ミズゴケで首元を巻いていやり、水分を適度な状態にしてあげるのです。あとは夏場の太陽光線に注意をすれば、そんなに大変なものではありません。また、根が呼吸していますので砂利のような土壌を好み、放置しておくと砂利の中にガスが溜まり良くないのです。ですから、鉢の上から水を注いだり、バケツに張った水の中に鉢を首元まで沈め、引き上げながらガスを抜き新鮮な空気を入れるのです。会社に行く前に水をやり、帰ってきたら葉の色を見るという生活ですね。

【高木】子供のようですね。何鉢くらいあるのですか。

増やして育てて
        高額なものへ物々交換

【岡安】大葉が二十鉢位で、小葉は八十鉢位あります。趣味の範囲ですから、高額なものは買えませんが、業者から購入して、増やして業者に買い取ってもらったり、物々交換や差額を現金で取ったりという方法で自分の鉢を増やして楽しむんです。

【高木】増やしたりするのですか?

【岡安】願いにもになっており、育ったイモを切ってミズゴケで包み新しい芽を増やす方法と、おもと自身から出てきた子株が根を出したら子株が親離れさせる方法があります。おもとには系統がありますので、図の良い系統から株を増やしたりします。増やしたものは、おもとの専門業社に買い取ってもらいます。業者はそれを小売りしたり卸したりします。高額な商品もあり、トラブルの元になりますので直接アマチュアの方にはお譲りりはしていません。これからはじめようと思っている方は、大衆品と呼ばれている一鉢三千円から五千円くらいのものを手掛けて、作り方をおぼえたらいいかと思います。おもとに関しての質問などは、埼玉三光園(電話0480・769・3510)という専門業者に聞くと良いと思います。ちょうど、社会法人日本おもと協会東坂支部で第五回坂東おもと名作風展が十一月十五日に川口市安行にある川口緑化センター樹里安で開かれます。素晴らしい作品が展示されますのでご覧に来ていただきたいと思います。

全国規模の展覧会で
      いつの日か一番に

【高木】岡安さんの夢は!

【岡安】毎年行われるコンクールに出品するのですが、過去、出品した中で特別最優等という一般的に言えば金メダルを坂東支部の大場部門でいただいたことがあります。小葉部門では最優等(銀メダル)どまりですが、社団法人日本おもと協会では全国規模の展覧会もあるのです。今年は広島で十月二十二日、二十三日に開催されますが、いつの日か、この全国大会で特別最優等をとりたいというのが私の夢です。ですから、春の芽吹きが待ち遠しいのです。(笑い)

【高木】ありがとうございました。それでは、お友達をご紹介下さい。

【岡安】友達ですが、忙しいようで連絡がとれていません。本人の確認をしないと、と思いますのでお待ち下さい。

【高木】そうですか。お楽しみにということですね。本日は高価な鉢物をたくさん見せていただいき大変勉強になり、ありがとうございました。日本一のおもとが育つようがんばって下さい。

【敷地内にはおもと栽培の温室的建物がふたつあり、三河の楽焼きの錦鉢と呼ばれる三本足の綺麗な鉢うに植えられた高価なおもとがならべられていました。お邪魔するまで、おもと「万年青」ってなんだろうと思っていましたが、特に小葉の芸葉には深いものを感じました。】

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