1998年3月22日



 花粉症に悩まされてる方には厳しい季節がやってまいりましたが、各地で花便りが聞かれ春もそこまでやって来ています。今回の友達の輪には境クリニック院長の中島勝廣さんよりご紹介いただきました読書会を永年にわたり開かれている宇賀神時子さんにお話を伺って参りました。

木揺会(読書会)
宇賀神 時子さん
本紙取材 高木 康夫

【高木】こんにちは。中島さんより触発して頂いた方のひとりとしてご紹介いただきました。

【宇賀神(敬称略)】触発されたとのことですが、私のほうこそ中島さんに教えていただいたことが多いのですよ。中島さんとの出会いは、父の実家が幸手の権現堂新田というところで、私は小学3年生から中学3年生までそこに疎開し、権現堂川小学校に通っていました。その時、用務員さんをされていた中島かっちゃんのおばあちゃんと知り合い、おむつをしている幼かったかっちゃんに出会ったんです。ですから、かっちゃんの遊び相手になったり、世話もした覚えがあります。疎開後は都内へ戻り、結婚して暮らしていたのですが、縁があり幸手に住まいを購入し、引越してきたのです。当時を振り返ると、かっちゃんが就職したり、予備校に通ったり、医大生だったりと、幸手に帰ってくると必ず私の家に立ち寄ってくれいろいろな話をしたものです。また、学生だった中島かっちゃんを始め多くの青年達が読書を通じて我が家に出入りをしており、「あすなろ文庫」という私設文庫を作って本を読んでいましたので学生達の溜まり場になっていました。

ダッコちゃんの
     図書館通い

【高木】小さい頃から本が好きだったのですか。

【宇賀神】本との関わりはかっちゃんの影響かも知れませんね。私は子供の頃は文学少女ではなく、どちらかというと体を動かすことが大好きな女の子でした。日に焼けて色が黒く活発だったんでしょうね、ダッコちゃんとアダナされていました。(笑い)けっして本などを読むタイプの女の子ではなく、体育会系でソフトボールに夢中でした。学生時代に読んだ本の記憶はイプセンの「人形の家」ぐらいでした。私がPTAをやっていた頃、かっちゃんが遊びに来ていて「話題がなく困ったわ」と話したら、読書を奨められたのです。時間もあったものですから、幸手小学校の裏門に当時あった木造の図書館に通い始めたのです。

【高木】そうでしたか。

今年で30周年
   読んだ本は1200冊

【宇賀神】図書館通いが頻繁だったのでしょうか、関口さんという図書館の方が1冊の本をみんなで読んで感想を述べ合う読書会を作ったらと声を掛けてくれたのです。そして、図書館で出会った方など7人で読書会が誕生しました。でも、当時の幸手の図書館には同じ本が7冊もないものですから、県立図書館から7冊の同じ本を取り寄せてもらいみんなで読みました。5月の新緑がゆれる季節に発足したので木揺会と名づけられました。後になって、読んだ本が増えるのも楽しみだねということで、自分で購入するようになりましたが、若い頃は知力も体力もありましたから、同じ作家の本を月に4冊以上も読んでしまうことがざらでしたよ。一年に40冊読む計算で1200冊の本を読んだことになります。読書会も一時は20名くらいに増えた時期もありましたが、現在10名で、最初からご一緒の人は3人います。今年30周年を迎えるので、南紀の方に歴史を訪ねながら旅をしようと計画しています。

【高木】30年ですか。本にはまったという感じですか?

本を読めばいつも発見
     子育てに本は最高!

【宇賀神】そうですね。どんどん本に入って行った感じですね。とにかく本を読めば発見があり、感動があり、ずーっと読んできたことは私の財産ですね。私には娘と息子が一人づついますが、子育てに本はとても役にたちました。今、娘は結婚して子育てに一生懸命ですが、その娘が「おかあさんの後ろ姿は本を読んでいる姿しか印象にない」と言っています。娘や息子へのプレゼントも本にずいぶん託しましたね。「勉強はしなかったけど、本を読んだおかげで大学まで行けたのかな」と娘は言いますよ。息子が反抗期の時でしたね。下村湖人の「次郎物語・少年版」をプレゼントしたのです。1ヶ月くらいしたら、息子がとてもやさしくなりました。たぶん次郎物語に心が打たれての心変わりと思います。ですから、私の子育てには本が果たした役割がとても大きいのです。

【高木】なるほど。本を通して感情を伝えることも出来ますね。

人生には損得しかない
     どうせなら得な人生を

【宇賀神】本の素晴らしいことは、経験してないことや見ていないことも、本を通じて体験したり、覗いたり出来るということです。人生は厳しいもの、損な人生か、得な人生しかありません。どうせなら得な人生を歩みたいと思うのが当然でしょう。本にはそんな得をする体験がたくさんあるような気がします。良書を読んでいる子供たちに非行はありませんし、やさしい本を読むとそのやさしさが自分に振り返ってきます。一昨年木揺会とは別に男性を交えた「好文会」なる読書会を発足させました。メンバーの男性の方々はほとんどの方が定年を迎えた方々で、サラリーマン時代にはキャリアを積んだエリートの方達なんです。好文会では外国文学をおもに読みます。そこで、トルストイやドストエフスキーなどを読むのですが、昔も読んでいるのですが、その時は感じ得なかった深層心理が年令を重ねた今、深く伝わって来るのです。またまた、本への新しい発見なんです。自分の人生があるから作品が良く伝わり、本を通じて人生経験を積むことが出来る、まさに、読書冥利につきる醍醐味です。そしてなによりも価値観が同じという読書を通じての友人が出来たことも私の人生の財産です。

【高木】素晴らしいことですね。ではお友達をご紹介下さい。

【宇賀神】「あすなろ文庫」として青年達が出入りして、我が家が溜まり場になっていた時代がありましたが、その時の青年の一人で現在幸手東幼稚園副園長をしている印田博秀さんを紹介します。彼は各方面で活躍していますよ。

【高木】ありがとうございました。これからも多くの本を通じて地域に文化と感性を伝えて頂きたいと思います。

(学生時代のダッコちゃんはお花が好きで華道部にも所属し、今でも生け花教室を開き、生徒さん達とお茶を飲んで楽しくコミュニケーションしているそうです。なによりも人間が大好きな宇賀神さんでした。)

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