1997年11月30日



 明日からはいよいよ師走、今年ももうすぐ一年の締めくくりを迎えることになりますが、昨年1月1日からスタートしました友達の輪も記念すべき50人目の登場を数えることとなりました。今回の友達の輪には自然をこよなく愛する渡辺清さんよりご紹介いただきました幸手市北にお住まいの高橋千代子さんをお迎え致します。

日本美術家協会会員
二紀会同人
埼玉美術家協会会員委嘱
アーテイスト
高橋千代子さん
本紙取材 高木 康夫

【高木】渡辺さんから芸術を通じて自然を見るのが楽しい方とご紹介いただきました。

【高橋】私は絵や彫塑をしてますので、景色や風景をよく観察します。渡辺さんも同様に自然が好きと言うことでご紹介いただいたものと思います。ご紹介いただき光栄です。

【高木】高橋さんは絵画や彫塑などでご活躍と伺っておりますが。いつ頃から始められたのですか?

四世代の大家族
   感性豊かな幼少期

【高橋】いろいろな方に聞かれるのですが、親達に言わせると、幼いころから体を動かすより地面に向かって何かを描いていた子供だったそうです。私たちの幼い頃は、家の周りでおじいちゃんやおばあちゃんと遊び、特に我が家では四世代の大家族でしたから家族の一人一人が良い意味で影響を与えてくれて、ひいおじいちゃんには墨汁を塗った黒板を作ってもらい、それに絵を描いていたようです。小学校3、4年生の頃ですが、目のクリっとした少女を描く内藤ルネという作家の塗り絵が流行り、学校で友達にその原画を描いてと頼まれて、宿題もやらずに随分描いた思い出があります。(笑い)

【高木】本格的には?

絵は平面、彫塑は立体
   造形を楽しむ満足感

【高橋】中学校の時に、現在も活躍されている長塚先生に出会い、絵への関心を高めたのかなと思いますが、本格的には高校の美術部に入って油絵を始めた頃です。最近、絵を描いてきた苦労話をして欲しいと講演の依頼を受けたのですが、私は、絵や彫塑をやっていて苦労とはぜんぜん思わないのです。好きなことをやる以上、苦悩はつきもの、作品の成果は別として、出来上がった後には満足感がありますし、何より造形を楽しむ事が出来るのです。絵というものは平面で色があり、彫塑は立体で色がないですよね。私たちの作品はテーマを自分の中で消化して、そのテーマをどういうふうに絵や彫塑に織り込むか練るのです。絵ばかり描いていてつまったら、気分転換に彫塑に入ったり、その逆だったりします。かえって、切り替えをした時の方が楽しさも発想も豊かになるような気がします。

【高木】幸手中学の校門正面に「希望」の像を創られましたね。

力強さより穏やかさ
   未見の夢と希望を

【高橋】幸手中学校創立50周年の記念に依頼されて製作したものです。幸手中学校には不思議と縁があり、私も子供たちも卒業した所ですが、初代校長の高橋勝先生は私の伯父さんです。そんな事もあり、校是の「全力は美なり」や校歌、校風などを頭に入れ製作に掛かりました。校是や校歌を見聞きしていると、力強さや男の子が運動するイメージが強かったのですが、私のテーマには「これからの時代はがんばろうだけではないよ。夢を持って楽しんで、穏やかに生きていこうよ。」という気持ちがありました。そこで、少女の胸に鳩を持たせた像になったのです。鳩を飛ばさなかったのも、未来の夢と希望を持ちつづけて欲しいという思いを伝えたかったのです。でも、見ていただく方には、見る側の気分で見ていただいて良いのですよ。よく、どの絵が良いのかという質問もされるのですが、私は「たくさんの絵がある中で、一点あなたにあげると言ったら何をとる」と答えるのです。「それが見る側で感じた良い作品ですよ」と話しています。

展覧会前は大忙し
   気に入れば譲ります!

【高木】どの位アトリエで過ごしているのですか?

【高橋】最近もギャラリーからの依頼で「春日部女流十人展」という展覧会に作品を出品しました。12月には同じく春日部で「画友会」という展覧会も開催します。展覧会が控えていたりすると朝から深夜までほとんどアトリエに入りっぱなしです。今は落ち着きましたが、平均すると毎日3〜4時間位ですね。家事もありますので、そんなに時間はとれませんが、絵の教室も開いていますので、含めればもっと長い時間になります。

【高木】作品はお譲りになるのですか?

【高橋】ご希望があればお譲りしています。個展やギャラリーの企画展等では販売しますが、価格があって無いようなものなので、公募展等の入選、受賞歴などを価格設定の目安にしています。ただ、制作にはこれまでの積み重ねと、制作にかかる日数、経費がかかります。たとえば、立体である彫塑はたくさんの面で成り立っていますよね。それぞれの面の動きや表情が実物でないとつかみきれないのです。それで、プロのモデルなどを頼みますと高いモデル料がかかります。なにしろ、全部脱いでもらうこともありますし、形を掴むのに触らせてもらうこともあります。(笑い)

【高木】子どもさんは。夢などは!

子供たちも一緒に
芸術文化の香る地域に

【高橋】子供たちも絵やデッサンは好きなようですが、最近は大学3年の息子が力を必要とする彫塑の形取りを手伝ってくれ、私のやっていることに興味を持っているようです。親子で出来たらとも思っていますが。それと、自分の住んでいる地域にもっと絵や彫刻などの芸術がたくさんあったらいいなと思いますね。幸手市役所には彫刻がいくつかありますが、まだまだ、少ない地域だと思います。出来ればいいものを置いて欲しいですね。いいものを見ることによって若い世代に芸術的文化が育つと思います。

【高木】それでは、お友達をご紹介いただけますか?

【高橋】素晴らしいお手本となる大先輩の杉田里子先生をご紹介させていただきます。杉田先生は、現在幸手市で「短歌」の会を主宰され、その関係で「幸手市文化団体連合会」(通称・文連)の副会長をされております。私も絵画指導部理事という立場で会議や文連の行事でお会いするのですが、あたたかなやさしいお人柄の大先輩です。

【高木】ありがとうございました。これからも、すばらしい作品を製作され、出来れば市内各所にその作品を残していただきたいと思います。

(取材当日、絵の教室に生徒さんが来られ高橋さんとアトリエ2階の部屋で紅葉の写真を観ながら感性豊かに話されていた光景がとても印象的でした)

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