春一番も吹き、桜のつぼみも大きくなって、いよいよ春の到来です。今日の友達の輪にはエクステリアのお仕事をしている新井清さんからご紹介いただいた上高野にお住まいで結城つむぎを織っている手嶋ゆかりさんにご登場願います。
結城つむぎ工芸師
手嶋 ゆかりさん
本紙取材 高木 康夫
【高木】新井さんから「自分も詳しく聞いてみたいほうなのですが、幸手で結城つむぎを織っている友人」と紹介いただきました。結城つむぎの反物を織られているのですが?
【手嶋(敬称略)】新井さんはとてもマイペースな人ですね。私は四姉妹なんですが、新井さんは姉の友人でもあり飲み友達です。結城つむぎについてはあまり詳しく話した事がありませんが、この職業に就いてから今年の四月で丸七年が過ぎます。結城でも若い人の後継者不足が起きていますから、この辺ではめずらしい職業になるのでしょう。逆に言えば若い人たちが結城つむぎを学ぶにはチャンスかも知れませんよ。私で良かったら情報提供させて頂きます。
【高木】どうして結城つむぎを?
【手嶋】伝統の技とか昔ながらの職業みたいなものに憧れが強かったんです。もちろん、着物が好きで、特に柄やデザインなどに興味を持っていました。高校を卒業して普通にOLを一年半くらいしたのですが、「美しい着物」という本の中で、結城つむぎの特集が掲載されていたのに目をひかれました。早速、結城に一人で出掛けて、役場で見学させてくれる織本を紹介してもらったのです。そこには、伝統工芸士と呼ばれるおばあちゃんが地機(じばた)と呼ばれる機織り機を使って結城つむぎを織っていました。見せてもらっているうちに、おじいちゃんが「つむぎ、やりたいのか?」と声を掛けてくれ、返事をすると「それじゃ、明日から来い」と言ってくれました。私と、結城つむぎの出会いですね。両親には暗い仕事でお金になるのか?と反対されましたが、自分では「これだ」と決めていました。趣味も兼ねた仕事という感じですね。
【高木】それで、OLから転身したのですね。結城つむぎの特徴は?
【手嶋】つむぎには大島つむぎなどの有名なものも数多くありますが、結城つむぎはつむぎの糸自体に特徴があります。また、大きく仕事内容が分業されているのも特徴です。そのひとつが、「糸つむぎ」という職種です。つむぎの糸は繭をそのまま引っ張って綿状にした絹から糸をつむぎます。そして、その糸に柄をつける職種が「かすりしばり」と呼ばれます。かすりしばりは反物がデザインどおりに仕上がるように縦糸、横糸に柄をつけていく仕事です。一本の縦糸、一本の横糸に細かい柄が入っています。そして、私が担当しているのが「織り」です。柄のデザインどおりに、縦糸、横糸を合わせながら地機(じばた)と呼ばれる最も古く一番原始的な機織り機で織っていきます。
【高木】ずいぶん細かいお仕事ですね。一日にどれくらい織れるのですか?
【手嶋】柄が細かかったりと、一概には言えません。反物の長さが三十三尺で、一日およそ五寸織れますので、二日で一尺、つまり、一反織るのに二ヵ月半くらいかかります。非常に地味な仕事ですから、若い人たちが年々少なくなってきています。本場の結城でさえ地元の若い人はいません。私と同じように他県からの若い人が三、四人いる程度です。それと、私もそうでしたが見習いの時期はお金にならないので、他のアルバイトをしながら機織りの見習いをしていました。朝から午後三時くらいまで結城で教えてもらい、帰って来てからはアルバイト生活でしたね。食事が出る学校っていう感じでしたね。(笑い)
【高木】時間がかかるのですね。それだけ高価なものなんでしょうね。
【手嶋】つむぎの流通は柄のデザイナーである問屋がすべて買取りますが、私の織った作品の中には、飛柄(とびがら)と呼ばれ一尺の中に百六十の亀甲が入っている反物がありましたが、三百万円以上の価格になったそうです。もっとも、織賃は反物の値段から比べると本当に安いですが。(笑い)
【高木】なるほど。夢はなんですか?