1999年6月20日



梅雨に入り全国各地であやめ祭りが開催されています。日本という国は四季それぞれに景色が美しいものだと感じます。そして、あやめという花は本当に日本の風土に合う花のひとつとして、この季節に輝いています。今日の友達の輪には岸本家十代目の岸本規生さんからご紹介頂いた久喜市で日本民家再生リサイクル協会会員である株式会社和田工芸代表取締役和田勝利さんにお話を伺ってまいりました。和田さんは日本の風土と歴史に培った、日本古来の民家再生に情熱を注がれている方です。

株式会社和田工芸
代表取締役 和田勝利さん
本紙取材 高木 康夫

【高木】岸本さんより「和田さんは古い民家のリサイクルを行っているとともに、『かたろうかい』という異業種交流の会を作っており、人と人との出会いとビジネスチャンスを提供している方。」と伺いました。古い民家のリサイクルとは具体的にどんなものなのですか?

【和田(敬称略)】古くからある日本の民家を再生しようということです。百年以上経った家が壊されてゴミにされてしまうのはとてももったいないことで、現在の生活様式にあったように作り直して再生させています。全国規模の組織ですが、日本民家再生リサイクル協会というものがありまして、そこでは民家へのさまざまな思いを結び、再生リサイクルを推進しています。

人が住んでいれば
   百年以上もつ民家

【高木】百年以上も持つのですか?

【和田】人が住んでいれば百年〜二百年は充分もちます。現実にそういう民家ばかりを随分見てきました。特に古い民家は柱や梁などの材料に素晴らしいものが多く、現在では手に入らないようなものばかりです。民家を再生させることは、その材料を活かすことでもありますから、新たに山を切らなくても済みます。ですから環境にも優しいはずです。また、木造の持つ優しさや、木の秘められたパワーも、最近聞かれるようになりましたね。

【高木】なるほど。木のパワーとは?

木の持つ
   秘められたパワー

【和田】日本の家は昔から夏を基準に作られてきました。つまり、夏がしのぎやすいような工夫をしてきたのですね。木は呼吸をしていますから、湿度の調節を自然に行ってくれるのです。湿気を吸ったり、吐いたりしているのですね。工夫のひとつには、現在ではほとんど見かけなくなりましたが、土壁も同じです。現代の住宅はデザインや価格が優先され、高気密、高断熱、高換気が必要な住宅が多くなってしまいました。ちょうど、魔法瓶の中に暮らしているかのようですね。当然、空調設備などに頼った構造になってしまい、自然にやさしくない環境が出来上がってしまいます。最近になって学校は木造校舎の環境が良いといった報告も出ています。木造校舎の環境では子供たちに情緒不安定が少ないようで、「切れる子」も少ないそうです。また、雑誌のレポートにはコンクリートの高層化により、マンション住人の寿命は戸建て住宅の住人よりも九年短いという記事まで出ています。

【高木】木の優しさは感じるものがありますね。このお仕事はいつごろからされたのですか?

木が大好きで
   大工の道で四十年

【和田】私は中学を卒業してから大工の道に入り、かれこれ四十年になります。二十年前に独立してから民家風建築と古民家の再生に関心を持ち始めました。現在はこちらに居りますが私の育った所は山形ですから、幼い頃から木そのものに触れられる自然環境には恵まれていたのでしょうね。今でもそうですが、小さい頃から、木そのものが大好きでした。木に触れる事が趣味のようでもあります。そんな木も将来無くなってしまうのかと思うとなおさら民家再生には力が入りますね。協会から民家を壊すという情報が入れば飛んで行って、出来れば、持ち主に活かしてもらえるように話したり、活かせる方を協会のネットワークを使って探したり、協会の民家バンク(古材バンク)を使って解体して材料をストックしたりしています。

【高木】日本民家再生リサイクル協会の役割って大きいのですね。夢などは!

夢は 古民家の分譲住宅

【和田】幸手や久喜にも多くの民家がありますが、地方に行くとまだまだたくさんの民家があります。人の住んでいるものや無人となってしまった民家など、活かされずに朽ち果ててしまいそうな民家もあります。そういう民家五十棟〜百棟を一ヶ所に集めて、現代風にアレンジし、民家村を作りたいと思っています。今風に言えば民家の分譲住宅ですね。川崎市などの自治体では、古民家を集めて民家公園を作って保存しています。

【高木】素敵な夢ですね。「かたろうかい」で語られるのですか?

「かたろうかい」で 人儲け

【和田】「かたろうかい」はどなたでも参加できる場で、毎月第二土曜日の午後六時半に私のところで開催しています。毎回一人の講師を中心に十人から二十人の人たちが集い、「であい・ふれあい・かたりあい・そして、人儲け」をコンセプトに友達をふやしましょうという会です。人と人の付き合いの中から「ひともうけ」(人儲け)をしましょうとこの四月で四年目に入りました。二十代から五十代の方まで参加層も広がっています。これを読んで、もし、参加されたい方は(二二)四一一九(和田)までお問い合せ下さい。歓迎いたします。

【高木】
私も時間があったら参加させて下さい。では、お友達をご紹介ください。

【和田】私が古民家再生に取り組んだ記念すべき第一号が幸手市の巻島功司さんのお宅なんです。巻島さんは歴史ある古民家を次の代に継承すべく、現代風なアレンジを加え民家再生を私に託してくれた方です。

【高木】
ありがとうございます。今後も古民家再生にご尽力いただき古き物の良さを後世に伝承していただきたいと思います。益々のご活躍をお祈りいたします。

(アトリエとも言える事務所ももちろん和風のたたずまいで、取材した日が暑かったのにも係らず室内は自然の風が入って涼しい空間でした。空調に慣れてしまった自分自身の鱗が落ちたような衝撃を感じました。)

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