1998年5月17日



 日光では千人行列で海外にも知られた東照宮春季例大祭が今日と明日開かれ、この季節全国各地ではいろいろなお祭りが開催されます。幸手にも古くから伝わるお祭りや郷土芸能がありますが、今日の友達の輪にはいずみの会・会長の増田辰夫さんから紹介いただいた「大杉ばやし」という郷土芸能保存会の会長を務められている幸手市高須賀にお住まいの田中義勇さんに登場願います。

大杉ばやし保存会
会長 田中 義勇さん
本紙取材 高木 康夫

【高木】こんにちは。増田さんからいずみの会でお世話になっている方と伺ってまいりました。

【田中(敬称略)】増田さんとは「いずみの会」でアルミ缶回収を通じてボランテイア活動をご一緒させていただいており、日頃からたいへんお世話になっております。

【高木】大杉ばやしの保存会をされているとか?

利根川流域に大杉神社
    父が笛を吹いて60年

【田中】大杉ばやし」というのは江戸城の鬼門にあたる潮来の先の茨城県桜川村にある大杉神社が発祥の地で、もともとはそこのお神輿を主体としたお囃子なのです。かって利根川流域には多くの大杉神社が存在し、幸手の高須賀に続く大杉ばやしもその神社の名残としてこの地に伝承されたものです。幸手の市街地には旧地名で大杉町というところがありますが、おそらくこの神社に由来する地名と思います。高須賀の大杉ばやしというのは、「笛」が主体のおはやしで、その「笛」に合いの手を入れるように「大太鼓」が入り、「大太鼓」の合いの手に「小太鼓」が入り、「小太鼓」の合いの手に「すりがね」という鐘が入ります。ですから、笛がとても重要な役割をしており、その笛を父が60年間も吹いておりました。父も後継者育成を考えておりましたが、いつのまにか年を重ねており、子供の頃から見ておりました私は、音符がないので口伝えでしか伝承できないことを知っておりましたので、父が元気なうちに伝承できるようにしなければと思い立ったのです。

【高木】それで保存会ができたのですね。

【田中】笛は横笛ですが、音を出すことだけでも本当にたいへんなことで、父は保存会が出来た2年後に亡くなりましたが、あと一年遅かったら大杉ばやしの伝承は難しかったものと思います。18年が経ち、おかげさまで平均年齢50才ですが、現在18名が保存会を守っております。

【高木】今後は保存会としても後継者育成が重要ですね。

行幸小学校で
   郷土芸能クラブ

【田中】そうですね。3年前のことですが、当時の行幸小学校佐藤校長先生から「子どもの情操教育のひとつに郷土芸能を指導したいので協力してくれないだろうか」と声を掛けられました。この地域には偶然にもたくさんの郷土芸能があるのですね。松石のささら獅子舞、下千塚のささら獅子舞、下川崎の石投げ踊り、そして大杉ばやしです。そこで、小学校の子どもたちには大杉ばやしがいいだろうということで、毎週木曜日の授業後に郷土芸能クラブとして小学校の4,5,6年生の希望者を対象に新学期から指導が始まりました。子どもたちというのは吸収力が高いのですね。最初はピーともスーとも鳴らなかった横笛が半年で演奏できるようになりました。でも得意苦手はそれぞれにあるもので、いつもは大勢で練習しているのですが、個々のレベルを把握しようと思い、ある日一人づつ吹かせてみたのです。そしたら、「できない!」と言って泣き出した4年生の子どもがいたのです。でも、この子も3月には立派に吹けるようになって中学生になりました。今でも会うと元気いっぱいに挨拶してくれます。「努力すれば何でも出来るようになるのだ」と感じてくれたようで、とてもうれしく思います。

【高木】毎週学校へ行って指導しているのですか?

夢を広げる
   大杉ばやし

【田中】クラブといっても週1回で年間27〜28回位行います。私は教師ではありませんし、ただのボランテイアですが、子どもたちが大杉ばやしに参加したり、郷土芸能発表会に参加したり、とっても活き活きとしてくるのです。何か、先生の喜びを体験させて頂いているようで、自分自身も子どもたちと一緒に生涯学習しているのかなと思います。学校も祭半纏を作ってくれ、太鼓がなかったのですが太鼓も用意して頂き、敬老会にも笛や太鼓を見せて、地域のお年寄りにも喜んで頂きました。小学校を卒業する時に「郷土芸能クラブの先生へ」といった子どもたちの作文をいただきましたが、一人一人からの暖かい感謝の言葉には胸に熱いものを感じましたし、毎週教えていて良かったなと思いました。

【高木】たくさんの人たちが大杉ばやしに触れているのですね。これからの夢などは?

【田中】大杉ばやしには「大杉ばやし」と「乱ればやし」という2曲あるのですが、なんとかもう1曲増やしたいと思っています。他の地域の大杉ばやしがありますので、その曲を受け継ぎたいと思っています。桜川村大杉神社のお囃子は後継者が育たなくて、消滅してしまったそうです。

【高木】趣味などは?

生涯学習を
   夫婦で実践

【田中】社交ダンスを10年ほど行っています。実はこれにはエピソードがありまして、妻の代理で、北公民館で行われるダンス教室の申し込みに行ったのです。ところが、「女性は定員に達したけど、男性が2、3人足らないので田中さん参加してくれないか」と言われましてね。結局、私が入ることになったのです。(笑い)それと、グランドゴルフとペン習字も習っています。グランドゴルフは個人プレーですのでゲートボールのように団体プレーで自分の技術に気を使わなくていいのです。また、ペン習字は祝儀、不祝儀の時、筆を使う事が多いのですが、せめて人並みに書きたいという願望が強く、習うことにしたのです。また、夫婦で市民大学に参加して、生涯学習を実践しています。

【高木】すばらしいことですね。では、お友達をご紹介ください。

【田中】習字の指導を受けている印田 衛さんを紹介いたします。印田さんは生涯学習の指導者として活躍されております。

【高木】ありがとうございました。これからも、大杉ばやしを通じて地域のまとめ役として、ご活躍下さい。

(とってもお忙しい日程を遣り繰りされておられ、カレンダーに予定が入っていた方が「はりあい」があって良いとおっしゃるとても元気な方でした。)

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