1998年8月9日



 長崎原爆記念日の今日、甲子園では高校球児が白球を追い、各地では夏祭が開かれ、いよいよ夏も折り返し地点を回ったような今日この頃です。本日の友達の輪には五霞町国民健康保険診療所所長 芝田 佳三さんから紹介頂いた、おまかせ料理のお店「寿泉」オーナー飯泉国男さんに登場願います。

寿泉
ご主人 飯泉 国男さん
本紙取材 高木 康夫

【高木】芝田さんからおいしいお店のオーナーと伺ってまいりました。

【飯泉(敬称略)】芝田さんはお店に来られたお客さんとして出会った方ですが、今では家族ぐるみでお付き合いさせて頂いている方です。このようなコーナーに紹介されて戸惑っております。(笑い)

【高木】いつごろ開業されたのですか?

【飯泉】私は幸手で生れて幸手で育ったのですが、私たちの成長期は腹一杯食べられる時代ではなく、腹一杯食べられることがこの仕事に入った動機なんです。(笑い)栗橋町のうなぎ屋さんで4年間務めたのを皮切りに、鬼怒川や川治といった温泉地の旅館で板前として6年間働きました。そんな時、板場仲間で焼津から来ていた友人が「船に乗って3年も働けば店が持てるよ」と話をしてくれたのです。船の調理場を預かる仕事ですから、板場の仕事と変わりませんし、何よりも収入に魅力を感じて友人のつてで船に乗る事が出来たのです。

出航したら
  満杯になるまで帰らない!

【高木】どんな船に乗ったのですか?

【飯泉】遠洋漁業船です。主に黒マグロ、キハダマグロ、メバチマグロが中心で日本を出航してから船がマグロでいっぱいになるまで帰らないのです。240tの水揚げですから、マグロの本数で三千〜四千本になります。もちろん、ずっと海の上ではありませんよ。水や食料、餌となるイカや燃料などを補給しますので途中で寄港します。でも、短くても300日間は行きっぱなしの生活ですね。ですから、給料を使うところがありませんのでお金は貯まる一方なんですね。3年も乗ればお店が持てるというのは本当の話で、私は5年も乗っていました。(笑い)

タイタニック号が
    沈んだところ

【高木】漁場はどの辺なんですか?

【飯泉】カナダのニューファングランド島付近のグランドバンクという所で操業します。世界の三大漁場でタイタニック号が沈んでいる近くです。また、ニューヨーク沖でも操業しますが、ここのメバチマグロは肉質が良くて高値で取り引きされるのです。17、18年前でkg当り6000円の船卸価格でした。200kgもあれば120万円ですよ。もっとも、獲れない日もありますからね。なんといっても船の1日の経費は80万円もかかりますから。

【高木】獲ったマグロは食べたりするのですか。

【飯泉】会社の方針で獲った魚は食べてはいけないのです。寄港地で積み込んだ肉類などが主で、たまにサメにやられたマグロが揚がれば、それを食べたりはしますね。でも、獲れたては肉質が硬く、また、血抜きされていませんので匂いが強く生で食べるにはお勧めできませんね。生で食べる場合には氷水である程度の時間、さらしてから食べます。

船員手帳で
  どこでも行ける

【高木】世界各国を回ったのでしょうね。

【飯泉】船乗りには船員手帳という身分証明があるのです。この船員手帳は自分が出航した港の自治体が発行するもので、私の場合は焼津市役所発行のものでした。そして、船員手帳ひとつで共産圏でもどこでも港があれば行けるのです。もちろん、港から内地への侵入距離制限はあります。ただ、許可をもらえば、空港から飛行機で日本へ帰ったりする事も出来るのです。船乗りにとっては港が自分の街で、船員手帳はパスポートなんです。今でも記念に船員手帳を持っていますよ。

良い事が
  湧き出る店名

【高木】そして、お店を持ったのですね。寿泉という名前は?

【飯泉】16年前ですが、東1丁目で開店して、11年前に幸手病院の西側で現在のお店を開店しました。寿泉の名は当時の成田山で3番目に偉いお坊さんにつけて頂いた名前で、白泉、光泉、寿泉という3つの中から自分が書いてみて形になる寿泉を選んだものです。意味は「お祭りなどの良い事が涌くように」という事だそうで、おかげさまで大変気に入っております。開業したときから、幸手でやっていない料理を出したいと思っており、おまかせ料理としてお客様に喜ばれています。今の季節ですと冬瓜やナスを使った料理や旬のカツオでしょうね。また、秋から春にかけて、エビイモという里芋の種類のイモ料理が当店では好評ですよ。自分としては、お客の立場で「人に教えたくないお店」というのを目指しており、定休日は火曜日で、昼は12時〜午後2時まで、夕方は5時〜9時半の営業をしています。ご家族連れや女性のお客様が6〜7割と多く、家内とお手伝いの方で営業しています。

夢は
リフレッシュ休暇

【高木】趣味や夢などは!

【飯泉】海釣りが好きで、かれこれ30年になるかと思います。千葉の大原や茨城の大洗で底の魚である平目や鯛を狙っています。今の季節ではイサキやアジですね。釣りの楽しみは釣果があると天狗になれることなんです。釣れたあかつきには仲間に電話をして、自慢話で天狗になるのですよ。(笑い)北海道沖でハエナワでマグロを釣ったこともありますよ。夢のひとつですがモロコやクエと呼ばれる大物の魚を一度釣ってみたいと思っています。その他の夢はリフレッシュ休暇です。無理な話ですが1ヶ月くらい休んでみたいと思っています。勉強の為に毎年9月に一週間くらい休んで各地の旅館の料理を食べ歩くのですが、これから年を重ねる度に身体がいうことをきかなくなりますので、料理にこだわる上にも、こういう時間が大切と感じています。それと、友人の子どもが高校1年なんですが、彼を板前にさせようと密かに考えています。旅館に預けて一人前の板前を育てる事をやってみたいというのが夢なんですが、一人よがりの夢で終わりそうですね。(笑い)

【高木】バラエテイあふれた夢ですね。では、お友達をご紹介下さい。

【飯泉】東5丁目で茶道や大正琴をされている小林千代子さんを紹介します。

【高木】ありがとうございました。おまかせ料理とこだわりのお店で寿泉ファンをこれからも楽しませて下さい。

(ご夫婦でお店を経営され、旬の食材を巧みに使って季節感あふれるおまかせ料理を提供するオーナーのこだわりは、まさに、人に教えたくないお店のコンセプトそのものでした。)

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